追憶の彼方。

思いつくまま、思い出すままに、日々是好日。

英国のEU離脱問題…その2

2016年07月31日 | 政治・経済

英国のEU離脱による世界の金融界に与えた激震ははひとまず沈静化したように見える。

離脱派の急先鋒英外相(前ロンドン市長)が仏を皮切りに欧州各国外相との会談に乗り出したが、テロや気候変動、格差拡大、経済の低成長、租税回避対策等々、国際協調により地球規模で解決しなければならない問題が山積するさ中で、EUから見れば降って 涌いた様な英国の我儘のようにしか見えない離脱問題、永くて厳しい交渉が始まる。

EUの主張は「人・物・金・サービス」の4つの自由は切り離せない、良いとこどりは許せないというもの。

これに対して英国は移民を制限した上で,EU単一市場へは従来通り参加したい、EUから見れば当に良いとこ取りである。

そもそもEU(欧州連合)の母体となったEC(欧州共同体)は一つには第二次世界大戦の苦い経験から2度と欧州で戦争を起こさない、もう一つは経済力を高めてきたアメリカや日本に対抗する、この二つの為に設立されたものである。

その後EUに発展したがその基本にあるのは戦勝国・敗戦国の和解と欧州の復興、不戦、更にはベルリンの壁崩壊等冷戦終了後に加わった東欧諸国にとってはファッシズムや共産主義の独裁からの解放と民主主義を勝ち取ることが大きな目的だった。

だが英国のような実利追求型の国にとってはEUは単なる魅力ある巨大市場でしかない。

賃金の低下や失業率の上昇等グローバリゼーションの過程で短期・不可避的に発生する経済摩擦の痛みを全て移民問題に押し付けた結果が国民投票による離脱派の勝利に繋がった。 

今後EUとの厳しい離脱交渉が始まる。

欧州への輸出基地と位置づけていた日本を含む外国企業の英国への新規進出の見送り、更には拠点を欧州に移す検討を始めている企業もあり、不動産価格の低下を見越した不動産ファンドの解約の動きを助長している。

銀行融資も不動産担保が多く不動産の価格下落は銀行経営に与える影響も大きくミニ・リーマンショックさえ懸念されだしている。

移民は米国の例に見るまでもなく経済成長を後押しするもので、移民拒否は成長の阻害要因になるだけでなく英国人が嫌がる介護・看護・清掃といったサービス業の労働力不足をどう補うのか、新たな問題も浮上してくる。

いずれにせよポンド安による物価上昇、海外からの投資減、設備投資手控え、国内消費の落ち込み等景気後退は避けられない。

景気後退による労働需給の悪化で一番影響を受けるのは高度なスキルを持たない低所得者層、EU離脱に賛成票を投じた人々である。

離脱交渉が長引けばその痛みがさらに拡大する恐れがあり、新政府の難しい舵取りが求められることになる。

 

RE;EU誕生後の大きな施策

① 貨幣がEU圏共通のユーロに統一 (英・スエーデンは採用していない)

② 加盟国間の関税撤廃  

③ 加盟国間の往来にパスポート不要   

 

 

 

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イギリスのEU離脱と日本の参議院選での改憲勢力の勝利

2016年07月26日 | 政治・経済
 

イギリスのEU離脱と日本の参議院選での改憲勢力の勝利

イギリス、日本双方で国の将来を決しかねない極めて重要な選択だったにも拘らず  拍子抜けする程あっさりと結論が出た。

 両国の国民が何故そのような選択をしたのか、イギリス・日本はもとより米欧多数の専門 家による分析が為されているが、その中には話を極めて単純化し、イギリス国民は金(経済)よりも主権(EUによる国家主権への侵害排除)を選び、日本国民は主権(国民主権―憲法)より金(経済―アベノミクス)を選んだと言うことで、そこには何となく国民性の違いも垣間見えると言う主張である。

 しかし事はそれほど単純ではなさそうだ。  恐ろしい事に、イギリスではEUの何たるかも充分理解せずEU離脱に票を投じた人が多くいたと伝わってきているし、日本でも自民・公明の改憲政党に投票した人の大多数が改憲議席3分2の意味を理解していなかったと報じられていることである。

 イギリスでは残留派のキャメロン首相は残留派の勝利を過信した為、充分な啓蒙活動を怠り、EU離脱というような複雑で国家の将来を左右するような重要な問題を、残留か離脱かというような単純な二元論にすり替え国民投票にかけてしまった。  短絡且つ浅慮の誹りは免れず退任は当然だろう。

一方日本の参議院選挙では安倍政権が選挙テーマは経済問題、アベノミクスの深化だと  主張し、党首討論を拒否する等憲法問題から逃げまくった。

この自公政権の選挙戦略に追い 風となったのは、降って涌いた様な三つの大事件である。  舛添都知事の公私混同スキャンダルによる辞任騒動、五月末から6月18日辞任決定に至る間,メデイアの報道はこれ一色に塗りつぶされ、参議院報道は片隅に追いやられた。

 6月24日からはイギリスのEU離脱と金融界の狼狽による世界的な株価下落と100円  割れも現出した円高、7月2日にはバングラデッシュ・ダッカでの日本人が巻き込まれた  過激派によるテロ事件、立て続けに起こったこれらの事件報道により改憲論議は完全にメデ  イアから消えてしまった。

 国民がこのような国家の行く末を左右するような重要な問題の選択をする時には、政府は政争とは切り離し、メデイアと共に懇切丁寧な説明と情報を提供し、判断に必要な充分な  時間を国民に与えることこそが、民主政治最大の弱点である衆愚政治に陥るのを回避する 極めて重要な方策である事をあらためて痛感させられた政治問題であった。

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