@日本の伝統文化、多くは伝統の匠の技が隠れた職業だが、「伝統を伝える」弟子にフォーカスし如何に弟子になり学び得たのかの書物だ。職人の言う「親方の背中を見て覚えろ」だけでは現代人はついていけない、そこには現代の若者の心を掴む感動、印象から師匠の行動、言葉、姿がある。多くの弟子は「無給」で「下働き」から始まり、少なくとも5年で漸く現場作業に携わり、10年で一人前となる匠が標準だ。師匠位の言葉に「理屈は要らない」「マニュアル化できない仕事」など、何事も体(観て試すの繰り返し)で覚えてこそ巧みの技が伝わると感じた。
『師弟百景』井上理律子
「概要」若き弟子はいかにして職人の世界に飛び込み、師匠はどのように“技術”と“伝統”を伝えたのか 働き方が多様化している現在、「好きなことを極める」「会社員にはならずに生きる」という要素に魅力を感じて、「職人」という存在にいま改めて注目が集まっています。また、職人の世界における「師弟関係」も、「親方の背中を見て覚えろ」から「背中も見せるが、口でも教える。理論も説いて教える」というように時代に即して変化してきているのです。
師匠と弟子とのギャップ・言葉・行動
◆庭師「行ってもわからない者にはわからない」vs「細かくは教えてもらい得ない」
師匠の一言を考え次の行動をする「形になるまで」
◆釜師「技術よりも、気持ちを伝えたい」vs「『なるほど』と気づく事」
茶釜には「わずく(和銑)サビに強い」と 「洋ずく(洋銑)」2種類
毎日毎日コツコツと手作業の連続
「製作者が亡くなっても残るものを作る」(古いものを知って新しいものができる)
◆仏師「仏さんは生きている」vs「何百年後も役立つ仕事に魅力」
「木に『痛い』を感じさせない削り方・無駄の部分を削ると仏さん見える
視覚で捉える『写の目』、視覚と心で感じる『観の目』
目を見たら人が読める・輝いた眼(謙虚に多くを聴け)
◆染織家「経糸は運命、緯糸は生き方」vs 「染めた糸に命が生まれた」
やっていることはアナログ、シンプルな技術だからこそ、織り手の心が混じり込んでいる
色は生命の哲学(染めることで食物の命が蘇る)
◆左官「職人の生き方も後進に伝えていきたい」vs「中途半端ではダメ」
伝統を引き継ぎ伝える・コテ技術
◆刀匠「隠さず教える、ケチじゃない」vs「派手だが品のある刀」
名刀を見て刀鍛冶の凄さを感じた(玉鋼の薄く打ち延ばす技術)
「無謀でもやってみて覚える」(背中を見て覚える)
◆江戸切子職人「大事なのは予想を裏切ること」vs「綿密ながらの魅力」
大切なのは一歩下がって全体の佇まいを見ること
弟子条件は「一人以上の後継者を育てること」
◆文化財修理装潢師「修理はマニュアルのない仕事」vs「修理は作品を次世代に手渡す行為」
仕事は90歳のお婆さんを20歳に戻すのではなく、90歳のままの姿を保つ事
どの工程もマニュアル化できない仕事
◆江戸小紋染職人「着る人をどう喜ばせるか」vs「お客様が着てこそ完成」
小紋には京小紋、加賀小紋、江戸小紋があり江戸は最も細かい
◆宮大工「大きな仕事をするには一緒に暮らすこと」vs「知恵を働かせ手を動かせ」
「理屈は要らん」(鉋屑の腕前・匠の世界)「木の命、木の心を読む」
◆江戸木版画彫師「摺りやすく売れるために彫れ」vs「描き手の想いを彫る」
材料の木は山桜(硬く密度と粘りがある)
コツを口で伝える(理論に近づける)
◆洋傘職人「左右1ミリの違いが16ミリもずれる」vs「ピッタリと合う喜び」
断捨離で着物を日傘に
◆英国靴職人「レザーの表情デザインのバランス」vs「数値を組み立てる作業」
「マーキス」は英国の爵位名 一束38万円から注文から1年半要する品
◆硯職人「石の目を見てデザインする」vs「石を見て読む」
石の目、石紋を見て手で触って
◆宮絵師「昔の職人を見ることから」vs「心の模写をする」
古い仏教美術を観ることから
◆茅葺き職人「惜しみなく言葉で教える」vs「質問し覚える」
イギリスの職人姿に感動(茅葺き屋根の家)