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エコノミスト誌、ギリシア債務の早期リストラを主張

2011年01月14日 | 社会・経済

エコノミスト誌はBite the bullet(直訳は「弾を噛め」だが、歯を食いしばって耐えろ、という意味)というタイトルの記事で、ギリシアの債務の早期リストラを求めている。

エコノミスト誌は単純化した想定のもとで、債務危機が懸念されているギリシア、アイルランド、ポルトガル、スペインの債務が今後どのように拡大するか?予想を行なっている。

ギリシアの場合、現在の国債残高のGDPに対する比率は140.2%で、新規債務の金利を5.25%と仮定しても(現在の同国10年債の利回りは11%)、2015年には165%に拡大する。同様にアイルランドの債務比率は、97.4%から125%に悪化、ポルトガルは82.8%から100%に悪化、スペインは64.6%が85%に悪化する。

ギリシアにとってGDPの8-9%に相当する金利を外国人投資家に払い続けることは耐えられないとエコノミスト誌は述べる。つまりギリシアは早晩破綻するという判断だ。そして破綻が不可避であるならば、元本が膨らむ前に債務リストラをするべきだというのが同誌の主張である。

ソブリン債務がリストラされる場合、投資家は額面の3分の1から2分の1の損失を蒙るというのが典型だ。仮のギリシア国債の投資家が債権を半分放棄すると、ギリシアの債務比率(GDPに対する)は80%水準に低下して利払いが可能になるだろうというのがエコノミスト誌の見立てである。同誌はリストラが2013年の終わりまで延期されると、債権放棄額は1,850億ユーロになると推計する。

同誌によると債務リストラの課題は二つある。一つはユーロ周辺国の国債は「国内法」で発行されているので、リストラ時には総ての債務者が多数決に従うという条項を加える必要があると法律家が指摘している点だ。

もう一つは欧州中央銀行が商業銀行を巻き込んで、「古い債券」を担保として受け取ることを拒絶することだ。

アイルランドとポルトガルについてエコノミスト誌は見通しは不透明。つまり4%程度の金利負担なら耐えうるが、現在の利回り(アイルランド8.3%、ポルトガル6.8%)を負担するのは重過ぎるという見立てだ。そしてスペインは恐らく債務不履行にならないという。

ところでギリシアをはるかに上回る対GDP債務を抱える日本だが今のところは国債はほとんど国内で消化されているので問題は顕在化していない。

荒い数字で言うと国の債務908兆円は、国民一人当たりにすると715万円だ。だが将来高齢化で国民の貯蓄が減少したり、海外への資金流出が拡大すると、国内で国債をさばけなくなる可能性がある。少なくともも利回りを上げないとならない状況は確実に起こりそうだ。

コメント (1)
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