城と歴史歩きを楽しむ

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遠江・馬伏塚城 その1 築城時期の異なる二つの城郭が連なる、水堀に囲まれた城だった

2021-11-30 | 歴史

馬伏塚城は静岡県袋井市浅名にあります。北部に今川氏の支配下で小笠原氏が築いた当初の北曲輪群があり、南部に家康が高天神城攻めの際に築城した南曲輪群、更に北曲輪群の北に伝居屋敷とされる屋敷地があります。往時の城域は周囲を巡る堀がありその外側は深田で、水路を使って城の舟入まで舟が入れたとされます。
 今回の参考資料は(1)現地案内板(袋井市教育委員会)  (2)「静岡県の中世城館跡」静岡県教育委員会 1978 (3)「静岡県 古城めぐり」静岡新聞社刊 1984   (4)「今川氏の城郭と合戦」水野 茂編著2019  (5)「静岡の山城ベスト50を歩く」加藤理文・中井 均編2009 などです。
 見どころが多い城郭でしたのでその1では家康が寺院跡に築城した本丸のある南郭群を見ていきたいと思います。その2では北曲輪郡と伝居屋敷を見ていきます。


馬伏塚城 現在残る城郭遺構は岡崎の城山とともに家康の高天神城攻め時点のものとされる
 徳川家康は高天神城攻めのため天正二年(1574)に馬伏塚状を改修し大須賀康高を入れたとされます。

 
                                         現地案内板の諸国古城之図
 馬伏塚城は高天神城が落城するとその役割を終え天正十年(1582)には廃城になったとされます。絵図はその百年後に描かれた姿ですので、すでにある程度の改変が行われていた可能性もありそうですね。

馬伏塚城  袋井市教育委員会の現地案内板の図
 現地案内板には「諸国古城之図」の馬伏塚(遠江) や復元図が掲載されていました。現地は住宅化や耕作地化が進み、城郭遺構は一部を残すのみでしたが、地形はかなり残っていましたので、図を参考にして往時に思いを馳せながら見学できました。


馬伏塚城 本丸のある曲輪(本曲輪)の虎口、土橋、内堀   南から
 本曲輪は半分の東側が残されていましたが、西側は住宅地化されていました。内堀は田地になっていますが、地形は残っていて土橋もほぼ往時の状態のようでした。奥に本曲輪の南虎口が見えています。


馬伏塚城 西から 手前に残された羽城の一部が有る
 復元図に描かれている残されている羽城の一部を確認できました。羽城の外側は深田だったので平面的な構造でも曲輪としての役割が果たせたのではないかと思いました。案内板の解説では「廃城時に破城の儀式を執り行ったのが地名として残った」とされていて、てっきり「羽城=端城」と思い込んでいましたので、そのような解釈も有るのかと感心しました。


馬伏塚城 本丸土塁上の北東隅に祀られる諏訪神社と若宮神社
 本丸には大土塁の一部が残っていました。諏訪神社と若宮神社が祀られていたので残されたのではないかと思いました。土塁は幅広で高さが3mほどの堂々たるものでした。なお若宮神社は以前には北部の伝居屋敷の若宮に祀られていたのを遷座したそうで、絵図にも若宮が載っていました。


馬伏塚城 本丸 東辺の大土塁 北から  階段、手すりは神社参拝用
 かろうじて残された本丸の大土塁です。これだけでも残っていると嬉しいものですね。


馬伏塚城 本丸中央を抜ける道路 復元図から見ると虎口ではなさそう
 本丸中央部には土橋から北に抜ける道路が有りました。一見、北側の虎口のようですが、土塁を開口して道路を造ったようでした。道路の左右には土塁が残されていました。写真左手(西側)の藪の中には土塁が一部削られていましたが残っていました。


馬伏塚城 本丸西側北辺の残欠土塁
 本丸中央を抜ける道路の西側の藪の中に土塁が残されていました。一部が削り取られていましたがこれだけでも貴重ですね。


馬伏塚城 本丸北側の馬出し 絵図では半円形に描かれている
 復元図で馬出しとされる部分ですが、かなりの改変があり原型は想像するしかなさそうでした。馬出しから本丸への虎口があったようなので、付近を捜してみましたが痕跡も見つけられませんでした。


馬伏塚城 舟入 北西から 馬出しの北側にある 
 資料(5)に掲載された図で、舟入とされている場所です。絵図の描かれた時点では外部へ通じる水路は見当たりませんが、往時は小舟が通れるぐらいの水路が確保され、岡崎の城山や横須賀城との行き来は舟で行っていたのかもしれないと想像しましたがどうでしょう。


馬伏塚城 神曲輪  南から 
 本丸の北側には絵図にも載っている神曲輪がありました。今は住宅となっていますが、地形ははっきり確認できました。南曲輪群は高天神城攻めの城郭ですから、屋敷地ではなく兵站部で舟入からの物資の搬入に便利な場所だったのかもしれないと思いました。
 その2 に続く