金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

エコノミスト誌、安倍政権を指南

2006年09月29日 | 政治

安倍政権が発足してから日本の株価は上昇している。もっともこれは米国の株式相場が原油価格下落等を好感して、史上最高値を更新する勢いで上昇しているお陰である。とはいえ幸運も政治家の重要な条件であろう。

さてエコノミスト誌は28日付で安倍政権に対する指南を行なっている。外国の雑誌が指南を行なうという言い方も変だか、予想とか注文というよりは指南という方がふさわしい内容だ。ところで安倍さんが直接この記事を読むことはまずないだろう。一つは首相は忙しい。次に仮に時間があったとしても、彼の英語力では短時間で理解することはできないだろう。

首相の英語力ということでは、昔アメリカにいた時宮沢元首相と親しかったという米人弁護士と食事をする機会があった。「宮沢さん程英語が達者ならもっと早く首相になってもよかったろうにね?」と私が切り出すと彼は「いや、宮沢さんが英語を話すことができなければ彼はもっと早く首相になることができた」と答えた。安倍さんが若くして首相になったことは彼がそれ程外国語通でないことの証左でもあろう。

因みにアンブローズ・ビアスの「悪魔の辞典」の「外国語通」の説明をみると「自国語以外の諸外国語には造詣が深いものの、自国語にはあまり通じていない奴」とあった。因みにその前の「外交」の説明をみると「祖国のために偽りを言う愛国的な技術」とあった。

さてその「外交」に関するエコノミスト誌の安倍政権に関する指南である。エコノミスト誌は安倍政権が来年夏の参院選に向けて、国民の眼を国内問題からそらすため、中国・韓国不必要に挑発的を行なう可能性があるかもしれないと指摘しながらも、メインシナリオは中韓との外交関係が好転する可能性が高いとする。そしてそのためにも靖国神社に参拝するなと注文をつけるのである。

経済問題についてエコノミスト誌が述べるところは次の点だ。

  • 過去4年間経済成長が続いてきたが、幸運が永遠に続くと言うことは不可能だ。日本は成長のために一層強い基盤が必要である。大きな経済構造の変革があったが、製造業の一部やより多くはサービス業で再構築されていないセクターがある。
  • 外国の資本が反映と雇用の創出のため必要だろう。そのために安倍首相は外国勢の日本企業買収のための投資をより容易にすることを含めて、投資風土を改善する必要がある。
  • 成長と長年続いたデフレーションの決定的な終結が国庫に新たな財源をもたらすだろう。しかし少子高齢化の進展のためこれだけでは財政赤字を削減し、国の債務を減少させるに不十分だろう。従って増税は不可避である。安倍首相は消費税引き上げの議論を熱心に押さえ込んできた。しかし来年参院選挙があるとはいえ、安倍首相はこの問題について話を始めなければならない。
  • 総ての中で一番困難なのは健康保険と社会保障のコストに取り組まねばならないことである。これは強力な医療・製薬業界に挑戦することと、支払能力のある受益者により多く負担させることを意味する。その報償は陽気で回復力に富む経済を作り出せることである。

さてエコノミスト誌の指南のとおりしようと思うと、安倍政権は増税や社会保険料の負担増を掲げながら、その不満を外交問題にそらすことなく中韓に歩み寄らなければならないことになる。問題はそれで選挙が勝てるかということだ。

小泉前首相は絶えず敵を作り出すことで、自陣営を引き締めてきた。安倍首相は誰を敵とすることで、人気を持続させるつもりだろうか?そこまではエコノミスト誌も指南していないが、恐らく構造改革に抵抗する官僚等が仮想敵国になるのだろうが、これまた手強い相手である。政権維持とは総て楽なものではないだろうが、安倍政権も誕生より持続が難しいのかもしれない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする