ヴィジュアル系は、今、どうなっているのか!?
今年は2020年。新たな時代の幕開けでもあります。
「黒服系」「ポジパン系」「ダーク系」が生まれた80年代。
「ヴィジュアル系」という言葉が誕生し、一大ブームを築いた90年代。
そのフォロアー達によって生まれた「ネオヴィジュアル系」の00年代(また、大御所たちの「復活ブーム」の時代でもありました)
そして、スマホの普及やSNS・音楽ネット環境の変化によって、音楽業界全体のパラダイムが代わり、ヴィジュアル系のスタイル(方法論や戦略)も固定化され、なかなかブレイクアウトするバンドが出なかった10年代。(今振り返れば、10年代はとてつもなく大変な時代だったと思います)
もう、「ヴィジュアル系」というジャンル自体、「オワコン」なのか? いったい今、ヴィジュアル系界はどうなっているのか!?
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かつてなら、「ロッキンf」「フールズメイト」「SHOXX」など、ヴィジュアル系ムーブメントの今を知る媒体(雑誌)があり、最先端のヴィジュアル系バンドの動きをしっかりウォッチできました。
しかし、今はもはやそういう雑誌がほとんどありません。「ROCK AND READ」や「MASSIVE」などはありますが、それ以外にはほとんど「ヴィジュアル系バンド」を知る手がかりが出版物にはありません。
ネットでヴィジュアル系シーンを調べようにも、これがなかなかうまく情報収集できません。いわゆる「プラットホーム」のようなサイトが固定されてあるわけじゃないし、(僕の年齢もありましょうけど)どのバンドがどう活動しているのか、なかなかキャッチできていません。
それでも、今回、コロナ禍のおかげで、わりと新しいヴィジュアル系バンドをチェックすることができました。で、今、頑張っているヴィジュアル系バンドの音源を色々と聴きあさったりもしました。
そうしたら、…
今のヴィジュアル系界がとんでもなく面白くなりつつあることが判明したのであります!!!
長らく、「DIR EN GREY」や「ガゼット」などにインスパイアされたというよりは、そのモノマネでしかないような、ゴリゴリのシャウト系?(AメロとBメロがシャウトで、サビでキャッチになり、ドロップチューニング(あるいは7弦ギター)の重いザクザクのリフの楽曲メインのバンド)がほとんどで、新鮮さも斬新さもない時代が続きました。
他方で、ホストなのかバンドマンなのか分からないようなよく分からないバンドや、(ヴィジュアル系の基本である)「カッコよさ」のないふざけたバンドや、(僕ら80年代~90年代世代からすると)とてもヴィジュアル系サウンドとは思えないカッコよくない曲をやるバンドや、どのメンバーも同じような化粧・ファッションで、「これ、明らかに、人任せだろ?」というような自律性に欠けたバンドなど、ヴィジュアル系のViの字もないようなバンドも溢れていました。
結果、「つまらない音楽ジャンル」に成り下がりそうになっていました。例えるなら、「二郎系ラーメンしかないラーメン界」みたいな?? あとはなんか「ゲテモノ系ラーメン」しかないみたいな?? また、やたら演奏は上手いけど、それ以上の魅力が全く何もないバンド(技巧でしか勝負できない冴えないバンド)も結構多く出てきていました。
しかし!!!!
ここに来て、またなんといいますか、「はちゃめちゃ狂」っぽいバンド、粗削りでトゲトゲしいバンド、サイケデリックでヴァイオレントなバンド、サディスティカルでパンキッシュでクールなバンド、ダークで暗くてネガティブで陰鬱としたバンドなど、面白いバンドがどんどん出てきているんです。
今回は、僕も最近知った棘のあるクールでカッコいい4バンドと、今のV系シーンの若手の大御所バンドの作品をご紹介いたします!!
まずは、、、
このバンドの作品を聴いて、僕は、再び「ヴィジュアル系シーン」に関心を抱くようになりました。マニアックに言うなれば、「RAKU-GAKI」にした方が、BUCK-TICKっぽくてよかったかもしれない(苦笑)。
このバンドは、80年代のパンキッシュなダーク系バンドが新たに甦った感じのバンドで、とにかく荒々しくて、トゲトゲしくて、勢いに溢れていて、ひねくれていて、久々にトキメキました。
ボーカルのアニィは熊本出身(!)で、ギターの和真は愛知県出身で、ベースの斗唯は京都出身、ドラムの綾は香川県出身という、なかなかグローバル(?!)なメンバーで構成されています。V系的には、愛知と京都は、あれですよね(苦笑)。
他のバンドにない「批判精神」がとにかく凄くて、歌詞もめっちゃ尖っています。「ゴミのゴミらしい夢見ていたい」(「社会のちり箱」)という言葉に、初期ヴィジュアル系の尖った精神が見え隠れします。演奏的にも、特別お上手ってわけじゃないんですけれど、まさにそこがいいんです! インディーズバンドは「巧いこと」より「パワフルなこと」が大事だと僕は確信しています。「勢い」「パワー」「怒り」「情念」「下剋上精神」etc...。「目立つためならなんでもやる!」というハングリー精神。それを感じるのが、このRAKUGAKIの1st Full Albumでした。
今の彼らの看板曲「メリケンロック」を是非聴いてみてください!
