サウジアラビアのアブドラ国王は療養先のモロッコから3ヶ月ぶりに帰国し、国民の不満をなだめるため、*360億ドルの予算増額を発表した。FTによると、この中にインフレを相殺するための公務員給与の15%引き上げ、債務で投獄されている囚人の救済、学生、失業者への援助が含まれている。資金が豊富なサウジアラビア政府は、2014年末までに教育、インフラ、ヘルスケアの改善のために4千億ドルを使うと約束している。バンク・サウジ・フランシ銀行のチーフエコノミストは「国王は社会福祉の形で富の浸透効果を試みているが、それは中期的な痛みを緩和するアスピリンであり、長期的な住宅問題や失業問題に対する解決策ではない」と述べている。
サウジアラビアでは経済発展が持続しているものの、失業率は10%以上に高止まりし、政府高官はそれが一つの大きな懸念材料であると述べている。
「飴玉はサウジアラビアの公衆の政治的願望を解決するものではない。サウジでは抗議行動、政党、労働組合は禁じられている。我々に必要なものは新しい教育大臣であり、厚生大臣であり、司法制度の改革であり、体系的な法律である」と改革派は述べている。
改革派の中には、アルワリード・ビン・タラール・ビン・アブドルアジーズ王子もいる。彼は世界5番目の大富豪。シティコープやウォルト・ディズニーなどへの投資で著名だ。
金があるから、国民の不満は少ないと思われているサウジアラビアだが、国王から現金を手渡されるだけでは納得しない国民もいるということだ。FTはある改革派の人物の「クエートのような立憲君主制度は今達成不可能な目標ではない」という言葉を紹介していた。金ではなく、国民が「尊厳、改革、表現の自由、透明性」などを求めだすとサウジにも変革がおきる可能性がある。もっとも改革派の動きは今のところ小さいが、87歳と高齢なアブドラ国王に万一のことが起きた場合などは要注意ではないか?と私は考え始めている。
*日経新聞は350億ドルと報じているが、FTの360億ドルを採用した。