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湖の子守唄

琵琶湖・湖北での生活、四季おりおりの
風景の移り変わり、旅先でのふれ逢いなど、
つれづれなるままに、語りたい。

トントン兄ちゃん

2010年07月28日 | 詩歌・歳時記
10歳の頃だったか、東京は武蔵野市に住んでいた。
現在は住宅がびっしりと建て込んで、味も素っ気も、
情緒なんてものは、なおさらない町だろうが、
当時はおおらかで、牧歌的な雰囲気が漂う住みよい町だった。

     玉虫やむかし武蔵野林あり

中央線と是政線が分かれる辺り、
「三丁目の夕日」に出てくるような、木造二階建ての借家だった。
道の向こうに麦畑がひろがり、その先が茶畑、遥か遠くに、米軍宿舎が並んでいた。

     夜嵐の
     北多摩郡り田無町
     あの大楠よ生きてあれかし

二階を学生さんに貸していた。下宿屋でもあった訳だ。
夕飯時、学生さんを呼ぶのが、4、5歳くらいの弟の仕事だった。
「トントン兄ちゃん、ごはんですよ」可愛い声で叫ぶ。
すかさず、二階からトントン、トンと軽快に降りてくる学生さん達。

     穂麦食む 頃やひめごと あまかりき

遠い記憶の奥底から、
ある時、ふっと聞こえくる「トントン、トン」のおんなじ調子の階段踏む音が、
潮騒のような懐かしさでよみがえる。
とおの昔に失くしてしまった、純真さに充ちた時代の思い出である。