@親子ともに検事・弁護士である、父の生き様から息子は世間の偏見的な見方・勢力(権力と金)では決して屈しない職人として役割を全していく姿は、感動ものだ。父の罪は13回忌の法要で和尚が「なぜ罪を背負ったまま実刑を受けたのか」に対し「業を背負ったのだ」と言う。自分の過去の罪(真犯人を無罪放免にしてしまった罪)を悔いていたから・・・とある。業としての辛さを思いっきり肌で感じる一言だ。業(特に公務員)には使命、役割があるが偏見と金・権力で左右するような人間にはなって欲しくない。
『検事の死命』柚月裕子
敏腕検事・佐方が様々な難事件に挑む『検事の本懐』。検事の矜持をかけて権力との激闘に挑む力作中編「死命」、『ザ・ベストミステリーズ2013(推理小説年鑑)』にも選ばれた傑作短編 「心を掬う」、感涙必至の“帰郷小説”「業をおろす」を収録した検事・佐方シリーズ。
・「心を掬う」
郵便物紛失事件を解き明かす佐方、犯人の周到なやり口で糸を掴んだのはトイレで流した紙片を回収し、謎を暴くことだった。現金を入れた郵送物だけが紛失、それは老夫婦の少ない年金から息子に送った心のこもった郵送物だった。
・「業をおろす」
実刑を受けて獄中死した父に疑問を持っていた佐方(息子)が、その過去を知る。それは和尚の言う「やつは罪を犯したんじゃない。業を背負うてあの世へ行ったんじゃ」、また別の弁護士は「弁護士の仕事は、あくまで依頼人の利益になるように弁護することです。ですが、弁護士も人間です。職業倫理と実体的な正義の狭間で、苦しむ弁護士も多いんです」「弁護士として過去真犯人だった男を無罪放免にした事がありずっとその罪を意識していた。だから、自分で自分を裁いたのです」
・「死命を賭ける」
痴漢行為で摘発された男は地元の有力者家系であり、地元の有力者から国会議員、弁護士会等へのつながりを持っていた。かたや摘発した高校生は過去に万引き、恐喝の前歴を持った母だけの母子生活で生活もギリギリだった。男は有力な弁護士を雇い釈放、無罪放免を、佐方はその証拠探しとアリバイを徹底的に調査、裁判を迎える。
・「使命を決する」
男の家系から有力な権力者が佐方に早々に引き下がるように忠告するが、佐方は権力と金で動く輩に対しあくまで「検事としての役割を全うする」と心がけ、決して権力と金で動くような真似はしないつもりで、また自分の信念に真っ直ぐに業を行うことを誓って裁判に応じた。 仲間が言う「あんな小さな案件に必死なる理由、金にもならない、出世にもつながらない。むしろ検察内での立場が危うくなるような真似を、なぜする」に対して佐方は「罪を如何に全うに裁かせるか、それだけです。巷で耳にする使命感、と言うやつかな」と答えた。
