追憶の彼方。

思いつくまま、思い出すままに、日々是好日。

仏マクロン政党の圧勝と米英大国の衰退…Ⅳ

2017年06月26日 | 国際政治
トランプはアメリカ・ファーストを実現する為の一環として、地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」からの離脱を表明した。オバマ前大統領が進めた石炭・石油等化石燃料への規制を緩和しこれら産業の復活によって雇用の拡大を図るというものである。
自動車産業は厳しい環境基準や安全基準を克服する事を企業戦略の最優先課題として各社競って技術開発を進めた結果、周辺産業も含めて膨大な技術革新を生み、自動車産業はもとより社会、経済の発展に大きく寄与しているという事実に気付くべきである。

化石燃料への回帰により期待される雇用の増大など微々たるものである。一時の人気取りで代替エネルギー開発の技術の遅れ、それにより長期的にみてアメリカ経済の生産性・経済成長へのマイナス効果に加え環境破壊やその対策に要する費用・労力等考えれば国家・社会が被る損失の大きさは計り知れないだろう。

「Make America Great Again」
トランプのこの叫びに酔いしれたプワー・ホワイト達は下記の様なトランプの経済政策を知って何と感じたのだろうか。
① 巨額の財政出動による公共投資
② 富裕層や企業に対する大規模減税
③ 金融規制の緩和・撤廃
④ 保護主義的通商政策
確かに10年間一兆ドルに昇るインフラ整備等への公共投資はオールドエコノミーの復活で短期的に経済成長率を引き上げ雇用創出に繋がるが、これが中長期的な潜在成長率を引き上げることを期待するのが難しく、巨額の公的債務だけが膨らんで後世に付けを残す,日本の例でも明らかである。
 
最近米議会に提出された税制改革案の中心は
①法人税率を35%から15%に引き下げるが、トランプの様な個人事業者の所得にもこれが適用されるとしている点に注目する必要がある。又富裕層に対する最高税率を39.6%から33%への引き下げも含まれる。
②相続税の廃止。
が中心である。
オバマケア廃止・代替案や金融規制の緩和等も併せ考えると明らかに富裕層優遇、低所得者いじめとしか見えない。
富裕層が豊かになればトリクルダウン現象の効果て低所得者層にもその恩恵が及ぶと言うレーガノミックスの幻想を信じているとすればトランプを熱烈支持をしたプアーホワイトにとって哀れな結果しか招かないだろう。アメリカ・ファーストは格差拡大、トランプ・ファーストであることが明白となった。
欧州貴族達の不平等な社会は民主主義に反するとして高い所得税(一時は最高82%)と相続税(一時最高70%)が導入され、レーガンでさえ出来なかった相続税の廃止に踏み切ったのである。
アメリカ社会は何処へ行くのだろうか。

トランプ氏が行わんとする巨額の公共投資や減税、保護貿易政策は一部の労働者に短期的な所得増をもたらし得るが、それらは痛みを一時的に和らげる麻薬に過ぎない。麻薬は格差是正やその長期的な是正に必要な経済成長を阻害しアメリカの体力を奪う事になるだろう。


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仏マクロン政党の圧勝と米英大国の衰退…Ⅲ

2017年06月24日 | 国際政治

根拠のない情報…”デマ”を意図的に流し人々を扇動して相手に不利な状況をつくる…所謂デマゴーグ。
従来、デマゴーグを代表する者としてヒトラーの名前がよく挙げられていたが今後はトランプの名がこれに付け加えられることになるだろう。
塩野七生氏がイタリアの辞書から、「実現不可能な政策でも、一切気にせず強い口調で繰り返し主張し続ければ強いリーダーという印象を与えるのに成功し、民衆の怒りと不安を煽った挙句一大政治勢力の獲得に至った人」というデマゴーグの定義を紹介し、その代表例としてトランプの名前を挙げている。
111)教養・品格に欠けるが不思議な事にデマゴーグにとってはこれらは弱みにならず強みになってしまう不思議。
222) 自分達だけが大切で他の国は関係がないと考える。
古代ギリシャが衆愚政治の混迷の後に新しい国際秩序の再建に成功したが、このままトランプの政治が進めばアメリカの終わりの始まりではないかと問いかけている。

古代ギリシャ・ローマ時代、ヒトラーの時代とは異なり情報が溢れる現代社会においてこのようなデマゴーグが大国のトップに選ばれれてしまう事こそ民主主義最大の欠点である。
イリノイ、インディアナ、ミシガン、オハイオ、ペンシルべニアなど米国北部五大湖周辺の各州にまたがる「錆びついた工業地帯」の炭坑や鉄工所、自動車工場で働いていた白人ブルーカラー達は民主党・共和党の推す歴代大統領の無策に絶望していたさなかに忽然と現れたデマゴーグに救世主の姿をだぶらせて飛びついた。
彼等の情報源はFoxの様なトランプに理解を示すメデイアやトランプ自身のツイート及びそのフォロワーだけで、トランプに不利な情報は例え証拠が揃っていてもトランプがするのと同様にフェイク・ニュース(虚偽報道)として受け付けない。
「大統領選選挙でクリントン候補の獲得数が多かったのは数百万に上る不法移民が彼女に投じたからだ」とか、「地球温暖化はアメリカ製造業を弱体化させる為に中国がでっち上げた考え」等々、妄想の様な発言をも唯々として受け入れてしまう様な、客観的な視点を放棄するプアーホワイト達がトランプを後押しし続けアメリカを奈落の底へ引きずり込んでいく恐ろしい構図が見えて来る。

