追憶の彼方。

思いつくまま、思い出すままに、日々是好日。

マイナカード自主返納の愚…3  マイナ保険証反対理由の不可解

2023年08月27日 | 社会問題
マイナカード自主返納の愚…3  マイナ保険証反対理由の不可解

二か月毎に、持病の薬の処方箋を貰う為、町医者に出向くが、診療は看護婦が血圧を測るのに2分程度、医師の顔を見ることも無く、処方箋の作成と医療費の支払いの為、待たされるのが1.5~2時間、狭い待合室は待ちくたびれた人で座る場所も儘ならない状態。時々腹に据えかねた男性が文句を言う事もあるが、一向に改善される様子も無い。処方箋の内容が間違っていたり、保険の負担割合が間違っていたりと、事務処理にも問題が多い。兎に角よく観察していると、受付業務(診察券、保険証)に始まり、天井から壁一面に並んだ棚の中の膨大な量のカルテの中から本人の物を探しだす、処方箋の作成、カルテへの書き込み、保険証との突合せ、医療費の計算、支払い業務、これら全てを目視、手作業で行っているのだから、時間が掛かり、間違いが発生するのも頷ける。
長い付き合いで親密だった掛かり付けの医者はデジタル化を進めたので、事務員の数が少ないにも拘わらず、処理も迅速で待たされることも無かった。残念な事にこの医者が急逝し廃業となった為、やむを得ず別の医院に替わったのだが、流石に余りの酷さに大規模な医院を探して転院した。転院に当たっては紹介状を書く、書かないで一悶着有ったが、新しい医院は患者数が多いにも拘らず流れがスムーズなのはデジタル化が進んで居り、処方箋発行には必ず医師の問診、触診が行われ、電子カルテに症状等が書き込まれ、紙の登場は殆どない。患者は同じ費用でこれ程大きな差が出るのは、デジタル化による余裕の差である事が歴然としている。デジタル化を進め患者の負担軽減を図ろうと言う意欲が感じられない様な医者は、医療技術の進歩にも無頓着、診察にも信頼が置けないのではないかと思えてしまう。同じ額の医療費支払いで、これだけのサービスに差が出るのは全く納得が行かない。

