ある人から「野村証券会社がインターネットで提供している証券用語辞典で企業価値の定義をみると
企業価値=ネット有利子負債+株式時価総額
という定義が出ていたけれどこれはどういう意味?」と質問を受けたので簡単に回答しよう。
1.まずこの定義は上場会社にしか適用できない。何故なら株式時価総額は上場上場会社でないと計算できないからである。
2.そこでまず非上場会社を含めたより一般的な企業価値の計算方法との対比で考えてみよう。企業価値の計算には将来のフリーキャッシュフローを現在価値に割り引くDCF法Discount Cash Flowが一般的である。
つまり
① 財務予測をもとにして将来のフリーキャッシュフローを予測し
② それを資本コストで現在価値に割引計算して
③ 遊休資産の処分価値を見積もって加算し
④ 有利子負債を控除する というものである。
ところで理論的に「株価とは何か?」というと企業が将来稼ぐ一株当り利益の現在価値というのがファイナンスの教科書が教えるところである。もっともこれは市場=投資家が正しい判断を行なっているということが大前提だが。
つまり全発行済株式に対応する時価総額とは株主に帰属する企業価値を市場が算定したものであるといえる。
ここである上場会社を買収しようとする者は、その会社の株主から総ての株式を買収するとともに、その会社の債権者(例えば銀行)に債務を弁済しなければ完全にその会社を支配下に置くことはできない。ということはある会社の価値とは株式時価総額と債務の額ということになる。
なおDCF法①-③で企業価値を算定する場合は、株式+債務に係る企業価値を算定しているので、そこから有利子負債を控除したものが企業価値となる訳である。