金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

仕事は楽しく遊びは真剣に

2015年06月24日 | 投資

昨日(6月23日)日経平均株価は381円23銭上昇して、20,809円で引けた。今年の最高値更新である。2000年4月に付けたITバブル時の高値20,833円の更新も視界に入った。昨日の株高の要因をマスコミはギリシア危機に解決の目処が見えてきたことを上げているが、株主総会ピーク時の株価上昇は、日本企業のコーポレートガバナンス改善と企業の増収増益に対する投資家の信頼が高まっていることの表れではないか?と私は考えている。現在の株価水準はバリュエーションから見るとそれ程割高ではないので、私は株価に上昇余地はあると判断している。大きな外部環境の悪化がないという前提の上の話だが。

だが、日本企業が更に伸びるためには、コーポレートガバナンスの改善に加えて、働く人達の価値観が変わることが必要だと私は考えている。どのように変わることが必要か?というと「仕事は楽しく遊びは真剣に」という方向の変わる必要があると私は考えている。

「仕事は楽しく遊びは真剣に」という言葉は、今年の春青森の八甲田山に春スキーに行った時、ご一緒した設計工房フレックスの畑中社長のモットー(HPに書いている)だが、良い言葉なので使わせて貰うことにした。

CNBCのChinese workers chill as Japan's workers stressという記事の中で、世界最大手クラスの総合人材会社のランスタッド社は「余暇では仕事からスイッチオフすることが、生産性を改善し、従業員のモラールを高める」と述べている。

記事の表題は「中国人の従業員は落ち着いていて、日本人の従業員はストレを感じている」という意味だ。Chillは「寒さ・冷気」という意味だが、俗語では「落ち着いた」とまったく違った意味になる。

ランスタッド社の調査によると、日本人の44%は休日でも仕事のことが頭から離れない。この比率は近隣諸国ではマレーシア36%、シンガポール32%が高く、オーストラリア24%、香港19%ではかなり低くなっている。でも一番低い、つまり仕事を離れるとリラックスしているのが中国人で、中国人は15%しか仕事を離れると仕事のことを考えないという。

休みの間も仕事をスイッチオフできるかできないかは、雇用構造と大きく関係する。日本の正社員は長期雇用を前提としているので、通常の勤務時間が過ぎても会社に残っている傾向が強く、必要があれば、休日出勤すら厭わないと考える傾向がある。

一方労働市場の流動性が高い中国では、仕事は仕事、遊びは遊びと割り切る傾向が強く、職場を離れると仕事のストレスを感じることは少ないとランスタッド社は分析している。

無論このような分析はモノゴトの一面しか見ていない可能性はある。つまり日本の正社員群は、日頃はオンオフに関わらず仕事のストレスを感じる傾向が強いが、雇用という面ではストレスを強く意識しないだろう。一方中国の従業員は日頃は仕事を離れると仕事のストレスを感じることは少ないだろうが、雇用という面ではストレスを感じるのではないだろうか?

また「自分の自由な時間における仕事からのスイッチオフが生産性とモラールを高める」ことは間違いないが、日本の従業員と中国の従業員を平均で見て、後者の方が高いということはできないと私は考えている。

とはいうものの、日本の会社ももっと仕事のスイッチオフを考える必要があることは確かだ。そのためには従業員の会社に対する貢献を勤務時間や拘束時間の長さで評価するのではなく、成果で評価する人事体系が先行する必要があることは間違いない。

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【書評】「欧米に寝たきり老人はいない」誇張はあるが主張は分る本

2015年06月22日 | 投資

最近「欧米に寝たきり老人はいない」(宮本顕二・宮本礼子著 中央公論新社1,400円)を読んだ。

著者はともに内科医の夫妻で、顕二氏の専門は肺で、礼子氏の専門は認知症だ。2007年に礼子氏は認知症の勉強にスウェーデンに行き、同国の終末期医療の現場を見た。スウェーデンでは高齢者がものを食べなくなっても点滴や経管栄養を行わない。礼子氏を案内してくれたスウェーデンの医師は「ベッドの上で、点滴で生きている人生なんて、何の意味があるのですか?」という。

