晴れ、ときどき映画三昧

「ヴィーナス」(06・英) 70点


 ・ こんな老人は、幸せなのかも・・・。

                   
 「ノッティグヒルの恋人」のロジャー・ミッシェル監督、ハニス・クレイシ脚本で、ピーター・オトゥール主演のシニカルなコメディ。

 老俳優のモーリス(P・オトゥール)は、親友イアン(レスリー・フィリップ)の姪の娘・ジェシー(ジョディ・ウィッテカー)が田舎からロンドンへ手伝いに来るのを知り興味を持つ。本来の女好きで、寂しくなると元妻ヴァレリー(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)のもとへ訪れ、縁が切れない。

 一見、谷崎潤一郎の世界で、もとは脚本のH・クレイシのオリジナルだが、名優P・オトゥールの実話ではないかと思われるほど。あの若き日の「アラビアのロレンス」の偉丈夫振りをかなぐり捨て、忍び寄る老いとの闘いを見事に演じ切った。

 モーリスは、仕事・親友・元妻に恵まれ自由奔放に生きていて、何と幸せな老後なんだろうと想いつつ、孤独な死を恐れている。「誰も永遠に生きられない」というモーリスだからこそ、下品で無作法なジェシーを<ヴィーナス>と呼び、生き甲斐としたのだろう。

 この映画を観る世代によって評価が分かれそうなテーマだが、自分の数年後を想うと、とてもマネをできそうもない。音楽がオーバーラップしながら画面転換するところがなかなかお洒落で、ユリーヌ・ベイリー・レイの挿入曲も印象深い。    
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