胡錦濤主席の米国訪問を前に色々なメディアで中国論が紙面を賑わしている。外交専門誌Foreign PolicyにはFTの前北京支局長のRichard McGregor氏が「中国の5つの神話」という記事を書いていた。
その一番最後がThe party can't rule forever「共産党支配は永続しない」というタイトル。このテーマに対して、McGregor氏はYes it canと答える。つまり少なくとも予見可能な将来において共産党支配が続くというのが同氏の意見だ。
その理由は台湾や韓国と違って、中国の中産階級は西洋式の民主主義に対する要望を持って登場していないということだ。韓国、台湾、日本という極東の隣国は異なる時期に民主化しているが総て米国の保護と指導の下で民主化が進められたと同氏は解説する。
もっとも日本の場合、第二次大戦の前に「大正デモクラシー」という時期もあったから、McGregor氏の意見は少々大雑把かもしれないが、それは主要な論点ではないので脇に置いておこう。
同氏は中国の都市部の中間層にとって漠然とした民主主義という概念よりも、自動車、不動産という形の消費の自由の方がより魅力的である。より多くの政治的自由を求める中間層がいるかもしれないが、彼等は政治改革を求めて現在手に入れているものを失うことは望まない。
また共産党の中には幾つかの党派があり、政治的課題について議論が行なわれている。
同氏は「中国がある日民主主義になるだろうというのは、政治システムの進化に関する西洋的な概念の産物だが、今のところ総ての証拠はその説が間違っていることを示している」と結んでいる。
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中国共産党を事実上の一党独裁を続けた日本の自民党との対比で考えるのは、政治学のプロから見ると笑われるかもしれない。だが幾つかの共通点はある。つまり国が高度成長時期にある時、出現した中間層は政治よりも豊かな消費生活を求めた。経済成長は様々な矛盾が政治的イシューになることを防いだ。
もっとも国や企業の幹部の人事権を握る中国共産党の支配力は自民党のそれよりはるかに強大である。
以上のように考えると、中国の経済成長が続く限り共産党支配が持続する可能性は高いと判断するべきだろう。逆に共産党支配が終わる時があれば、それは民主主義へのトランジションではなく、カオスへの転落ではないか?と私は想像するがそれは直感の域を出るものではない。