まんまるログ

融通性か?和・洋・中・無国籍・ジャンクとなんでも食べる胃袋と脳みそ。

嘆きのピエタ…キム・ギドク

2014年08月07日 | 映画
キム・ギドク監督の映画を見た。

舞台はソウルの清渓川。
主人公ガンドは30歳。
仕事は消費者金融の取り立て屋。

清渓川は東京の大田区とでもいうか、町工場が多い。

都市開発の波で急速に廃れつつある街並み…零細工場が映し出される。
ガンドの取り立て地区であるらしい。
借金を返せない人間を障害者にさせて保険で支払わせる冷酷な男。
容赦のない取り立て方。
暴力が常軌を逸している。
セリフが少ない。
顔の表情が暗い。
淡々としている。
なのに姿態と目つきに迫力がある。

ガンドは両親の顔を知らない。天涯孤独の孤児である。

目の前で債務者が飛び降り自殺しても…眉ひとつ動かさない。

ある日…そんな彼の前に、母親を名乗る謎の女が現れる。
母親を名乗る女…名乗ると言う所が…みそ。

心を閉ざしていた男の氷の感情が溶け始めていく…ほど単純には終わらないのは鬼才ギドク監督の持ち味。
映画は二転半する。
冒頭シーンと母親の存在が線で結ばれ始める。

ピエタは哀れみ、慈悲の意味をもつイタリア語。
聖母子像の一種で、死後、十字架から降ろされたキリストを抱く母マリアの姿を描いたもの。
たくさんの芸術家が政策している。ミケランジェロ の彫刻作品が特に有名なのは衆目の知る所。

主人公〝ガンド〟がキリストで、〝母親と名乗る女〟がマリアであるとはとても思えないが…。

「生まれて来てすいません」としか言えない獣性を持つ主人公。
「原罪を背負って貼り付けになったキリスト」「原罪のみで生きるしかなかったガンド」そう考えて見る。
フゥ~ムと呻る。
心が衰退するような気もする映画である。
映画の力に引っ張られて…。
惹きこまれてしまって最後まで見る。

主人公ガンドを演じるのはイ・ジョンジンさんだが、彼のイメージが反転した。
俳優とはすごい職業である…常々感じているのだが、いや増して感じた。
母親を演じたチョ・ミンスさんも女優賞を総なめにしている。

キム・ギドクと言えば韓国を代表する映画監督だ。
母国…韓国では居心地が悪そうである。

暴力、性、犯罪、自殺…人間の肉体と痛みを表現している映画が多い。
セリフに依存しない。
映像で語る。
コアなファンが多い。
商業主義とは対極に身をおいている人なんだろうと思う。
天才映画作家だが異端児である。

嘆きのピエタは二年前にベルリンで金獅子賞を取っている。天才は他国でしか認められない。

残酷な映画のラストシーンは余韻が残る。
観客である私の心が救済されているのかも知れない。

余韻は深く…な・が・い。

















































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ステレオタイプ…白い闇

2014年08月05日 | 日記
朝…ワイドショーを流しながら洗濯をする。

著名人ゲストが事件のコメントをしている。
耳に入る。
いらっとする。

ゲスト全員がステレオタイプ。
同じ趣旨の意見しか言わない。
お見事、あっぱれな感じすらする。

報道規制が入るとこうなってしまう…致し方ないのかも知れない。

テレビつけっぱなしで…ながら作業を続ける。

今日も暑い。
室内で30℃。
窓を開ける。風が無い。

又‥ニュースが流れる。
記録的大雨の高知1000m超え、孤立の小学生ら帰宅へ。
ひとまずほっとする。
蜘蛛の巣とりに精を出す。

STAP細胞論文をめぐる問題の渦中にいた理研センター長が自殺…ニュースが流れる。
残念な結果である。小保方晴子さんにとっても重たい事であろう。
他人事ながらため息が出る。
ながらで点けていても、作業しながらでも…事件のオンパレードではないか。

…テレビは消す。身体に悪い。

佐世保事件の加害者には精神鑑定が実施されているが、家族全体に深い病理があると思う。
現代社会の病理をも色濃く反映させている。

加害者の父親はパーソナリティー障害なのではないのか。
謝罪して済む事件ではない。慰謝料で済むはずがない。父親の命でも済まない。



メロンが熟れすぎても困る。

感性の紳士F氏へのプレゼントなのだから。

私にできる事を毎日、毎日、シコシコと。

ステレオタイプでは収まりがきかない思い。
奔流の様に心から溢れ出る。

被害者の家族は悲痛な思いと慟哭を抱えて生きる事になる。

食事をしても、西瓜を切っても、風鈴が風に鳴っても。
アブラゼミがなく。紅葉の赤も。雪の白さも。子犬の鳴き声も。

中天に太陽が輝いて、ひまわりの花が揺れていても。

目には映る、耳にはとどいても…白い闇の中を歩く。

加害者の家族は推して知るべし。

〝人の精神ほど魅力的で、人の心ほど危険なものはない〟デニス・ルへイン

被害者の家族の思いを丁寧に掬(すく)いあげる報道はこの国では期待できない。

熱い。

汗がにじみ出る。










































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昆布カーテン

2014年08月03日 | 日記
心が重い。
ニュースは連日、佐世保事件を報道している。
気が滅入る。

気温が高い。
湿度も高い。そんな日が続いている夏。

長男が昆布漁を終えて熱気と共に帰宅した。

大量の昆布を部屋干し。

北海道と能登では湿度が違いすぎて〝黴〟がはえる。

「外に干すと昆布が乾きすぎて割れる」…のでお土産にならない。

友人と仲間内に随時配らねば…とにかく慌ただしい。

  

部屋の中に磯の香り、昆布の香りが満ちている。

 

メロンは完熟まで寝かせる。1週間後が食べごろ?か。

足の踏み場の無い部屋。

まぁ 我が家は普段から足の踏み場はない…とも言える。

昆布漁は危険(死)と背中合わせの漁であるし時間が決まっている。
短期決戦で力と技の勝負。
昆布が採れる漁場は汐が早く、波が高い。
鯱(しゃち)に襲われる。汐の速さで船が転覆する。
船には大量の昆布を積んでいる。海底には昆布が藻の様に揺れている。
泳ぎ達者でも、海底の昆布に足を取られ、船から落ちてくる昆布に頭を絡めらとられ息が出きなくなる。

漁師仲間は、友人、親、叔父の死を経験している。目の前で自然に呑まれていく命を見ている。

かたずかない、雑多な家の居間。
会話があちこちに飛ぶ。
熱帯夜が更けていく。

エリートとは程遠い人生。
自転車操業を繰り返しながら人と出会って、人に助けられて今日まで生きてきた。

有難う。独りつぶやく。



大根を切る。石を川に投げる。バービー人形の足を引っ張る感覚で簡単に人を殺してしまう人格。

未成年の犯罪だからと…精神鑑定に落とし込んで解決できる話ではない。

昆布カーテンをすり抜けるのも今。サイコパスとも言える事件報道も今。
今。いま。

同時代で並行している。

















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