FEEL ambivalence

毎日、いろんなことを思います。
両極端な感じで。

両面価値。
同一対象に対する愛憎共存。

『死神の精度』/伊坂 幸太郎。

2008-03-09 00:00:46 | 
ふと、書店で手に取った本。
裏書に書いてある、「地名が苗字」というところに引っかかった。
伊坂幸太郎さんの文体は嫌いじゃないから読んでみようか、という程度。

読み終えて反省。
これは好きな部類だ。

本多孝好さんに通じるような、乾いた文体が気持ちいい。思えば、村上春樹さんの文体もそうなのだが、「客観」なのだ。淡々とした、かといって静的ではない描写が合うのかもしれない。

漠然とではあるが、「死」について、ぼくらは何らかの価値を与えている。もしくは意味を。それは自らの体験と思索の結果であり、おそらくだれもが共有できるものではないだろう。個人的な嗜好と似通っていて、「死」の意味を押し付ける行為は迷惑でしかない。ただし、押し付けるのではなく提示するなら興味深い。このところ忘れかけていた哲学的な問いだ。

どこから来て、どこへ行くのか。

始まりと終わり。解けない謎にあれこれと想像を巡らせる時間。貴重に思える時間だが、結局のところ、非生産的であることは確かだ。しかし、いつ訪れるかもわからない「彼ら」との遭遇に対して、自分なりに答えを用意しておく必要はあるだろう。ぼくという物体がTCAサイクルの結果として何も残さないなら、それはちょっとくやしいから。

亡くなった知り合いを忘れない。
それは物理法則に支配された世界に対する、ぼくなりのささやかな抵抗だ。



本のレビューからはだいぶずれてしまっているので、ちょっとだけ。
短編がまとめられた作品だが話はつながっている。ミステリのような、でも違う。ぼくは昼休みを使って読んだので章ごとに休み休みだったのだが、できることならもっと読んでいたい、といつも思わせるような作品。
自分という存在を外から覗けたらいいのに、と思いながら読んでいた。

落ち着く音楽を聴きながらもう一度読み返したい。

この作品は当たり。