大学の会館利用料支払とゆうちょ銀行からの送金、というのはITの対極にある最悪の組み合わせだった。具体的に言うと私が事務局を担当している学会で、9月に中央大学の駿河台記念館の会議室を利用することになった。利用代金は3か月前の予約段階で全額前払をしないといけない。しかも金融機関窓口に大学が作成した用紙を持参して、その用紙に銀行の収納印を押してもらい、それを大学に郵送しなければならない。大学が指定する金融機関の窓口に現金を持参すると送金手数料はかからないが、他の金融機関から送金すると手数料がかかる。
学会のような法人が金融機関窓口で10万円を超える現金振り込みを行う場合は、登記事項証明書の原本提示など求められる書類が多いし、時間がかかる可能性が高い。そこで送金手数料が高いことを承知で学会の取引金融機関であるゆうちょ銀行の窓口に手続きに出向いた。(学会の取引金融機関はゆうちょ銀行のみ)
ところがゆうちょ銀行の窓口では最初「大学が作成した用紙に収納印は押せません。そのようにマニュアルに書いています」と言われた。そのまま引き下がる訳にはいかないので、本部に電話で指導を仰ぐように依頼したところ、しばらくしてOKの返事を貰った。ところがそれから「こっちの書類に送金先を書いてほしい」などと散々clericalな手続きにつき合わされた。過去に10万円以下の会議室使用料を大学指定の金融機関窓口で現金払いをした時は簡単に済んだのだが・・・と思いながら「ハイ、ハイ」とお付き合いをした。
「送金手数料がかかりますがよろしいですか」「はい、承知しています」
でいくら送金手数料がかかったか?というと864円。64円は消費税である。
最近ネット銀行からの送金しか行っていないので、窓口での送金手数料の高さには驚いた。これはもはや「窓口では送金業務は行いません」という忌避的料金設定というべきものだろう。
このようなことが起きる最大の原因は、会館を運営する大学が自分で制定した用紙による窓口での支払いを会館利用者に求めることによる。大学側からすると、領収印のある紙を受け取り、記帳や照合を行うと便利で、ミスが少ないからこのようなアナログな方法を続けているのである。
さらにいうと「大学の施設を第三者に貸してやるのだから、それ位の手間やコストは利用者が負担して当然だ」という一種の驕りがあるように私には思われる。
私が学会の総てを取り仕切っているのであれば、このような上から目線でIT対応の遅れた大学施設など絶対に使わないのだが、理事の中には会館のファンもいるようで、一存で「あんな施設は二度と使わない」と言えないのがもどかしい。
ついでにいうと、一生懸命対応してくれたゆうちょ銀行の人には気の毒だが、ゆうちょ銀行も全体として「利用者目線」が欠けているようだ。
一部の大学やゆうちょ銀行は「利用者の便利を図ろう」「利用者に無駄なコスト負担をかけないようにしよう」「そのためIT技術を活用しよう」という意識が全く欠如しているのである。