最近、音源のレポを書いてない…
じっくりと書く時間がないというのもあるけれど、正直に言えば、「書きたい」と思えるアルバムとなかなか出会えない、というのがホンネ。一応、V系とその周辺の音は常に聴いてます。けれど、どれも「ピン」と来ない。「いったいヴィジュアル系はどうしたんだ?!」って言いたくなるほどに、ぱっとしない。「作品」として、語れない。
僕の中に、「ヴィジュアル系とはかくあるべき」というCOREなものがあります。それは、「かっこよさ」としか言いようがないもので、演奏が巧いとか、ファッションが奇抜だとか、ライブパフォーマンスがド派手とか、曲がキャッチーだとか、そういう次元じゃないんです。「世界観」として「かっこいいかどうか」。
そんなV系的なかっこよさをしっかり固辞しているのが、lynchというバンドです。このバンドは、今なお、80年代から続く「かっこいい世界観」をもち続けている貴重なバンドです。
とはいえ、もう結成10年目。今更、僕が語るまでもないモンスターバンドです。
…が、しかし、知らない人は全く知らないんです。若者たちに聴いても、一部のマニアックな子以外は全然知らない。まぁ、それでいいんですけど、、、 それにしても、こんなカッコいいバンドがいるのに、知らないなんてもったいない!!
というわけで、再び筆を執ったわけです(苦笑)。
GALLOWS
1.INTRODUCTION
静かなピアノで幕を開け、徐々に緊張感が増していくSE的な一曲。1分20秒ということで、まさにSEですね。途中、静かになるところの「足音」が何を意味しているのか。一気に、彼らの世界に引きずり込まれます。
2.GALLOWS
そして、アルバム看板曲。gallowsは英語で「絞首台」という意味。1曲目の足音の意味が分かるかと思います。サウンド的には、lynchお得意のハードでスピーディーなヴィジュアル系王道サウンド。途中の日本語のところで一気にメロディアスになるけれど、それ以外は、もう勢いでゴリゴリ押していくハイチューンナンバー。「さぁ 行こう 死の向こうへ」というところが一曲目らしい。
3.DEVIL
続くDEVILは、どちらかというとシングルになりそうな突き抜けた歌。これもまたヴィジュアル系の王道に位置しそうな楽曲。とはいえ、イマドキのラウドロックの要素(コーラスとかドラムパターンとか)も入っていて、一枚岩ではないということが窺えます。ヴィジュアル系もまた進化しているんだ、ということが分かるかな、とも。きっとね、X JAPANのhideちゃんがこの曲を聴いたら、喜ぶんじゃないかな、と思いました。ニコニコして、「カッコいいじゃん!」って言ってくれそう。(どこかTranstic Nerveに似てるというか…)
4.GREED
ここにきて、少しダークで捻った歌が登場します。ラウドなんだけど、メロウで、どこか妖艶な感じというか。清春が歌ってもいけそうな妖艶さ、というか。といっても、普通の音楽からしたら、十分にハードです。なので、4曲目なんだろうな。。。歌的にはちょっと淡々としているけど、メンバーのプレイにおいて聴きどころ満載かな。特に終盤のベースがとてもいい仕事をしています♪
5.ENVY
4との切れ目がどこか分からない…というくらいに、一瞬で5曲目に変わります。どこかかつてのLUNA SEAを彷彿とさせるような妖しさがありますね。ギターの音を聴いた時に、もうニヤニヤしてしまいました。情緒的で空間的で、広がりがあります。あー、こういう感覚ですよー。ヴィジュアル系の世界観って。これが表現できるかどうか、と言ってもいいかも。暗くて、退廃的で、どこか都会的で。
6.GUILLOTINE
そして、これまたヴィジュアル系の世界観がたっぷり詰まっています。イントロのドラムがとにかくカッコいい♪ そして、とてつもなくキャッチーなサビのメロディー。跳ねるシャッフルっぽい曲で、ライブで盛り上がりそう。どこかTUSKが歌ってそうなメロなのがいい♪ 三連のツーバスがとにかく気持ちいいなぁ。
7.MERCILESS
いわゆる「VISUAL SHOCK」の伝統では、7曲目は重要なのです(苦笑)。ライブで大盛り上がりしそうな、激しい曲を7曲目にもってくるバンドが多いのです。まさに、そんなV系理論にぴったりはまるような一曲。これは、もうとにかく頭を振ればいいんだろうなって曲。どこかメロコアな感じもしなくもないですけど、、、
