Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

テート美術館展 その4

2023年09月28日 21時44分09秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等

 テート美術館展、いくつもの作品に惹かれたが、ラファエル前派で有名なジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-1896)の《露に濡れたハリエニシダ》(1889-90)もその1枚。ラファエル前派ではバーン・ジョーンズの《愛と巡礼者》(1896-97)が展示されていた。この作品も素敵だが、題材の作為性が私にはちょっと敬遠してしまう。
 ミレイのこの作品について図録の解説では「ラファエル前派の時代よりもはるかに自由なスタイルで描かれたこの作品では、‥秋の露を通して輝く朝の太陽を捉えられている。‥ミレイは露をコンスタブルの有名な白い顔料の斑点で表現した。」と記されている。
 2014年の「ラファエル前派展 テート美術館の至宝」では展示されていなかった。当時のラファエル前派展で展示された風景画ともおもむきはおおきく違う。しかしミレイ自身が描いた《オフィーリア》の川の向こう側の景色とは似通っている。
 作品は上下に明暗が明確に分かれている。画面の上下に繋がる縦の線とが画面をさらに四分割している。近景と遠景が横一線で明確に分離させられているが、靄ないし霧の表現の効果で違和感を緩和している。横・縦十字に分轄された不思議な構図だが、実に良く計算されて作品に仕立てられていると感じた。
 私は手前中央の枯れた葉が特に気に入った。これがとてもいいアクセントになっている。これがないと作品の印象はメリハリの効かない別の作品になるように思う。



 ワシリー・カンディンスキー(1866-1944)の《スウィング》(1925)にも惹かれた。というよりも私の場合、カンディンスキーの作品と聞くだけでもう気に入ってしまうのである。
 作品が作られた1925年は、ロシアに戻ったカンディンスキーが芸術表現に対する政治的統制の強化を逃れて再び出国しバウハウスで教鞭を取った時期である。
 音楽的なリズムを引きずっているような形態、線の重なりと色彩の乱舞は、自由な律動を支えてくれる。落ち着いた色調で選択された色彩の配置、形態の組み合わせで生ずる安定感のある構図。
 或る人は椅子に座った肖像画を下絵にしているといい、ある人は住宅を描いたというらしい。どうしても人は抽象画の根拠に具象を求めないと落ち着かないらしい。
 しかしカンディンスキーの作品はそれを離れてはじめて律動ないし、リズム感が浮かんでくるように私は思う。
 形態から自由になって浮遊していくことを象徴するような円形、魅力はいっぱいある。そして体を動かすことの苦手な私もなんとなく手足が勝手に動いてしまう。
 しかしむやみに絵画と音楽の融合などということへ結びつけるのは私は避けている。



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