実はスウェーデンでも20年前は点滴や経管栄養を行っていたが、20年かけてなくしてきたという。

この本に誇張があると書いた理由は「欧米に寝たきり老人はいない」というタイトルだ。これは明らかに誇張だ。欧米にも寝たきり老人は沢山いる。日本のように病院のベッドで寝ている人が多いか、自宅で寝ている人は多いかの違いはあるが。そのことは各国の健康寿命を比較すると分る。健康寿命とは日常的な介護を受けずに、自立した生活を送ることができる期間をさす。平均寿命から平均健康寿命を引いたものが、平均的な介護期間だ。各国ともおおむね平均して10年程度の介護期間を持っている。介護期間の一部は「寝たきり」の期間になるから、どこの国でも「寝たきりの老人」はいるのであると私は思う。

そのことは著者も認めている。著者は「欧米豪6ヵ国の終末期医療の現場を見て」の中で「もちろん寝たきりの人はいましたが、日本のようにチューブから栄養を受け…一言も話せず、何年も寝たきりのままの老人はいなかったという意味です」と書いている。

これは「寝たきり老人」という俗語がカバーする範囲の問題に起因する。著者は「寝たきり老人≠寝たきりの老人」としている。寝たきりの老人には「体は動かないは話ができる」人が入るが、寝たきり老人は経管栄養を受けていて一言も話さない人を指すと使い分けているのだ。私は「寝たきり老人=寝たきりの老人」と考えていた(俗語なので定義ははっきりしない)ので、書名を見た時「外連味のある題だな」と感じたのである。

WHOの統計によると、男性の健康寿命は先進国ではほぼ同じレベルだ。日本の男性の平均健康寿命は72歳、スウェーデンは71歳、ドイツは69歳だ。しかし平均寿命には少し差がある。日本の男性は80歳なので要介護度介護期間は8年、スウェーデンは81歳なので10年、ドイツは79歳なので10年である。

一方女性の健康寿命にはかなりばらつきがある。日本の女性の平均健康寿命は78歳、スウェーデンは74歳、ドイツは73歳だ。日本の女性の平均健康寿命は世界トップだ。女性の要介護期間は日本が9年、スウェーデンは11年、ドイツは10年である。

要介護期間の長さの比較からは、「日本人は平均寿命も長いが、寝たきり(経管栄養など)老人が多い」というような推論は成り立たない。これはエピソード的には長期にわたる寝たきり老人が話題になるが、実際の経管栄養を受けている人の平均期間はそれほど長くないことを示唆しているかもしれない。

「欧米に寝たきり老人はいない」はエピソード仕立なので、仕方がないが、色々な統計データと組み合わせながら、日本の健康と医療が抱える問題を浮き彫りにしてくれれば著者の主張がより鮮明になったのではないだろうか?

さて著者の主張は何かというと、医者や家族が、一人一人が尊厳を持って人生を完結させる道を見つけることが大事ということだ。

礼子氏は巻末の「安らかな死を妨げるものは何か」の中で「『実は、安らかな死を妨げているのは医師ではないか』と考えるようになりました。(社会福祉法人の理事長がおっしゃった)「病院で安らかに亡くなることができるならば、施設の職員も安心して入所者を病院に送ることができます」という言葉が重く響き、医療者として非常に恥ずかしく思う」と書いている。

正直で良心的な人だと思う。確かに安らかな死を妨げている要因の一つは医師とその背後にある延命至上主義の医療教育にあることは間違いないだろう。だが多少お医者さんの味方をすれば、日本のお医者さんは忙しすぎることに問題があると私は考えている。

人口当たりの臨床医師数を各国と比較すると、日本の医師数は少ない。日本の人口千人当たりの医師の数は2.3名で、ドイツ4.0名やスウェーデン3.9名、イギリス2.8名より少ない。

だが終末期医療についてもっと大きな問題は病院のベット数に較べて臨床医の数が極めて少ないことだ。病床百床当たりの臨床医数を比較すると日本は17.1名だが、ドイツは47.6名、スウェーデンに至っては148.7名と非常に分厚いことがわかる。