マイナ保険証への移行よるメリット、思いつくままに列挙すると下記の通り非常に大きい。
(1)医療機関の受付が自動化され、不必要な会話も無くスピードアップが可能となる。
(2)就職や転職、引っ越し時に必要であった手続きが不要となる。国民健康保険や後期高齢者医療制度で必要だった定期的な更新、高齢受給者証の持参も不要となる。
(3)マイナポータルで特定健診情報、薬剤の処方、医療費の閲覧が可能になる。また、医療機関・薬局では、患者の同意を得て、薬剤情報・特定健診等情報に加えて、受診歴や手術情報も含む診療実績などの「診療情報」が閲覧可能になる為、医療データを医師や薬剤師と共有できるようになり、はじめて受診する医療機関や薬局でも正確な情報を伝えることが出来る。これにより紹介状が無くても、転院が可能となり医院の自然淘汰に繋がる。勿論マイナポータルを利用して患者本人も診療情報を見ることが出来る。又マイナポータルの薬剤情報を(電子版お薬手帳)(註)と連携すると、いつでも情報が確認できて医療や健康への意識も高まる。 (註;スマホに落とし込んだアプリを利用する(お薬手帳)。)
(4)医療の実態が明瞭になり、過剰診断、過剰診療・治療、薬剤過剰処方等の防止に繋がる。
(5)1ヶ月間に同じ医療機関でかかった医療費のうち、一定の限度額以上は高額療養費制度が利用できるが、従来申請が間に合わないと一旦自己負担での支払いが必要であったが、手続きが不要になり一時的な出費もなくなる。
(6)マイナポータルをe-Taxに連携すると、医療費控除が自動入力できる。
(7) 行政事務のデジタル化が進み 特に地方公務員の事務作業の効率化、高い住民税の軽減に向けての人員削減等に繋がる。
これに対しデメリットとして相変わらず(個人情報漏洩の危険性)を声高に唱える人がいるが、マイナ保険証と暗証番号両方を盗まれない限り、リスクは皆無に近い。他人の医療情報を苦労して盗み取ったとしても、何の役に立つのか甚だ疑問、過剰な疑心暗鬼、若しくは反対を唱える為の材料に過ぎないのではないだろうか。
この様な状況の中で注意深く観察すると,マイナ保険証に反対しているのはごく一部の医者と少数の雇われ評論家、弁護士に過ぎず、国民総背番号制反対運動と同じく、反対理由の根拠も薄弱で、殆どが私利私欲に基ずく物であるとしか考えられない。
4月、全国保険医団体連合会(保団連)の主催によるマイナ保険証・関連法案の撤回を求める集会が医師ら約200人を集め、東京・永田町の衆院第二議員会館で仰々しく行われたが、竹田副会長(岐阜県保険医協会会長)の反対理由は、(全国の高齢者・介護施設の9割が利用者のマイナンバーカードの申請代理は対応できないと回答しており、健康保険証の廃止は誰も得をしない)という極めて単純なものであった。高齢者、介護施設と言う一部・特殊な事例の問題であれば別個に解決策を考えれば済む話である、又経済ジャーナリストの荻原博子氏は、「情報漏えいの危険性」の他『資格確認書』の発行・更新に自治体窓口がフォロー出来ない(可能性も)あり、保険料を払っていても無保険になる恐れ(?)がある)、と言う様な根拠も曖昧な危機感を煽る類の物であった。
島根県保険医協会・事務局長の談話では「医療機関にオンライン環境が整うことで医療機関をターゲットにしたリスク(註)が危惧されます。患者がカードを院内で紛失した場合のトラブルや、個人情報が漏れてしまうんじゃないかという懸念もある」オンライン上での個人情報の照会などから、情報漏洩などを懸念する声が多いといいます。(註;身代金要求型のランサムウェアの事か?)
カード紛失トラブルや個人情報漏洩は反対の為の道具に過ぎない。ネットリスクはセキュリテイ強化が必須であるが、これを恐れていては旧態依然の環境から一歩も抜け出せない。
「ランニングコストがかかるので医療が続けられない」「義務化されるなら閉院する」という意見もよく聞かされるが、子供染みた脅迫としか考えようがない。本音は特に開業医が診療や診療報酬等がガラス張りになり、政、官、民から改革の声が上がるのを恐れているとしか思えない。
只、東京都医師会の尾﨑会長は、「マイナンバーカードそのものはインフラというか制度、仕組みとして将来的に日本で必要なものだと思っている。税の問題、社会保障の問題、我々が今後目指している医療DX事業の基盤となるカードであることは間違いないので、これをやめるべきだとはまったく考えていない」とした上で、姓名、生年月日、番地等デジタル化のトラブル回避の為見直し、統一すべき点も多い。これ等が整備される迄待つ事も考える必要がる、と極めて真っ当な意見を述べられている。

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靖国参拝について

2023年08月20日 | 宗教
 
靖国参拝について
8月15日、78回目の終戦記念日に各地で戦没者の追悼式が行われ、京都西本願寺でも戦没者追悼供養が行われた。
日本武道館では全国戦没者追悼式が開催され、天皇陛下が「過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表します」と例年通りではあるが見識の高いお言葉を述べられた。岸田首相は昨年の式辞コピペの棒読みで、安倍路線を踏襲して「過去の反省の弁」は一切なく、保守層へのおもねりや安倍の呪縛から抜けられない事を世界中に披瀝した。
一方靖国神社には鉄板装甲車に日章旗、拡声器で軍歌をがなり立てる右翼団体の華々しい応援の元、安倍のお陰で現在の政治家の地位を得た高市大臣や萩生田政調会長、その他保育園の遠足行事の様な名前を付した「みんなで靖国参拝する国会議員の会」のメンバー、2~30名が無表情に雁首連ねて行進する異様な風景、そのテレビ放映を見た内外の多くの人達を唖然茫然とさせた。
考えてみれば、政治家が「靖国に参拝しました」と言わんばかりに目立った行動をとるのは、選挙目当ての下心があるのは歴然としている。政治家の靖国参拝に内外の強い批判がある中、本当に心からの慰霊の為であるのなら、目立たぬように行けば済む話である。幾ら抗弁をしても、遺族会や神社本庁を中心とする右派連中、保守派の票が目当てである事が見え見えである。慰霊の気持ちも無いのに票目当て、酷暑の中黒装束で靖国に出かけざるを得ない立場、哀れと言う他は無い。
戦争の犠牲者は何も軍人・兵隊だけではない。戦争犠牲者に対する慰霊の想いがあるのであれば、天皇陛下や首相が参列する全国戦没者追悼式に何故出席しないのか、理由を明確にする必要がある。
更に靖国神社と同じ様に招魂社を前身とする護国神社は全国に52社もあり、こちらの方にも慰霊を行うのが筋である。これ等を無視して靖国に拘るのは、其処には東条等の戦争犯罪人が「神」として祀られているからだと言われても仕方が無い。(明治天皇が東京の招魂社を靖国神社と命名したに過ぎない。その他の招魂社は護国神社と改称された。)

