
「お岩の亡霊 坂東彦三郎」 (早稲田大学演劇博物館蔵)
怪談といえば日本人なら真っ先に頭に浮かぶ「四谷怪談」。
歌舞伎演目からドラマ・映画の題材にまでなった、
人間の抱える業の深さを見せつける愛の復讐劇
人間の抱える業の深さを見せつける愛の復讐劇
●夫に裏切られた哀しみが次々と死者を生んでいく
日本一有名な幽霊と言っても過言ではない「お岩」だが、
その名を一躍高めたのは、鶴屋南北歌舞伎狂言「東海道四谷怪談」(文政8年初演)の大成功だった。
南北は当時、江戸で評判の猟奇事件をないまぜにして、「戸板返し」をはじめとする派手な趣向を案出、大当たりを取ったのである。
赤穂浪人の伊右衛門は、婿養子の形でお岩と結婚するが、
お岩の父である四谷左門に過去の悪事を指摘され、左門を殺害。
更に、病気がちなお岩に嫌気が差していたところに、
高家(吉良家)に仕える伊藤喜兵衛の孫娘である梅に言い寄られ、
更に、病気がちなお岩に嫌気が差していたところに、
高家(吉良家)に仕える伊藤喜兵衛の孫娘である梅に言い寄られ、
仕官に目が眩みお岩に毒薬を飲ませる。
毒により顔が醜く変貌したお岩は、
伊右衛門の婚礼話を聞いて激しく恨みながら命を落す。
伊右衛門の婚礼話を聞いて激しく恨みながら命を落す。
そんなお岩に不義密通の汚名を被せ、戸板にくくり付けて川に流した伊右衛門だが、
婚礼の晩にお岩の幽霊を見て錯乱。
婚礼の晩にお岩の幽霊を見て錯乱。
梅と喜兵衛を惨殺し、破滅して行くーーーというのが大まかなストーリーだ。
実は、お岩という女性は実在していたと言い、
元禄時代に四谷左門にあった田宮家の娘だったと伝えられる。
とはいえ、そのお岩の生い立ちについても諸説ある。
いずれの場合も、夫に裏切られて行方知れずになり、その後関係者が次々と死んだと云うのが大筋だ。
また、有名な四谷の於岩稲荷では、夫と離れて奉公に上がったお岩という女が、
稲荷に祈り続けて、再び夫と暮らせるようになったという由来が残されている。
稲荷に祈り続けて、再び夫と暮らせるようになったという由来が残されている。
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