


黒雲沸き立つ空の怪しげな夕暮れのケルン。
昨日のケルンの街はやけに騒がしかったので一体何故なのかと妙に思っていた。
街のいたるところにパトロールカーが待機している、警官が立っている、ヘリコプターが旋回している。
聞いてみればアンチファズムスのデモンストレーションだった。
5月8日は第二次世界大戦終戦日だ。この時期アンチファシズムのデモンストレーションがあちこちの街で企画されている。
ケルンに出向いたのはデモに参加するためではなくって、展覧会のオープニングである。
ケルンの大聖堂脇にあるルードウィッヒ美術館内の図書館で開かれた"アーティストブック、エディション、ブックオブジェ”の展覧会に参加した。
本棚の間のショーケースにそれぞれの作品が展示されてなかなか楽しい。
オープニングは図書館の本棚の間。
帰りには仲間で飲み屋に入る。
Walfisch(鯨)というビール屋に行った。金曜日の晩でもあることだし満席、笑い声と話し声で店は揺れるほどの賑やかさだった。
2階にあがるとオイルサーディンの缶詰様にぎゅうぎゅうと詰めれば15人ほどなら座れる小部屋があって、その部屋に押し込まれてsünnerケルンのビールを飲んだ。隣の部屋には若者達(男)のグループが詰まっていて、テーブルの上には妙な物が突き立っている。よく見るとビールの入ったシリンダーで自分で注いでは飲む趣向だ。物珍しくて余興的には面白いけれど、仕舞いのほうでは美味しくなくなっちゃうのではないか?と他人事ながら心配してしまう。
3Lと5Lのシリンダーがあるらしいが、若者達はビールが気の抜ける前に飲みきってしまうのだろう。
私はお酒はあまり飲めないし、(。。。というと首をかしげる人は"最近”の私を知らない。。。)ビールは1,2杯飲んだらもういらない。
だから5Lのシリンダーに入ったビールなぞ見ただけでお腹は一杯だ。
メニューを見るとケルン名物という項目の下に3つほど名前があって、おなじみのHalver Hahnがあった。標準語に直して想像すれば Halver Hahn → halber (半分)Hahn(鶏) → 丸焼き鶏の半分かなにかが出てきそうなものだが実はライ麦のパンの"半分”にゴーダチーズが乗っているだけのいたってシンプルな食べ物だ。どうやらHahnは鶏ではなくHaben(英語のhave)がなまったものらしく、"半分欲しい”という注文から出来上がったような事だった。
チーズ乗せパンには食指はうごかなかったので、私は"ケルンのキャビア”という代物を注文してみた。もちろんキャビアが出てくるとは想像できない。
一体なんだろうなあと待っていると、ライ麦パンと血のソーセージ、玉葱輪切りの山盛りが皿の上に乗ってきた。ケルンのキャビアは血のソーセージだった。
血のソーセージというと聞こえが悪い。吸血鬼じゃあるまいし。。。という人もあるかもしれないけれど美味しい。私は好きだ。
そのまま切って食べてもいいし、湯がいたり、焼いたりして食べるが、個人的には軽く湯がいて茹でじゃか芋をそえて食べるのが結構好きで、我が家の近所には美味しい血のソーセージを作る店がある。湯がくと皮の中身はぼろぼろとした様子になってそれをナイフとフォークでしごきだしフォークの背でつぶした熱々ジャガイモと軽く合わせると両者が良い具合に引き立てあって口の中でとろけるように美味しい。。。思わず顔がほころんで解けてしまう。。。話がそれた。
私の隣に座ったフランス人のフランソワ-ズは注文したパステーテにかかっていたクリームソースをパンで片付けたいと思い、給仕の女性にパンを一切れ所望した。
しばらくして届いたのは全粒ライ麦のごつごつの固いパンのバター付きで、用途にそぐわず彼女はしばし途方に暮れたが、土着ケルン文化に負けじと、ぼろぼろ崩れるバタつきの全粒ライ麦パンで皿のソースをすっかり拭って仕上げ終了した。
この場合ライ麦パンでソースを拭いきったフランソワーズの勝利だね。
何の話だったかというとケルンに展覧会のオープニング出かけた話だったのだけれど。。。