めっちゃ熱くてパンキッシュでしょ!? ヴィジュアル系を心底愛している人なら、この曲を聴いて、絶対ビビビってくると思います。ギターのリフとかも♪
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続いて、、、
「ゼロヘルツ」と呼びます。とにかくバンド名がカッコいい。これ、とっても大事で、ヴィジュアル系バンドは、まずバンド名がカッコよくなければダメなんです。
このバンドは、90年代にヴィジュアル系シーンで活躍したバンドを彷彿とさせながら、今っぽさをがっつり反映させたカッコいいバンドです。とにかくカッコよさにおいて、他のバンドを凌駕しています。カッコいいのがヴィジュアル系だとすれば、このバンドは実にカッコいいです。
見た目だけじゃない。サウンドがとにかくカッコいい。シャウトはほぼなくて、しっかり歌でカッコよさを感じさせてくれます。ボーカルRoyの歌い方や歌い回しが、90年代ボーカルっぽくもあり、また今のロックシーンで活躍している非ヴィジュアル系の元気なバンドっぽくもあり…。同期音も、どこか懐かしくもあり、新しくもあり…。
このバンドの「DISTURBO」を聴いた時に、「うわ、こりゃ、カッコいいわ。突き抜けてるわ。クールでハードでエモーショナルで気持ちいいぞ」って思いました。ミドルテンポの二曲目の「太陽はただ僕達を照らしている訳じゃない」も、ちゃんと歌モノとして完成度が高いし、わりと凝ってるし、少しSIAM SHADEっぽかっりも…。三曲目の「LIBIDO」も何気にめっちゃクールでカッコいいんです。初期ガゼットっぽさがあったり、ダンス系の要素を取り込んだり…。
僕が2020年感動した彼らの「DISTURBO」、聴いてみてください!
ヴィジュアル系を愛している人なら、きっとピーンと来るはずです☆彡
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続いて、、、
どことなくZI:KILLを感じさせる若きヴィジュアル系バンド「ヌリエ」。文学的な雰囲気があるバンド。音もかなり荒々しくて、粗削りで、乾いた音になっていて、カッコいいです。音的には、「蜉蝣」を感じさせるかな? ボーカルもどこか大祐を彷彿とさせるというか…。
最新シングルのタイトルは、「人として人で在る様に」。このタイトルにキュンとしました。ダーク系・ポジパン系を感じさせるタイトルで、とってもネガティブでセンシティブでナイーブな曲世界を広げています。こういうバンドこそ、ヴィジュアル系ならではのバンドじゃないかなって思います。
でも、過去の焼回しにはなっていません。今、ロックシーンで活躍しているバンド(例えばワンオクやロットンなど)のテイストも感じたりもします。温故知新。懐かしさと新しさを兼ね備えたバンド。楽曲がとにかく気持ちよくて、心地よくて、「DIR EN GREY劣化バンド」以後の新たなヴィジュアル系シーンの幕開けを感じさせてくれます。
このバンドは、曲がとにかく良いです。そして、歌詞もとても伝統的なヴィジュアル系世界観を感じさせてくれて、貴重なバンドだと思います。2曲目の「夜の所為にして」なんかは、わりとアダルトな感じで、雰囲気もあって素敵ですし、3曲目の「骨太もんちっちくん」は、どこかLADIES ROOMっぽさもあったりなかったり…。「作品と言うよりは遊び」というフレーズもカッコいいです。みんなが驚くようなことをしてやろう!っていう精神もまた、ヴィジュアル系精神だなぁって思ったりもします。
今の彼らの代表曲「人として人で在る様に」、是非是非聴いてみてください!
イントロのギターの音を聴いて、ヴィジュアル系を感じない人はいないですよね!笑
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続きまして、、、
このジャケットを見た時に、僕は震えましたね。「おお、これぞ、ヴィジュアル系王道のジャケットだ…」、と。ZI:KILLやGilles de Raisの伝説のアルバムを彷彿とさせるアーティスティックなジャケット。このジャケットを見た時に、「このバンドは、これまでの10年代のバンドとは違う何かがある!」と感じました(久々の「ジャケ買い」をしました…って、今の若い人たちは「ジャケ買い」って言葉知らないだろうなぁ…)。
このアルバムの看板曲「カゲロウの錯覚」は、00年代~10年代のヴィジュアル系サウンドを踏襲しつつも、次世代を感じさせるスタイリッシュでハードでエレクトリックでクールでめっちゃ震えました。どこか「nuvc:gu」を感じるようなイントロの煌びやかさもキュンキュンしますね~。
カゲロウとあるからではないのですが、この曲にも、あの「大祐」を感じさせます。かつてのあのギラギラした大祐の魂を感じる楽曲になっていると言いますか。ボーカルの声の良さもこのバンドの魅力かな!?
