昨日聴いていたジャズはチャールス・ミンガスの「ミンガス・イン・ヨーロッパ」。1964年の録音とのこと。いつ購入したかは覚えていないが、誰かにすすめられた記憶が微かにある。1984年の発売になっているものの、多分1990年以降に購入したのではないだろうか。チャールス・ミンガスのCDはこれしか持っていない。
初めの曲は「フォーバス知事の寓話」という題名で37分を超える演奏である。解説によると「アーカンソー州リトルロックの白人大学に黒人学生の入学を力ずくで阻止したフォーバス知事への反撃」の曲だそうである。
しかしその明るく、整った曲調に肩透かしを喰う。もっとも肩透かしはここまで。私は演奏者や作曲者の思想性云々で音楽の価値が変わるとは思っていない。
コントラバスの音がこんなにも歯切れよく聞こえてくることにはおおいに惹かれた。まだこのCD全体に現代音楽の要素や、和風の旋律などを強く感じてこれも面白いと感じた。器用にいろいろな要素をちりばめてある。そしてベースが大きな顔をして全体を引っ張っていくことは私にとっては新鮮であった。ベースが中心に座っていることに驚いた。
しかし、それでもこのCDは購入したときに1度聴いただけでご無沙汰してしまった。もう少しスローでしっとりとしてほしいと思ったのだ。
それだけの理由で好き嫌いを決めてしまうのはもったいないとは思う。幾度も聴くとおのずと気に入るかもしれない。そのうちに誰かの勧めでまた聴きたくなるかもしれない。今回もまた棚に鎮座させておくしかないようだ。
好き嫌いというものは、この歳になっては、もはや変えられないものばかりが多くなった。好き嫌いを転換できる契機もあまり無くなってきた。そしてどんなものがなぜ好きで、何が理由で嫌いなのか、自分でもわからなくなっている。変えられないものばかりの塊が70年積み重なって持て余している。