日本の農業の現状を食糧自給、食糧安全確保の観点から論じた本。
日本の食糧が、低価格競争の点から輸入、特に中国からの輸入に依存し、飼料もそのほとんどを輸入に頼っており、他方、国内の農業は生産調整と担い手の減少から作付面積が減少し、農業労働を中国人研修生に頼る場面が増えていること、輸入は中国の消費拡大で中国が輸出国から輸入国に転換しつつあることやアメリカでトウモロコシが飼料用からバイオエタノール製造用に移る傾向、天候不良等によって不安要素が増え、中国人労働者も「研修生」の建前上同じ労働者が来日できず今後中国国内の生活向上により来日の魅力が薄れることが予想されるなどの不安要素を抱えていることなどが指摘され、民主党政権下で制度化された戸別所得保障制度が米から飼料米等への転作奨励の効果はあるが予算が足りないことから本来必要な野菜等について制度化できず米についても予算の限界上大きな効果は望めないことなどが論じられています。
タイトルからは食糧全般の話に思えますが、米と飼料米の話が中心になっていて、飼料米の話から畜産に言及され賞味期限切れ食品の飼料利用等も出てきたり、野菜がごく一部触れられているという感じです。「農政」を論じるのであれば、農政が米中心に進められてきたことからそれでいいのでしょうけど、食糧全般の話として読むにはちょっと偏ってるかなと思います。
そういう長期的に見て厳しい条件下にある日本の農業が、福島原発震災でさらに危機的になってしまいました。原発推進しか考えてこなかった保安院の役人たちと電力会社、原子力村の連中のために、東日本一帯に放射性物質がまき散らされ、野菜のみならず稲わらも堆肥も汚染され牛も汚染されて、食糧の汚染と風評被害で輸出は壊滅的になり、国民の食の安全は大きく脅かされることになってしまいました。農政の失敗のみならず原子力政策の誤りも食糧安全保障に多大な影響を与える、そういう気がつきたくなかった真実を否応なく知ってしまった今、原子力推進派しかいない「ポスト菅」の政争を私たちはどう見ればいいのでしょう。

中村靖彦 岩波新書 2011年5月20日発行
日本の食糧が、低価格競争の点から輸入、特に中国からの輸入に依存し、飼料もそのほとんどを輸入に頼っており、他方、国内の農業は生産調整と担い手の減少から作付面積が減少し、農業労働を中国人研修生に頼る場面が増えていること、輸入は中国の消費拡大で中国が輸出国から輸入国に転換しつつあることやアメリカでトウモロコシが飼料用からバイオエタノール製造用に移る傾向、天候不良等によって不安要素が増え、中国人労働者も「研修生」の建前上同じ労働者が来日できず今後中国国内の生活向上により来日の魅力が薄れることが予想されるなどの不安要素を抱えていることなどが指摘され、民主党政権下で制度化された戸別所得保障制度が米から飼料米等への転作奨励の効果はあるが予算が足りないことから本来必要な野菜等について制度化できず米についても予算の限界上大きな効果は望めないことなどが論じられています。
タイトルからは食糧全般の話に思えますが、米と飼料米の話が中心になっていて、飼料米の話から畜産に言及され賞味期限切れ食品の飼料利用等も出てきたり、野菜がごく一部触れられているという感じです。「農政」を論じるのであれば、農政が米中心に進められてきたことからそれでいいのでしょうけど、食糧全般の話として読むにはちょっと偏ってるかなと思います。
そういう長期的に見て厳しい条件下にある日本の農業が、福島原発震災でさらに危機的になってしまいました。原発推進しか考えてこなかった保安院の役人たちと電力会社、原子力村の連中のために、東日本一帯に放射性物質がまき散らされ、野菜のみならず稲わらも堆肥も汚染され牛も汚染されて、食糧の汚染と風評被害で輸出は壊滅的になり、国民の食の安全は大きく脅かされることになってしまいました。農政の失敗のみならず原子力政策の誤りも食糧安全保障に多大な影響を与える、そういう気がつきたくなかった真実を否応なく知ってしまった今、原子力推進派しかいない「ポスト菅」の政争を私たちはどう見ればいいのでしょう。

中村靖彦 岩波新書 2011年5月20日発行