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伊東良徳の超乱読読書日記

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国際原子力ムラ その形成の歴史と実態

2014-05-11 18:05:18 | ノンフィクション
 アメリカ原子力委員会(AEC)、国連科学委員会(UNSCEAR)、国際放射線防護委員会(ICRP)、国際原子力機関(IAEA)、世界保健機関(WHO)などの放射線被曝に関連する機関の成り立ちと関係、これらの機関が広島・長崎の原爆被爆者の追跡調査結果などを使って、チェルノブイリ原発事故による被曝者の疾病発癌を始めとする低線量長期被曝の危険性をいかに過小評価し握りつぶしてきたかを論じる本。
 前半は、あれこれ書いてはいるのですが、ICRPが放射線取扱医療従事者らの任意団体で国際機関ではないということと、WHOがIAEAとの1959年の合意書でIAEAとの合意なしに独自の見解を出せなくなっておりそのため放射線による健康影響については口出しができず公衆衛生の専門家でもない原子力推進機関のIAEAのやりたい放題になっている(25~27ページ、66~67ページ)ということが強調されている感じです。
 終盤の「がんリスクは10ミリシーベルトでも有意に増加」(95~117ページ)が一番目を引きまた読み応えがありました。原爆被爆者の超過癌死リスクのデータの読み方、原爆被爆者と核施設労働者、チェルノブイリ原発事故被曝者、日本の原発労働者、医療被曝者の追跡データから、低線量被曝の危険性が従来言われていたものより大幅に高いことを論じています。日本の原発被曝者の追跡データで「白血病を除く全悪性新生物による死亡率は、外部比較において日本人男性の死亡率より有意に高く、また内部比較において累積線量との有意な関連が認められています」としていながら「が、生活習慣等による影響の可能性を否定できません」とする放射線影響協会疫学センターの見解(106~107ページ)は見苦しい。著者は、ていねいにそのあとに飲酒率の定義を変えて原発労働者の飲酒率をかさ上げして飲酒のせいにしようとする政府報告書の欺瞞を指摘しています(107~110ページ)が、「累積線量と有意な関連」があったらあれこれ言うまでもなく被曝によるものでしょう。2011年から2012年に発表された新しい研究発表で、CT等による患者の医療被曝によって発癌率が有意に増加しているというのは驚きました。こういうことはもっと広く知られるべきだと思います。


日本科学者会議編 合同出版 2014年1月15日発行
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