金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

デフレ「リヤ王の悲劇」論、いくつかの補足

2011年02月16日 | 社会・経済

先日エントリーした「日本のデフレは『リヤ王の悲劇』と同根」については色々と貴重なコメントを頂きました。ありがとうございます。デフレ、老後の不安あるいはチチェスター的な生き方への共感等改めて大きなテーマだと思いました。ということで幾つか私見を追加したいと思います。

【老後の医療費問題について】

老後の医療費がどれだけかかるか不明なので勢いお金を貯めることになるという主旨のご意見がありました。

この問題について私は特別研究している訳ではありませんが、多少の自分の経験も踏まえて話をしますと通常の医療を受けるのであればそれ程医療費はいらないと思います。一般的にいうと医療費として2百万円程あればよいという意見が日経新聞に示されていたことがあります。https://app.blog.ocn.ne.jp/t/app/weblog/post?__mode=edit_entry&id=13353531&blog_id=30644

その根拠は「高額医療費制度」という国の制度で、一ヶ月約15万円を超える医療費については国が負担するからです(自己負担範囲は所得により変わります。15万円は一番所得が高い場合)。ただし健康保険外の負担は対象外です。

高齢化とともに国全体の医療費が急増していますが、これは延命治療にかかわるものがかなりの部分を占めていると言われています。延命技術としては「胃ろう」などが上げられます。

私は「ある程度の健康レベルを回復することのない単なる延命治療は自分は受けない」と思っているのですが、自分の両親(幸いまだ健在です)に同じことを求めるかどうかは分かりません。延命治療の問題は非常にtouchy(微妙、扱いにくい)問題なのですが、どこかで線を引くべき問題なのだと思います。

53歳で亡くなられた道元禅師に「病を直そうと一生懸命努力しないのは命を粗末にすることで仏法に反するが、生に執着し過ぎることも仏法に反する」という主旨の言葉があります。もし道元禅師が現在生きておられるなら、「心の健康を回復できる治療には努めるべきだが、脳死に近い状態でも遷延を望むことは仏法に反する」と言われるのではないか?と私は思いますが如何なものでしょうか?

なお「海外で臓器移植を受ける」などとなると、数千万円のお金があっても足りるかどうか分かりません。医療費の問題は結局「腹のくくり方」の問題だと私は考えています。つまり人間いずれは死ぬ。幾らお金をかけても永遠の命はない。中年を過ぎると寿命の違いは長くて20年短ければ数年です。それを長いと見るか短いと見るか?

いつ起きるか分からない寿命の問題を思い悩むより、今をいかに充実して生きるか?ということを考えた方が良いと私は考えています。また功利的な言い方をすると、今を充実して生きると体の免疫系の機能が高まり結果的には健康を維持できるということになります。

【納得する生き方をするということ】

生に執着し過ぎることなく、往生を迎えるためには「納得のいく生き方をする」必要があると私は思っています。納得は人それぞれです。欲望五段階説で有名なアメリカの心理学者マズローはpeak experience(至高体験)が自己実現の先にある人生最高の喜びだと述べています。納得の一つの頂点でしょう。なお至高体験は必ずしも「ヨットによる世界一周」とか「エベレスト登頂」といったエクストリームな経験のみ生まれるものではないと私は思います。

個人的な経験ですが、私は昨年夏松島に近い塩釜神社で一種の神霊を感じたことがありました。塩釜神社には義経に共に討ち死にした藤原忠衡(秀衡の三男)が奉納した鉄の灯篭があります。500年後にここを訪れた芭蕉は「かれ(忠衡のこと)は勇義忠孝の士なり。佳名今に至りて、したわずということなし」と深い感動を示しました。

私は奥の細道の一説を思い出しながら、忠衡奉納の灯篭を拝み、塩釜神社の長い石段を下り始めました。その時暑い午後の日差しの下激しく風が吹き、参道の旗を激しく揺さぶりました。私はこの時忠衡かあるいは塩釜神社の神様が参拝を嘉してくれたのだと感じました。これは私にとってある種の至高体験でした。

個人的な話を長々と書きましたが、この世の中には深く感動するような出来事があるものです。

次にまたこのような体験ができるかどうか分かりません。だが自然に親しんだり、清らかな生き方をした先人を慕っているとまたこのような体験ができるのではないか?と思っています。

ただしその先に道元禅師の境地が開けているという保証はありませんが。

コメント
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