昨日の温かさでヨコハマヒザクラの蕾はさらに赤味を増して自ら綻びを待っている。
コブシの花の愕の裏には薄緑色の一枚葉がそっと添えられるように張り付いている。
カワヅザクラの葉の新芽が太陽光を透かして赤い葉脈が力を溜めている。
本日はさらに気温が上昇し、夏日になるかもしれないとの予報である。横浜市域の予想最高気温は24℃。昨日・本日と初夏の陽気。絶え間なく横浜駅を発着する電車が、明るさに色を添える。
しかしここ数年の異常気象・天候不順はすっかり季節感を人間からも植物からも奪っている。
さて、牽強付会ではあるが、「識者」なる人々は季節が四季から二季に変わったと訳知り顔に解説している。戦前から「モンスーン地帯の風土論」をかざして「世界に誇るべき日本の風土は優れた日本文化を生んできた」と繰り返していた「識者」は何の反省もない。彼らの言が正しかったならば、二季制の弧状列島はきっと文明が尻すぼみに劣化していく運命なのである。日本文化の盛衰と、四季のあるなしに相関関係があるならば、戦後日本の劣化は気候変動が要因で衰退の道をたどるだけなのだろうか。衰退の要因は別に求めたほうが良いと思うのは私だけだろうか。
人間は不思議である。異常な気象のことは1年も経つと忘却してしまう。果たしてこれが順応ということなのか。順応してしまうことが、思想の無節操に繋がっている。これはさらに恐ろしい気がする。