演奏的にも、めっちゃ粗削りでソリッドで尖ってます。この粗削りさが、「ミライ」を感じさせるというかなんというか。上の三バンドよりは、サウンド的に技巧派っぽいですが、でも、荒々しさを残しているのがいい感じです。
彼らの代表曲、「カゲロウの錯覚」、是非聴いてみてください!
都会的で退廃的でクールでカッコいいですよね~。痺れました。
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というわけで、、、
今、ヴィジュアル系シーンで活躍している四バンドをご紹介しました!!
いかがだったでしょうか!?
2020年、コロナ禍で音楽業界は大変ですが、そもそもヴィジュアル系って、「映像重視」ですし、ライブをしない音楽ジャンルでもありました。初期デランジェなんて、ほとんどライブをしないバンドって言われてましたし(苦笑)。
他のジャンルは知りませんが、ヴィジュアル系バンドは今が実はチャンスなのではないでしょうか!? ここ10年ほどは、CDの売り上げががたっと落ちて、ライブでの収益に頼らざるを得ない状況が続きました。
でも、ヴィジュアル系って、他のロックジャンルよりは「ライブ依存度」の低いジャンルだったと思います。マリスミゼルだって、いったいどれだけライブをやっていたことか…(;´・ω・)。
80年代~90年代のヴィジュアル系(あるいは黒服系~ポジパン系)の世界観も甦りつつある、と僕はこの四枚の作品を通して思いました。
ヴィジュアル系は、音楽以上のジャンルです。ライブに還元されないシーンです。「映像」が最大の武器の世界でもあります。シャウトしりゃいいっていう世界でもありません。
20年代、ヴィジュアル系がどんどん面白くなっていく、と思いました。
00年代~10年代に構成された(業界によって作られた)ステレオタイプを捨てて、独自の路線を突っ走ってほしいと僕は願います。もっともっと他と違うことをガンガンやってほしいです。RAKUGAKIの作品に触れた時に(あの独特な歌詞カードを見た時に)、めっちゃ熱いものを感じました。
ワクワクしました。ドキドキしました。
ヴィジュアル系は、多種多様であるべきなんです。色んなタイプのバンドが「ヴィジュアルの極み」を目指して切磋琢磨する。2020年の今、色んなタイプのヴィジュアル系バンドが登場していることに喜びと驚きを感じました。
最後に、10年代のヴィジュアル系シーンを牽引してきた若手の中では大御所のバンドの新作を。
摩天楼オペラの新作「Chronos」がとっても素敵でした。
摩天楼オペラは、ヴィジュアル系全史を通しても、突出した完成度の高いバンドだと思っています。なんでこのバンドがもっと話題にならないのか、本当に疑問ですが、、、(;´・ω・)。
00年代に生まれ、10年代を駆け抜け、そして20年代を生きるバンド。
昔はわりと「メタル寄り」でしたが、徐々に「王道中の王道」のヴィジュアル系バンドに進化していったと思います。特に今作は、メタル色が薄れ、ヴィジュアル系サウンドの王道中の王道を極めていると思います。
2曲目の「Kiss」なんて、ヒットチャート1位になってもおかしくない名曲であります。捨て曲なしの素晴らしいミニアルバムをリリースしてくれました。
ね、いいでしょ(n*´ω`*n)!?
今こそ、ヴィジュアル系の復興の時期に差し掛かっていると言ってもいいかもしれません。
カッコよくて、クールで、エモーショナルで、サディスティックで、アグレッシブで、怒りがあって…。
色んなタイプのバンドが続々と出てきていて、とてもワクワクさせてくれます。
…
今の若い学生たちに聴いても、「へ? ヴィジュアル系? それ、なんですか??」って感じなんですけど、でも、「知らない」というのは、決して悪いことじゃありません。
「おお、こんな世界があったのか!?」という驚きへと発展する可能性があるから。
このシーンにはまり込んで、早30年以上。
これからは、僕的には、ヴィジュアル系音楽シーンの「啓蒙活動」もしっかりやっていこうと思います。
それから、若手のヴィジュアル系のバンドマンのみなさん、ホント、頑張ってほしいと思います。今はピンチですが、チャンスでもあります。
次の時代のヴィジュアル系のモンスターバンドを夢見て、自分たちが一番カッコいいと思う音・スタイル・ヴィジュアルを貫いて、突き進んでいってほしいと願います。
そして、最高にカッコいいバンドを目指して、頑張ってくださいね!!