Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

赤ちゃんポストと匿名出産について(翻訳)

以下、赤ちゃんポストと匿名出産についての文献の翻訳(仮)です。

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匿名出産

 「赤ちゃんポスト」と「個別の引き渡し(預けた母親に預かった赤ちゃんを引き渡す支援)」を利用する際、その前提となっているのは、≪自分の子どもを預け入れる母親が完全に一人で出産するか、少なくとも医療サポートを受けぬまま出産している≫、ということである。今日、病院では、100ある出産のうち、10から30くらいの出産で、「帝王切開」、「吸引分娩」、「鉗子分娩」の手術が行なわれている(Ackermann.2004)。つまり、すべての出産の10〜30%で、様々な合併症(Komplikationen)が起こっており、誰にも知らせずに家で主産することのリスクは、母子共に、極めて高いと言えるだろう。

 その上、妊娠の合併症のリスクは、強いストレスによる重圧や、社会的サポートの欠如によってさらに高まる、ということが明らかにされている(Neises/Rauchfuss,2005)。強いストレスによる重圧と社会的サポートの乏しさの二つは、自分の妊娠を隠し、ごまかそうとする女性たちにぴったりと当てはまる。

 生命保護の処置をすることなく、子どもが元気に生まれるためにも、「匿名出産」が必要なのである。匿名出産では、自分の妊娠をなんとしても隠したいと思う女性たちが、医者の診察を受けながら出産することが可能である。もちろん自分の素性(アイデンティティー)を示す必要もない。ズルツバッハ−ローゼンベルクのセント・アンナ社会保険病院では、2000年9月以来、匿名出産を行なう最初の病院として、公的に匿名出産のサービス(治療)が行なわれている。ドイツ国内初の匿名出産は、2000年12月に、フレンスブルクで実施された。それは、NPO法人シュテルニパルクによって組織化されたものだった(Kuhn,2005)。

 母子の生命保護に加え、匿名出産では、二つのチャンスがあると考えられている。一つは、匿名の出産が中絶(堕胎)の回避につながるという点であり、もう一つは、妊婦との長い接触が可能となり、妊婦にさらなる支援、相談、ケアを提供することができるようになるという点である。

 もし母親がこれまでの自分の決心を変えず、[匿名出産の後]自分の子を匿名で預けるならば、その新生児は、赤ちゃんポストや個別の引き渡しと同様、医師の診察の後、里親家庭や養父母家庭の下に送られ、児童相談所と市当局(戸籍課)に通達される。

赤ちゃんポストと個別の引き渡しの利用に関する現存の実際のデータ

 赤ちゃんポストと個別の引き渡しにおける子どもの預け入れの頻度に関しては、これまでのところ、まずもって二つの研究が行われている。その研究はドイツ全土を見通している。

 2002年秋にはすでに、ボートらが、赤ちゃんポストの設置者44名に質問を行っている。その70%の設置者から回答を得ている。合計45名の子どもたちが預けられていた。この数は、母親がのちに匿名性を撤回しなかった子どもたちだけに限定されている(Taufkirch,2004)。

 クーンのさらなる研究ははるかにずっと新しい。2004年3~4月に、彼女は赤ちゃんポスト設置者69名に質問紙を発送し、その47名から回答を得た。もっと具体的に言うと、[母親に]引き渡された子どもの数については、その15%の設置者が故意に情報開示を拒んでいる。21名の設置者(45%)が、この調査までの間にまだ一人の子どもも預けられていないと答えており、19の赤ちゃんポスト(40%)で、合計52名の子どもたちが預けられた。そのなかの40名が、生後二日未満だった(Kuhn,2005)。

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ポイントとして、以下のことが重要かな。

●ドイツ語のAbgabe(預け入れ)とÜbergabe(引き渡し)という語に注意。赤ちゃんポストは、大きな母子救済プロジェクトの入り口でしかない、ということを理解すべき。赤ちゃんポストは、「預け入れ」のための装置なのだ。

●支援すべき女性が出産前なら、『匿名出産』のサポートが必要で、支援すべき女性が自宅や病院外で出産してしまったなら、『赤ちゃんポスト』が必要で、さらに出産して時間が経っていたら、『母子生活支援』が必要となる。赤ちゃんポストは、それ自体単体で存在しているわけではない。

●この壮大なポスト・プロジェクトには、出口がある。それが「引き渡し」だ。日本で赤ちゃんポストが普及できていないのは、この「引き渡し」がきちんと理解されなかった点にある。ドイツでは、「引き渡し」が大前提として想定されているのだ。匿名で赤ちゃんをポストに預け入れたあと、母親が後に名乗りでられるように、色んな配慮がなされている。この部分がきちんと伝わっていれば、もっと日本でも赤ちゃんポストは普及したように思われる。

●「匿名出産」という考え方自体は、すごく正当な考え方だということも、日本ではほとんど問題にされなかった。「子どもをポストに預けることはどうなのか」という議論ばかりで、緊急下にある女性の問題は全く触れられなかった!

●つまり、プロジェクトの全体が見通せないまま、赤ちゃんポストを早急に設置してしまったことに大きな問題があったのかもしれない。

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また、新しい見解を得た気がした。

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