トランプ政権誕生後初めての国際経済会議G20の共同声明では従来の「あらゆる形態の保護主義に対抗する」と言う一文が米国の強硬な要求で削除された。
これだけグローバル化が進んだ世界経済の中で保護主義を進めても目指す「自国の貿易赤字の削減と国内雇用の確保」に繋がるかは極めて疑わしい。効果があっても極めて一時的な現象に止まるし物価や世界経済に与えるマイナス効果を考えると副作用の大きさは計り知れない。その犠牲者こそプアーホワイトである。
更に孤立主義は国家の国際的な存在感を小さくする。これこそ大国衰退の兆候の一つである事は歴史が証明している。

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仏マクロン政党の圧勝と米英大国の衰退…Ⅱ

2017年06月19日 | 国際政治
金融機関等企業の英国からEUへの移転の動きは徐々に進むと予想されるが、何よりも欧州へ進出しようとする企業が本拠を英国に置くような愚挙はしなくなるだろう。
メイ首相の政権基盤も弱体化しEUとの離脱交渉は一段と困難さを増すだろうし、堅調を続けてきた経済も中長期的には暗いと言わざるを得ない。
最近英国内で相次ぐテロや事故は大国衰退を暗示していると言うのは言い過ぎだろうか。
中東・インド・中国・アジア・南米・オセアニア、英帝国主義が世界中にばらまいたトラブルの種は未だに尾を引いており、世界はその後遺症に今も悩まされて続けている。
英国が衰退の道をを辿っても冷ややかに黙視されるに違いない。

アメリカの問題は更に深刻だ。
トランプが大統領の座に4年間居続け、今迄のように口にするのも恥ずかしい様な主張を声高に言い立てれば
アメリカは確実に国力を失って行くに違いない。
自己抑制が効かず、礼儀を弁えず、非論理的、幼児性丸出しで、品性・品格の欠如、外交・経済の知識さえ覚束ない人物を国のトップに選んでしまったのが、アメリカの不幸の始まりである。
今や米国を尊敬の眼差しで見つめる人は居なくなってしまった。トランプがアメリカの真の姿を白日の下に晒していまったのである。
トランプがアメリカ・ファーストを叫んで顰蹙を買っているが元々アメリカは何時の時代もそうだった。
歴代大統領と異なりトランプが選挙戦術で言ってはいけないアメリカの本音を大声で叫んでしまったに過ぎない。
世界の警察官を名乗って戦争を仕掛け、紛争に介入してきたのは、自国にメリットがあるからであって日米安保条約も含め、外国のためにボランティアをしていたわけではない。自国ファースト、自国ベストの選択がそうだった、というだけに過ぎない。ファーストのテーマが貿易であったり、雇用であったり、石油・農産物・金融等テーマが時と場所で変わるだけでアメリカ・ファースト」と言う基本政策はは何ら変わらないのである。
TPPからの離脱にして元々TPPはアメリカ・ファーストの政策で日本に押し付けようとしたが、それでは手ぬるい、二国間の方がごり押し出来ると言うだけに過ぎないのである。

イギリスを中心にヨーロッパからの白人移住民はキリスト教布教と表面的な民主主義の美名の下に人権を無視し先住民から土地奪い殺戮を繰返して出来上がった建国時の独善的体質は脈々と受け継がれて今に至っている。国益追及の思想的支柱はアメリカ白人の選民思想に由来するのである。



仏マクロン政党の圧勝と米英大国の衰退…Ⅲに続く


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仏マクロン政党の圧勝と米英大国の衰退

2017年06月13日 | 国際政治
「自国第一主義」・移民規制を主張する極右ルペンを、「親EU」を掲げて大差で下し、ナポレオン3世より1歳若く39歳という仏史上最年少で大統領に選ばれたマクロン氏の新政党が既存政党を寄せ付けず、圧勝と報じられている。

フランス人民が自らの血で勝ち取った民主主義と「自由・平等・博愛」という共和国精神に対する誇りが「国を更に開き、多様な社会を築いて繁栄を目指す」と言い切ったマクロン氏の主張に共鳴した結果と考えられる。
自国優先やポピュリズム(大衆迎合)を選んだ米英に比べフランスの民度の高さに大きな差があることが歴然とした。 長期的に見てこの差が国力の差となって表れてくるような気がする。

英国のEU離脱を見越して英国への新規投資をためらう動きが出始めており、更に多くの英国の企業がEUへの移転を検討していると報じられている。  
とりわけロンドン・シテイ―を中心とする金融サービス業界は英GDPの10%を占める基幹産業であり(不動産業に次ぎ4番目)、世界の約250銀行が拠点を置き2007年に米国を抜き世界最大の金融センターとなったが、メガバンクの多くが主要業務を欧州へ移転する検討を始めて居る。
EUでは加盟国のどこかで免許を取れば、EU域内ならどこでも営業できる「EUシングルパスポート制度」がある為、外国の金融機関の多くはロンドンを欧州事業の中心拠点にしていたがEU離脱で適用されなくなる為EU移転を余儀なくされる。
その移管先としては、EU加盟国でユーロを導入している国の金融都市、特にフランクフルト(ドイツ)、パリ(フランス)、アムステルダム(オランダ)、ダブリン(アイルランド)が挙がっているが、とりわけ仏はマクロン大統領が金融のエキスパートでもあり、金融機関誘致に最も強い意欲を示している。
パリにはEUの証券市場監督庁(ESMA)が存在しているが現在ロンドンに置かれているEUの金融機関を監督する欧州銀行監督機構(EBA)の誘致にも積極的と言われている。
更には金融機関、金融ビジネスを呼び込む為に、金融機関の幹部の所得が高いことをにらみ、国外からの移住者に対し、国外に持つ資産の課税除外期間を5年から8年に延長するほか、所得税の最高税率(75%)を引き下げる方針まで示し前向きである。

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