伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

アメリカ民事手続法[第3版]

2016-10-30 23:02:52 | 人文・社会科学系
 アメリカの民事裁判の手続(日本で言えば民事訴訟法に当たる部分)の解説書。
 世間では、アメリカの民事裁判は迅速で、日本の民事裁判は遅いと考えられがちですが、2015年に連邦裁判所で正式裁判手続(トライアル)を経て終了した事件の訴え提起から終了までの期間の中央値(「平均値」よりは短くなる傾向)は、全体でみて26.8か月、陪審トライアルで27.7か月、裁判官によるトライアルで24.1か月だということです(8ページ)。以前から、アメリカの民事裁判はトライアルが始まると集中審理で1週間程度で終了するけれども、それに至るまでの準備で長くかかり、トライアルの期間だけを見てアメリカの民事裁判は迅速と言いたがるマスコミの評価は間違っているということは知っていましたが、具体的に数字で示されると、こんなにかかっているのか、むしろ日本の民事裁判よりよほど遅いじゃないかと改めて認識しました。
 アメリカの連邦最高裁での口頭弁論では、通常両当事者にそれぞれ30分ずつの時間が割り当てられ、「弁護士はあらかじめ準備してきた弁論原稿を読み上げればすむものではなく、裁判官からのさまざまな質問にさらされる」(183ページ)というのが、新鮮でした。日本の最高裁での弁論は、ふつうは10分程度しかくれず、事前に弁論原稿を提出するように求められた挙句に調査官がその内容をチェックして訂正を求めることさえあり、予定原稿を読むだけの儀式に終始しがちなのとは、ずいぶんと違うなぁと思いました。最高裁での弁論で裁判官からガンガン質問されたら痺れるでしょうけれど、私は、むしろそういう緊張感のある弁論をしてみたいなぁと思います。
 キャリフォーニア州、オハイオウ州、テクサス州、プエルト・リーコウ準州(日本語IMEが対応してくれない…)など表記に独特のこだわりがあり、クセの強さを感じさせます。


浅香吉幹 弘文堂 2016年8月30日発行(初版は2000年12月)

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