先週金曜日(6月5日)に起きたキナバルの地震は、地元ではヨーロッパ登山者が、山頂で裸になって写真を撮ったことに対する聖なる山キナバル山の怒りによるものだ、という声が広がっている。
イスラム教徒が多いマレーシアでは、裸を晒すことは一般的に嫌われる。また一部には山頂で放尿したとも言われている。彼(女)等の行為がキナバル山に祖霊が眠ると信じる先住民の怒りを買っていたことは間違いない。
現代科学の知見を持って「地震と山の神に対する冒涜は関係がない」ということは簡単だ。だが現地の人が昔から信じ崇めるものに尊敬の念を払うことができない人は私は山に立ち入るべきではないと思う。
今回の地震で直近のニュースでは13名の死亡が確認され、6名が行方不明になっている。行方不明者の中には、シンガポールの小学校の遠足登山者が多く含まれているようだ。
マレーシア政府の事故対応の遅れを批判する声がある一方、ガイドたちの献身的な救助活動を称賛する声が上がっている。
山でこのような事故が起きた場合、海外からの登山者は地元ガイドの時には自分の身の危険を顧みない献身的な努力によって、命を守られることが多い。そのようなことを考えると、我々登山者は地元の人々に対して謙虚であるべきだし、彼等の慣習、特に宗教的慣習については尊重し、それを守るべきである。
また今回のキナバル山の事故は、山のリスクについて色々なことを教えてくれた。
一つは滅多に地震が起きることがないと言われたいた、キナバル周辺でも地震は起きたのである。
一旦このような災害が起きると比較的登山が簡単だ、と言われるキナバル山のような山でも登山道は破壊され、いたるところで地滑り、落石が発生し、下山は大変困難になる。食糧・水・防寒着の準備不足で苦労した登山者も多いようだ。
我々は「万一に備えて」それらのものを準備して山に登るが、地球レベルで異常気象や火山活動・地震活動が活発になっていることを思うと、万一の範囲を拡大して、装備や食料を用意しておく必要がある時代なのかもしれない。
なおサバ州の観光大臣によると「登山道や山小屋の整備・安全確認等のため、キナバル登山は最低3週間は禁止」ということだった。