GWの前半(4月29日―5月1日)は、月山と蔵王山に山の会の連中とスキー登山に出かけた。正確にいうとスキーチームと登山チームの混成部隊である。
今回は天気が悪く月山・蔵王山とも登ることができなかったが、月山ではバックカントリースキーを存分に楽しむことができたのでスキー隊にとっては充実した1日だったと思う。
1日目29日は11時40分頃一行7名が山形駅東口に集合。2台のレンタカーで志津温泉・つたやに向かった。
旅館到着後登山隊3名は車で羽黒山に出かけ、スキー隊4名は宿の車で姥沢まで送って貰いスキーにでかけた。
宿では雨だったが姥沢まで登ると霰混じりの雪になっている。リフトで上まで登ると視界数メートルのガスである。
よそのパーティの2名のスキーヤーが滑り始めたので、その後を追いかけてホワイトアウトの中を滑っていく。後続の3人が気になるがあっという間に姿が見えなくなった。
白い無間地獄を降りていくような錯覚にとらわれながら、沢を滑っていくと左手にリフト乗り場が見えた。
この一本で十分、ということになりこの日は宿に戻り温泉・お酒・美味しい料理を楽しんだ。つたやは1泊1.7万円ほど。山屋が泊まる旅館としては高いが、お値段程度の価値のある旅館だ。
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なお山スキーコース(姥沢から志津温泉)について宿の人に聞いたがあまり正確な回答はなかった(宿の人は志津温泉まで滑ることができると思いますといっていたが、姥沢では滑降禁止となっていた)。
翌30日志津温泉は晴れているが、風が強く月山方面に飛ぶように雲が流れていく。8時に旅館の車で姥沢に送って貰い、9時5分リフト終点から登山開始。シールを持ってきた私とYさんは駐車場でスキーにシールを貼った。
リフト終点では強い風が吹き、視界は悪い。
月山に向かう人は夏道沿い(といっても標識がある訳ではない)の四ツ谷川源流部を横断していく人と姥が岳から稜線に出る人がいる。前者の方が歩行距離が少し短いがガスが深くなるとルートを取り難くなるので、姥が岳に登る人が多かった。
我々は源流部横断を考えていたが、アイゼンが不調な人などが出てきて、ペースが上がらない。天候の回復も見込めずモチベーションも上がらないのであっさり今日の登山は止めることにした。
リフト終点の休憩所に戻ったのは10時。コーヒーを沸かして休憩した後、スキー隊は姥沢を滑り、登山隊は下山後湯殿山神社か注連寺に参拝にいくことにした。
下の地図は今回滑ったコースの軌跡だ。月山リフト終点から姥沢まで滑るコースは大きく分けると3つある。一つは姥が岳から南に延びる尾根に沿ってトラバースし、無立木の広大なスロープを滑るものだ。ここにはモーグル斜面もあるのでコブの好きな人はコブを楽しむことができる。
次のルートは姥沢沿いに谷を滑るものだ。下まで谷を滑っても良いが少し単調なので右手の樹林帯に入り林間滑降を楽しんだ。
最後のルートは休憩所の脇を少し登り四谷川の大斜面を見通すところから尾根沿いに滑るというものだ。
四谷川を除くと谷底を登ってくる人が見えた。また四谷川の谷底に向かって滑っていく人も何人かいた。滑っていくと姥沢の駐車場まで降ることができそうだが、リフト乗り場に戻るには右の尾根を滑って大きな斜面に出るのが良い。
ここは所々灌木が混じる急斜面でテールを飛ばしながら軽快に滑ることができた。雪はこの時期にしては軽く非常に気持ちの良いスキーを満喫することができた。月山スキー場はスキー場といっても標識はない。どこを滑っても良いが自己責任でどうぞ、ということだ。そこがワイルドで楽しい。
リフト終点付近はとても寒く霧氷は一日中溶けることがなかった。2時にはスキーを切り上げ、3時のシャトルバスで志津温泉に戻り、蔵王温泉に車を回した。
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春に月山に登るのは2回目である。前回は天気が良く汗をかきながら頂上に登り、朝日連峰の雄姿を楽しんだ後、姥沢まで一気の滑りで下山したが、今回は天気が悪く登頂は断念し、バックカントリースキーを楽しんだ。
「月山は平凡にして非凡な山である」というのは黎明期の登山家・小島烏水の言葉だが、まさに荒れた時の月山は非凡な山である。
ところで月山・鳥海山・飯豊山など東北の2千メートル級の山は世界的に見ても貴重な山である。それは世界最大の積雪量と世界でもまれな強風にさらされ頂上部には無立木の大雪原があるからだ。雪のある山はヒマラヤ・ヨーロッパアルプス・ロッキー山脈などに沢山あるが、これほど身近でしかもバックカントリースキーに適した山がある国は日本以外に極めて少ないだろう。登山愛好者にとって日本は本当に恵まれた国なのだ。
山を愛するものにとって春先のひと時、山スキーを持って東北の山に入ることほど楽しいことはない。これ程楽しいことは人生にあまりないと思うのだが、我々の山の会でも本格的バックカントリースキーを目指す人が少ないことを私は少々残念に思っている。
ただしバックカントリースキーにはそれなりのリスクもあるので、無理に勧める遊びではない。