金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

エジプトはインドネシア型それともイラン型?

2011年02月08日 | 国際・政治

エジプトの反政府デモが始まって2週間過ぎた。収束の兆しも見えるが、ポスト・ムバラクがどうなるのかは予想がつかない。ある人は40年前のイラン革命を想起し、神権政治の出現を懸念する。一方ある人は12年前のインドネシアのスハルト政権の崩壊を想起して、エジプトでも民主化が進むのではないか?と楽観的観測を述べる。

エコノミスト誌はRemenber 1998というタイトルで、32年間続いたスハルトの独裁政権に対する民衆の抗議活動と今日のエジプトの反政府デモを重ねる。

だがエジプトとインドネシアは違うと主張する専門家もいる。米国の外交問題評議会のHPにKurlantzick氏が「エジプトは次のインドネシアか?」という記事を書いている。筆者はその中で次の論拠からエジプトがインドネシアになる可能性は低いのではないか?と述べている。

第一の理由はインドネシアとエジプトを政治地政学的に較べた場合の後者に対する周辺諸国の利害関係の複雑さである。インドネシアは大国であるが、米国を含め周辺国が大きな利害関係を持っていなかったので、独自の政治体制を推し進めることができた。

ところがエジプトには米国、イスラエル、サウジアラビア等周辺国が大きな利害関係を有しているので、反米的政権ができることには強い抵抗がある。

第二にインドネシアでは、スハルト政権下でも潜在的な民主主義のリーダー、例えば後に大統領になるメガワティやワヒドのような人材がいて国内の知名度が高かった。ところが今のエジプトには彼(女)等に匹敵するリーダーがいない。エルバラダイは海外では有名だが、エジプト国内の知名度は低い。

最後にインドネシアの軍隊はスハルト一族の事業に深く関与していて国民の信頼を失っていたので、軍の発言力が低かった。しかしエジプトでは国民の軍に対する支持が大きいという違いがある。

☆   ☆   ☆

私はエジプトがインドネシア型の民主化路線をたどるのか?イラン型のイスラム政権路線をたどるのか?判断する十分が知見を持ち合わせていない。これを機会に現代史を再度勉強することも面白いと考え始めている次第だ。

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1月は3年半ぶりにデフォルト・ゼロ(ムーディズ・レポートから)

2011年02月08日 | 金融

FTによると、ムーディーズは、先月(2011年1月)は同社が格付を行なっている会社のデフォルトがゼロだったと報じた。これは07年6月以来初めてのこと。因みに昨年1月のデフォルトは8社で、昨年は平均月5件のデフォルトがあった。

世界経済の回復に伴いデフォルト数は減少している。デフォルト率がピークだったのは、90年11月で13.6%だったが、12ヶ月ベースで見た直近のデフォルト率は2.8%まで低下している。ムーディーズは今年は更にデフォルト率が低下すると予想している。同社は投機的格付先の向こう1年間のデフォルト率を米国企業については1.7%、欧州企業については1.1%と予想している。これは以前のデフォルト予想(米国3%、欧州2.3%)の半分程度だ。

デフォルト率の低下により、ジャンクボンドの起債コストは半減している。また起債環境が好転したので、低格付け先もリファイナンスが容易になるという「良い循環」が起きているということだ。

なおムーディーズによると、米国で高いデフォルト率が予想されるセクターは「ホテル・ゲーム・レジャー」で、欧州では「広告・印刷・出版」ということだ。

これらのセクターが厳しいことは、人々がサイフの紐を締め続けることや、ウエッブサイトが紙を代替する傾向を考えると当然の帰結なのだろう。

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