国民一人当たりの医療費を比較すると日本は3,649ドルで、ドイツ4,811ドルやスウェーデン4,106ドルと低い。このことも問題の一つではあるが、私はWHOの統計から見て、日本の医療の問題は「ベッド数が多くて平均入院期間が長い」ことと「一人当たりの外来診察回数が多い」ことにあると私は考えている。

日本の人口千人当たりの病床数は13.4で、ドイツ8.3やスウェーデン2.6を大きく上回る。また平均入院日数は日本が31.2日、ドイツは9.2日、スウェーデンは5.8日だ。

病床の回転率を考えてみると、日本では人口10万人あたりの病床数は1,340床あるが、一つのベットは一人患者に1カ月以上占拠されるので、年間に入院できる人の数は42.9名になる。

スウェーデンは人口10万人あたりの病床数は260しかないが、入院日数が5.8日なので44.8名の患者が入院することができる。だから「入院の恩恵」を得ることができる患者数に日本との差はない。

つまり日本はベッド数というハード面ではドイツ・スウェーデンを凌駕する~あるいは自宅の設備が貧困なのでトータルでは負けている?~が、一人当たりの入院日数が極端に長いので、入院サービスを受けることの住民の数に差はなく(ドイツに較べると半分)、ソフト面では患者に対して医師の数が非常に少ないという現象が起きている。

これでは「患者に寄り添った治療を医師に求めても不可能」だろう。入院日数や外来診療回数を減らす工夫が伴わないと、本人が希望する終末期医療を迎えることは難しいのかもしれない。

以上のようなことはこの本には書いていないが、医療問題を考えるきっかけとなったことで、読んで良い本に推薦しておこう。

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デフォルト懸念でギリシアの銀行から預金流出加速

2015年06月19日 | ニュース

昨日(6月18日)ユーロ圏財務相会議が開かれたが、ギリシア救済の合意に至らなかった。

会議後二人の関係者がロイターのインタビューに次のとおり答えた。

「ユーロ財務相会議のデイセルブルム議長(オランダの財務相)がECB専務理事にギリシアの銀行は明日開くことができるだろうか?と質問したところ、ブノワ・クーレ専務理事の答えは「明日は開きます。しかし来週月曜日開くかどうかは私には分らない」

ギリシアの民間銀行から預金の流出が加速している。今週に入って3日間で20億ユーロの預金が流出した。これは家計と民間企業の預金合計1,336億ユーロの1.5%に相当する金額だ。先週まででも毎日2億-3億ユーロのペースで預金は流出していたが、IMF等からの救済融資の期日が今月末に迫る中、ギリシア国民の懸念が高まっているのだ。

ECB専務理事の発言をギリシア国民の知るところとなると、預金引き出しは加速して本当に来週は銀行窓口を閉めざるを得ない事態が起きるかもしれない。

随分乱暴な発言(財務相会議自体は密室会議だが、その後のインタビュー発言)をしたものだ、と思うが、ひょっとするとECB専務理事は、ギリシア政府に圧力をかけるため、わざとリークしたのではないか?と私は勘ぐっている。

デイセルブルグ議長は「私はギリシアの銀行からの預金流出額を確認できないが、もし国民が預金を引き出しているとすれば、彼等は国の行く末を非常に懸念している。ギリシア支援協議が合意に達することはギリシア国民の大きな利益だ」とギリシア政府に圧力をかけるコメントを述べていた。

ユーロ圏首脳は22日月曜日夜緊急サミットを開く予定だ。月曜日にギリシアの銀行が窓口をあけることができるかどうかは、会議の趨勢に大きな影響を与えるかもしれない。

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【イディオム】Water table.NASAが水資源枯渇リスクを警鐘

2015年06月18日 | 英語・経済

ワシントンポストにNew Nasa data show how the world is running out of the water「Nasaの新しい調査は世界中でいかに水資源が枯渇しつつあるを示している」という記事が出ていた。