8.OBLIVION
3のDEVILに似たような跳ねる感じのデジロックっぽいイントロ。そして、5のENVYに通じる都会的なギター音。夜の高速のBGMに使いたいような曲。あるいは、Berlinあたりで聴きたいかも?! oblivion=忘却。ヴィジュアル系的な言葉づかいにも注目したい。
9.BULLET
ポップだけど、どこまでもへヴィーなナンバー。なんか不思議なメロディーだなぁ、というのが僕の印象。これもまたどこまでもlynchっぽい感じの一曲。ゴリゴリなサウンドに注目。
10.MAD
これもまたライブで大暴れしたくなるような一曲。っていうか、そのためだけの曲というか。みんな狂っちゃえ~♪っていう感じ。
11.TOMORROW
これもまたライブで大暴れしたくなるような一曲。10よりはポップでキャッチー。どこかラルクっぽさもあるというか。
12.RING
ようやくここにきて、静かで、ほっとする曲(苦笑)。飛ばしたなぁ…。こういう曲がないと、やっぱね。。。濃厚魚介豚骨ばっかりだと食傷気味になってしまうもので…。もう少し、こういうタイプの曲がちりばめられていると、、、 歌詞がいい。「それでも 涙止まらない日もあるだろう 明日に迷い 終わらせたくもなるだろう それでもどうか ひかり見失わないよう 祈ろう」。lynchも、闇の中にいながらも、どこかで光を求めているんだな、と。僕はどっちかというと闇の世界を闇のままでっていうタイプだけど、このバンドには、「希望」がある。
13.PHOENIX
そして、最後!! ヴィジュアル系のアルバムの最後の曲は、どこまでも突き抜けていなければならない。どこまでもぶっ飛んでなければいけない。そうでなければ、V系のアルバムじゃない。この曲は、まさにそういう曲。突き抜けていて、どこまでも羽ばたいていけそうな楽曲。うん、これ以上にないラストナンバーになっているんじゃないかな♪ 終わり方も超ロック♪
アルバム全体を通して、これまでのlynchの系譜の続きを描いているアルバムなんだなぁ、と思った。
これはよくもあり悪くもある言葉。
大幅な改定点はない。これまでのlynchのサウンドを踏襲したもの。だから、安心して聴けるんだけど、そこに「おお!!」という意外性はあまり(というか、ほとんど)なかったように思います。
いいアルバムだとは思います。好きな曲も多いです。が、そこに「遊び」がない。12のRINGだけが異彩を放っていたけど、それ以外は、(かなり辛口で言えば)似たような楽曲になっちゃっている。6~11までが特に一直線になっていて、聴いていて、やや辛くなった。実験的な曲、遊び的な曲、変なリズムの曲、おかしい曲をこのあたりに入れてほしかった。
今のヴィジュアル系バンドのある意味での大きな問題点も、この作品を通して見えてくるようにも思う。音もいい、演奏もうまい、世界観もある、パンチもある、なんだけど、どこか楽曲的な広がり(遊び)がない。無理に多様性を出すことはないけれど、もう少し、バリエーションをもたせる必要はあるんじゃないかな、と。
外国のラウドロックバンドのCDを取っても、その中には色々なタイプの曲が混ざり合っている。ラテンのリズム、中東っぽい音階、気持ち悪いノイズ多様の曲などなど。
けど、きっと今回の作品は10年の歩みの集大成的なものなんだろうとも思う。だから、次回作にそれは期待したい。
ダークでハードなヴィジュアル系という意味では「王道」なんだけど、その「王道」を歩んできたバンドマンたちは、アルバムの中で、もっともっと遊んでいたように思います。そして、新たな音楽の地平を切り開こうとしていたと思います。
lynchは、ヴィジュアル系の伝統を背負った数少ない「かっこいいバンド」です。だからこそ、「その向こう側」へと向かってほしいと切に願うわけです。
もっと言えば、最近、わけの分からんヘンテコなバンドが多い中で、「王道」ならではの貫禄をもっともっと見せつけてほしいと思うのです。バンドの「かっこよさ」って、出そうと思って出せるもんじゃないです。それこそ、「もってるもの」だと思います。
そこに、やはりlynchなりの「昇華」が欲しい。そう、思うのです。
今後に期待しています☆