追憶の彼方。

思いつくまま、思い出すままに、日々是好日。

西暦か和暦か…(4)

2017年08月24日 | 文化・文明
元号を使うのはそれほど不便なのか、、折角慣れ親しんだ元号、貴重な文化財という側面もあり、これをばっさり切捨てるのは聊か惜しいと言う意見があった。


物事をクリアーにする為に元号だけを使用する事によるデメリットはどんな点があるのか整理すると下記のようになる。
(1) 先ず歴史認識に大きな難点がある。
例えば明治37年日露戦争勃発と言われても今から何年前の事かすぐには判然としない。1904年の事と明記され、記憶して居れば113年前と簡単に計算ができる。又戦国時代の初頭鎌倉大地震が発生したと言うより1495年と表記・記憶して居れば、その頃コロンブスが新大陸を発見し大航海時代が幕を開けた、世界はグローバル社会に踏み出したなどと日本と外国の時代の比較も容易となり歴史が俄然面白くなる。
(2)元号は改元の度にリセットし、一からスタートする為、暦の連続性がなくなり歴史、統計、年齢等の処理に余分な手数を要し、それが錯誤の原因になる。元号を使った資料は西暦に直さなければ対外比較の対象になりえない。しかも改元が短期に行われるとフォローが煩雑でほぼ不可能になる。欠陥商品の最たるものでは無かろうか。
更に元号は社会に混乱を生じさせている。
例えば企業は役所や証券取引所に提出する書類は元号表示、一般向けの書類西暦表示が普通である。このためアナリスト向け決算説明会等での配布資料は証券取引所に提出した(決算短信)は元号表示、その他の作成資料は西暦表示となっている。忙しい総会時期に経理担当者の苦労は計り知れない。しかもこの苦労は少しは付加価値を生むとか、生産性をを高めるといった類いのものでは無い。それを利用する側にも混乱を生じさせ正確な理解を妨げる要因となっている。
更に混乱を引き起こすものに予算や計画を表示する際に(15年度)という事が良くある。これは「平成15年度」なのか「2015年度」なのか咄嗟に判断できないことがある。
IT化のコストアップも膨大で対外的コスト競争力低下の大きな要因にもなる。
情報はた易く理解され、利用されてこそ価値を生む。役所は資料を作成する際、利用者の利便性を考えると言う発想が全く欠落している。
何処かの役所の経済見通しに平成58年度というのがあったが平成は間もなく終了するのではないだろうか。
平成が終わり元号が変わると平成を新しい元号に置き換える仕事が発生する。コンピューターへの再インプット、手書き資料の書き換え、その間にミスも発生する、全く不必要・無駄な作業だが数え上げたらきりがない。役人は酷税から高い報酬をとっているのだが何も考えず、仕事ではなく作業をこなしているに過ぎないという事が垣間見える。税金の無駄遣い真に甚だしいと言わざるを得ない。
ネットで調べてみると意外な事に弁護士さんが元号維持派が多いことが分かった。
その意見の中に「西暦はキリスト教の暦なので政教分離の原則に照らし公用文の使用は控えるべき」というのがあった。西暦を使うときにキリストを思い浮かべる人など皆無だろう、何とも硬直的、頓珍漢な意見で開いた口が塞がらない。「日本の歴史・文化に根差しており元号は変更すべきではない」という意見が多く弁護士17人中西暦表示賛成ー4人、和暦ー7人、どちらでもないー6人であった。
元号は元号法によってその存在が定義されており法的根拠があるが、その使用に関しては基本的に各々の自由で、私文書などで使用しなくても罰則などはない。一方で、西暦には元号法のような法律による何かしらの規定は存在しない。なお、元号法制定にかかる国会審議で「元号法は、その使用を国民に義務付けるものではない。」との政府答弁があり、法制定後、多くの役所で国民に元号の使用を強制しないよう注意を喚起する通達が出されている。
しかし1979年の元号法案審議で内閣法制局の真田秀夫長官が「上司が元号で公文書を作れと職務上の命令を出せば、それに従わなければならない。従わなければ懲戒という事も理論上ありうる」と答弁していたが、後に現実となった。1987年1月、広島県教育委員会が県立学校について、卒業証書を含めた公文書の年表表示を元号にするよう学則の施行細則などを改正、各校に実施を指示したが、同年3月の卒業式では54校が西暦で書いた卒業証書を出したため、各校の校長が文書訓告処分を受けたのである。本件は訴訟となったが校長側が敗訴した。
「国旗・国歌法」に関して、不起立を職務命令違反として処分する事が合憲と見なされているのと同様の事態がすでに生じていたのである。
愚かな安倍政権が目指す憲法改正には公文書の元号表記を義務付ける条文が付け加えられる恐れが多分にある。そうなれば国家総動員の無駄遣いの始まりである。




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