金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

鎌倉大仏しか記事にならない横浜APEC、これで良いのか?

2010年11月15日 | 国際・政治

ニューヨーク・タイムズにAPEC関連の短い記事が出ていた。Obama and Asia-Pacific Leaders vow to work toward free trade「オバマ大統領とアジア・太平諸国首脳は自由貿易に向けて努力することを誓う」という題だ。もし普通の日本人がこの記事を読んだらかなり愕然とするだろう。何故か?この記事は何か特別日本に不利な情報でも伝えているのか?

いやそうでなない。何故愕然とするかというと、オバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領の会談については報じられているけれど、オバマ大統領と菅総理の会談には一言も触れられていないのである。それどころかAPECでホストを務めたはずの菅総理には一言の言及もない。

記事は「横浜を発ったオバマ大統領はヘリコプターで鎌倉に行き鎌倉大仏を見た。オバマ大統領は『この偉大な日本文化の宝のもとに戻ってきたことは素晴らしい。長い間その美は私の中に留まっていた』とゲストブックに書いた」と結んでいる。

ニューヨーク・タイムズが意識するのは当然のことながら、ニューヨーカーを中心とするアメリカ人。記者が読者の関心を引く記事を書くのは当然のことだ。その観点でものを考えると、オバマ大統領と菅総理の会談についてニューヨーカーは鎌倉大仏以下の興味しか持っていなかったということになる。

一方日曜日のオバマ・メドベージェフ会談でオバマ大統領は4月調印した新戦略核兵器削減条約(新START)の批准を外交のトップ・プライオリティと述べた。同条約の批准については上院で3分の2の賛成を得る必要があるからオバマ外交の正念場である。

またオバマ大統領はメドベージェフ大統領に冷戦時代の貿易制限を廃止しロシアがWTOに参加する動きを容認するだろうとも述べた。またその後のプライベート・ミーティングではアフガニスタン問題から人権問題まで広範な問題が論じられたということだ。

また記事はTPPについては、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポールで締結された自由貿易協定に米国を含む5カ国が参加を表明したと述べているが、ここでも日本の名前は出てこない。参加を表明していないのだからでなくて当然だが。

これでは日本はまったく蚊帳の外である。蚊帳の外でも国益が守られるならそれでも良いが、そうは行かない。ロシアとの親密化を図るアメリカが、北方領土問題で真剣に日本を擁護するとは考え難い。TPP参加問題にしても早々に態度を表明しないと参加希望各国から「あんたのためで遅れるのはごめんだ」というブーイングがでるだろう。

☆  ☆  ☆

では一体何故こんな状態になってしまったのか?

色々な原因があるが、政治家のレベルでいうと「市民運動家」や「弁護士」はいるが本当の政治家がいないということが大きな原因だろう。オバマだって弁護士あがりだという反論が聞こえそうだが、そこにはコモンローの社会と成文法の社会の違いがある。コモンローつまり判例法の社会では、法よりもその背後にある実態社会や精神が重視される。だから変化に対して柔軟なのだ。ところが日本では文字となった法が一人歩きして不必要に絶対視され時として実社会の変化への対応がおざなりとなる。

日本の政権の実現力の欠如を考えるとオバマ・菅会談などニュースバリューがないということだろう。

まあ、そんなこんなで鎌倉大仏しかニュースにならなかった。テレビでは抹茶アイスを舐めているオバマ大統領が大写しになっていた。平和といえば平和だが、オバマが舐めてるのは抹茶アイスだけではなく、菅政権であることを悔しいと思うのは私だけだろうか?

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中国は世界を買う。だが過剰反応は不要(E誌より)

2010年11月15日 | 男の料理

先週のエコノミスト誌のトップ記事はChina buys up the world and the world should stay open for businessだった。主旨を一言でいうとエントリーのタイトルとなる。

記事によると、今中国企業は国際的なビジネスにおいて6%の資本を保有している。歴史的に見るとこの割合は低い。英国と米国はピーク時にそれぞれ約5割の資本を保有していた(英国は1914年、米国は1976年)。中国は今のところ蓄積された巨大な資本の大部分を先進国の国債に投資しているが、将来はその資本を企業の買収に使い、先進国の貨幣価値の下落と起こり得るデフォルトに備えることはあり得るだろう。

中国資本による企業買収に対する懸念は、中国企業が外国企業を買収することで、資源をマーケットではなく、政府の政策的判断で配分するのではないかというものが主なものだ。オーストラリアとカナダは、かっては企業買収に開放的だったが、今は中国国家が支援する企業による買収のハードルを高めつつある。

だがエコノミスト誌はそのような考え方は間違っているだろうと述べる。その根拠は大部分の中国の企業は、単に外国に足ががりを見つけようとしているだけであり、一番活発に買収を行っている天然資源分野でも、市場をコントロールする供給量の確保からはほど遠いと同誌は述べる。

また中国のシステムがしばしば外国人が考えるほど一枚岩ではなく、国営企業は自国内で競争があり、意思決定は独裁的というよりは合意形成型だとエコノミスト誌は述べる。

中国企業は世界の勢いを失った会社に新しいエネルギーと資本をもたらす可能性がある。また中国企業が外国で成功するためには、現地の管理職を採用するなどの現地化が必要だ。そして中国企業の国際投資が増えるに従って、その利益は世界の利益と調和していくだろうとエコノミスト誌は締めくくっている。

☆   ☆   ☆

記事が指摘するように中国は確かに一般に思われるほど一枚岩の国ではない。例えば反日感情が高まる中だが、上海市のトップは「日本館は建設中、ホコリや乱雑さがなく、最も優れていた」と高い評価を下していた。

柔らかな目で中国問題を見ていきたいと思った次第である。

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