Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

「名画を見る眼」(高階秀彌)

2015年03月22日 23時20分52秒 | 読書
   

 本日読み終わったのは「名画を見る眼」(高階秀彌、岩波新書)。昔のように電車の中で一定期間読むという習慣が無くなって、なかなか読書タイムが取れない。時間があっても眼が疲れ易くなってすぐに目を閉じてしまうようになったことも読書が続かない要因となっている。特に揺れる電車の中や、外の太陽の光のもとではいっそう厳しい。読みたいという熱意と気力が衰えていることも大きな要因であることは否定できないが。
 この書も結構時間がかかった。しかし多くの美術の啓蒙書の中で書かれていることの原点のようなことが書かれている。いくつかはすでに聞いたり、教わったことがあり、その出展や根拠、ネタはこの書なのか、と合点した個所がいくつもある。
 それほどまでにこの書の影響は大きかったのだろう。私ももっと以前に眼をとおせばよかったと反省している。
 全15画家の15作品が取り上げられている。西洋の油彩画の創始者でもある15世紀前半のファン・アイクの作品「アルノルフィニ夫妻の肖像」(1434)からはじまり、19世紀後半の近代絵画の革新者エドゥワール・マネの「オランピア」(1863)までを取り上げている。
 本日は電車の中で最後の3作品(ターナー「国会議事堂の火災」(1835)、クールベ「アトリエ」(1855)、マネ「オランピア」(1863))を読んだ。
 ターナーについて「印象派の先駆者であり、近代への扉を開いた重要な芸術家であるが、他面、ロマン派的心情を多分に備えた伝統主義者でもあった」「印象派の先駆と云われるのは、風景を見事な色彩によって抒情的に描き出したからであるが、色彩そのものから言えば、マネやピサロの四季サイトは本質的に違っている。印象派のように科学的な光学理論に基づいたものではなく、特異な映像世界から生まれたものであるからだ」と評している。
 クールベについては「市民社会を告発する社会主義的作品のために19世紀における最初の反逆者のひとりに数えられているが、表現技法上から言えば、まだまだ伝統的であって、反逆者でも革新者でもない。従来の表現をすっかり変えてしまう近代絵画の革命は、マネによって幕を開ける。クールベは思想的には急進派であったが、画家としてはルネサンス以来の絵画の表現技法を集大成してそれを徹底的に応用した伝統派であった」としている。
 マネについて「19世紀の絵画を近代絵画の方向に大きく推し進めた革新者であった。自ら革命家であろうとしたクールベよりも、市民社会のなかで自己の地位を保とうとしたマネの方が結果としていっそう革命的であったのは皮肉な話である。マネ以降近代絵画が三次元的表現の否定と平面性の強調という方向に進む」と記載してある。
 ターナーとクールベとマネの評として、とても魅力的な指摘だと感じた。この指摘を反芻しながら絵画の歴史を辿ってみたいと思った。
 「続 名画を見る眼」を引き続き読むが、この本はモネの「パラソルをさす女」(1886)からモンドリアン「ブロードウェイ・ブギウギ」(1943)までの14人の画家の14作品を取り上げている。

グエルチーノ展&インドの仏展、その外

2015年03月22日 21時07分10秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等
 本日はとても欲張った1日となった。まずはいつものとおり午前中はボランティアでの事務所当番、とはいえ20か所ほど地域を巡った。昼食後に上野東京ラインに初めて乗車して上野駅までおもむき、国立西洋美術館で「グエルチーノ」展、東京国立博物館の表慶館で「インドの仏」展を見てきた。
 電車の中では「名画を見る眼」(高階秀彌著)を読了。夕食直前に帰宅して昨日原稿が出来上がった房総半島の散策の報告書の印刷を始めたらインク切れ。あわてて夕食後に家電量販店でインクを購入してきた。慌ただしい時に限っていろいろと支障が生ずる。
 グエルチーノ展とインドの仏展の感想はしばらく頭の整理をしてからでないと文章はまとまらない。来週中にでもアップしたい。

 上野東京ラインは春休み前だが、開通後の二回目の終末ということで、小学生・中学生とその家族、大人の鉄道マニアでホームは混んでいた。私も先頭車両に乗ったものの景色が見える最前列はこども達に譲ってボーっと外を眺めていた。上野駅では5番線に到着、帰途は7番線と公園口には近いので利用するには便利であった。

   

 上野公園の東京国立博物館の前のあたりでは寒緋桜が見事な赤い花を見せてくれていた。



 グエルチーノ展は思ったよりは人はいたが、日曜の割にゆったり見ることが出来た。バロック絵画というジャンルをじっくりと見たのは今回が初めて。名前は初めて聞く画家であったが、なかなか見ごたえのある絵である。
 チェント市立美術館の震災復興事業ということもあり、関心は高いようだ。
 随分と悩んだが、結局2400円の図録は購入しなかった。



 インドの仏展は思った以上に人が大勢であった。最初の仏教誕生から2世紀頃に初期の仏像が作られるまでかなりの時間が経過しているのだが、私はこの初期の仏像や南伝の仏教の仏像には興味が以前からあった。体系的に見ることのできる好い機会だったと思う。彫の深い顔、若い精悍な顔‥、日本に伝わった仏像と違う意味で親しみがある表情である。あの表情を念頭に仏典を紐解くとまた違った世界が現れるはずだといつも思っている。財布には厳しかったが思い切って2500円の図録を購入してみた。これらかじっくりと見てみたい。