Nasaは衛星から、地球の引力の微妙が変化を測定して、長年にわたる地下水の貯蔵量の変化を観測してこの結論に至った。

Nasaの水資源研究者はThe water table is dropping all over the world. There is not an infinite supply of the water.「世界中で地下水面は低下している。水の無限の供給がある訳ではない」と述べている。

Water tableは「地下水面」。少し詳しくいうと「帯水層」Aquifer(地下の透水層において地下水で飽和されている層)の表面の部分を指す。

記事によると世界には37の大きな帯水層があるが、その内21で枯渇が始まっているという。その内アラビア湾周辺、インド北部や北アフリカなど人口が多くかつ帯水層の地下水を利用する以外に代替手段のない地域で非常に危険な状態が起きているという。

岩盤などの上に砂礫層が堆積していると帯水層になると言われるが、雨水や雪解け水が帯水層に溜まるには非常に長い時間がかかる。井戸を掘って帯水層の水をくみ上げ、使い過ぎると「水の消費>水の供給」となり、帯水層がやせ細っていく訳だ。

記事によると世界全体では、消費する水の35%は帯水層の水に依存しているという。

日本について調べてみた(三協工業のHPによる)ところ、日本の地下水依存度は全体では12.4%だ。ただし飲料水など生活用水の依存度は21.7%、工業用水の依存度は28.4%だった。水質が良くて、天候の影響を受けず取水量が安定している地下水は多くの自治体が水資源に利用しているのだ。

地下水の大量の利用は、気象の変化にも影響を与えている。くみ上げられた水は、蒸発し水蒸気となり、循環してくみ上げた地域からかなり離れた場所で雨を降らす。また海に流れ出た水は海面を上昇させる。 2012年に発表された日本の研究によると、過去数十年の海面上昇の原因の4割はくみ上げられた地下水が海に流れたことによるという。

地球レベルの水不足は深刻な問題だが、水資源が豊富な日本にとっては大きなビジネスチャンスがあるかもしれない。

それは「水を農産物の形で輸出する」ということだ。日本の農業用水の地下水依存度は6%に過ぎない。つまりほとんどの農業用水は雨水か雪解け水を利用しているということだ。豊かな降水量を農産物特に水分の多い果実のような形でドンドン輸出する日があるのではないか?と私は考えている。

だが、それは利己的な発想過ぎるかのしれない。本当は水のリサイクル技術などを高めて、地下水の歩留まりを高めることが必要なのだろう。

 ★   ★   ★

最近出版した電子本

「海外トレッキングで役に立つ80の英語」

「インフレ時代の人生設計術」 B00UA2T3VK

「人生の山坂の登り方・降り方」 http://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00LYDWVPO/

「英語の慣用表現集」 http://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00LMU9SQE/

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梅雨の神代植物園、雨に濡れた花がきれい

2015年06月17日 | まち歩き

神代植物園に花の写真を撮りに行きました。東京都の施設であるこの植物園は65歳以上の入園料は半額の250円です。実は半額扱いになってから入場するのは今日が初めてです。半額券は自動券売機で買いましたが、入場口で「身分証明書」の提示を求められるのではないか?と思い、運転免許証を用意していました。ところが係りの人は何も言わずに半券を切ってくれました。「顔を見ただけでシニアと分るのかなぁ」と少しがっかり。

さてこの時期植物園で目についた花はまず睡蓮です。この時はしとしとと雨が降っていました。

カメラの設定を色々変えて一番良さそうなのを選んでみました。

次の花はアジサイ。

深大寺門から深大寺の脇を通って水生植物園にも行きました。菖蒲の花が見ごろです。

ヤンマが羽根を休めていました。

神代植物園に戻る頃には雨はあがっていました。

蕎麦屋さんの前の狸を一枚。

山登りの時は仲間と歩いているので、カメラの設定を変えてきれいな写真を撮ることは難しく少しフラストレーションがたまることがあります。

一人でカメラをこねまわしながら花の写真を撮っているとつい時間の経つのを忘れてしまいました。

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