FTにゴールドマンザックスのキャッシー松井さんが、「日本株は当面ぱっとしないけれど、1年後には震災前の水準まで戻す」という寄稿をしていた。それによると、現在818ポイント程度のTopixは970まで上昇する。
その主な根拠は復興需要と現在のバリュエーションの低さだ。1995年の阪神大震災の時、日本株のPERは77倍だったが、現在は世界的にみて妥当な13倍だ。復興需要と輸出の拡大で、一株辺り利益は22%上昇すると予想するので、株価指数は15-20%上昇するという推論だ。
また松井さんは一般的な見方とは異なり、震災は日本のデフレ脱却を遅らせるより、早める効果があると述べ、早ければコアインフレ率は4-6月の間にもプラスに転じると予想する。
ただし目先の株価はぱっとしない。その第一の理由は米国景気の見通しの悪さと当面持続する円高の影響で日本の景気もさえないこと。次に電力供給の不透明さから来る生産面の不透明さ。そして三番目に既に27週間にわたり、600億ドル近く日本株を買っている外国勢が、新たなポジティブなサプライズがないと、新たな買いに動かないという需給面の弱さだ。
ドル円為替については1年後には金利差から86円へ向かうが当面は現在レベルの円高が続くが、当局は介入に動かないというのが松井さんの予想だ。
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昨日国会答弁を少しテレビで見ていたが、質疑は政府が福島原発1号機の海水注入の一時中断を指示したかどうかということを延々と論じていた。事実関係の究明も重要だろうが、震災復興の具体的道筋についてもっと前向きな議論ができないものだろうか?
松井さんは株価回復の一つの根拠に復興需要を挙げている。一次補正予算で4兆円の手当てはできたが、更に二次補正で10兆円は必要だろうが、大丈夫なのだろうか?
官(菅)は立ち止まっているが、民間企業は立ち止まっていない。松井さんは民間企業は震災前の在庫管理を「ジャストインタイム」から「ジャストインケース」に変える動きがあるという。ジャストインケースというのは「万一に備えて」ということで、在庫を手厚くするということだ。これはGDPを押し上げ資金需要を増やすので、経済成長にはプラス材料。
だが生産設備の海外多角化に消極的だった企業も、リスク分散の観点からM&Aなどを通じて海外多角化を図るだろう。震災復興に向けた政府や自治体の具体的な青写真が遅れると、この動きが加速されそうだ。