終戦記念日における首相の靖国参拝は、1985年の中曽根首相の公式参拝から中断していたが、小泉元首相が橋本龍太郎元首相と総裁選を争った際、保守層の票の取り込みを図り劣勢を挽回しようと、選挙公約に靖国参拝を取り入れ、首相退陣直前の2006年に現職首相としては21年ぶりとなる終戦記念日の参拝を行った。小泉の参拝は選挙の票集めが歴然としており、折に触れ極東国際軍事裁判の結果を受け入れ、過去の植民地支配やアジア諸国への加害に対し、謝罪と反省の意を述べていたので対外的には大きな摩擦を生まなかった。ところが、その7年後安倍が総理として参拝した時には、中国、韓国、北朝鮮は勿論の事、米国・オバマ政権は失望(or懸念)を表明、ロシア、EU、イスラエル、台湾までが批判的な声明を出し、海外有力メデイアも名指しで軍国主義者、歴史修正主義者と非難した。日頃の安倍の右派的言動も影響したが、その大きな理由は靖国には極東国際軍事裁判の結果処刑された戦犯が「国家に公式的な貢献を為して死んだ者」として、「其の英霊を「神」として祀り」、「彼等の事績を永く後世に伝える」としている点にある。
戦犯が「国家に貢献した」、戦犯が「神」になった、「彼等の事績を永く後世に伝える」、その何れもが外国はもとより我々大きな被害を被った日本人にも全く受け入れ難い。
(尚日本国内には太平洋戦争はアメリカの罠にはめられたと言う事を唱える人物も多い。靖国神社の歴史資料館遊就館には、「米・ルーズヴェルト大統領は真珠湾攻撃が実施されることを知っていたが、放置して日本から先に手を出させる形にした」という陰謀論が記述されている。アメリカが靖国神社を嫌う理由はこんな点にも有るのである。)
靖国参拝者が「太平洋戦争を正当化」し「軍国主義に回帰する」ものでは無いと幾ら抗弁しても、靖国神社の主張は真逆、戦争犯罪人を「立派な事績を残した(神)」に仕立てるのは、太平洋戦争の正当化に通ずると言われれば抗弁出来ないであろう。全国戦没者追悼式の追悼対象には戦犯も含まれているが、こちらに首相や議員が参列し、追悼の意を表しても諸外国は文句を言わないのはそこに理由がる。
 
古来、「神は依代(よりしろ)に宿る」と言われた。人間も含め万物に神は宿り、力を発揮する。その神には、怖い荒御魂(あらみたま)、優しい和御魂(にぎみたま)、両面の性格を備えて居り(聖書のゴッドも同じ)、機嫌を損ねると祟りがあるので、ご機嫌を取って丁重に慰撫し、お祀りをするのである。民族学者柳田國男によれば、人を神に祀る習俗の本来的な形式は「非業の死者」の祟りを鎮めるための神格化であるとして、「祟り 神起源説」を唱えている。中世から近世にかけて、非業の死を遂げた人物は怨霊の形で社会全体に天変 地異をもたらした。これらの怨霊の祟りを鎮めるため、神社を創建しその人物を神として祀ることが行われたと言うもので、歴史的には、人を神として祀る場合は「怨霊慰撫型」であった。しかし、その人物が神に祀られた後、時代の経過につれて、怨霊が次第に忘れられ、霊験あらたかな神として信仰される様になった。「菅原道真」が平安京・清涼殿落雷事件などで日本三大怨霊の一人として知られたが、後に天満天神として信仰の対象となり、その後学問の神様として親しまれるようになり「勲功顕彰型」に変容した。又祀るべき怨霊の数が増えてくると、祖霊と一緒に纏めて祀られるようになり、「祖霊崇拝型」も兼ねるようになる。

靖国神社もその起源は「怨霊慰撫型」であったはずである。安政の大獄以来幕府の弾圧で無念の死を遂げた志士達の霊を福羽美静という人物を中心に京都霊山に祀り、それを靖国の「本宮」(注)に移したと言う経緯がある。その後、維新の受難者を慰霊する為、招魂場が造られたが、維新政府は日本の伝統文化を否定し、神社の祭祀も海外と同じ「勲功顕彰型」にするよう指導したのである。西郷隆盛の様な明治政府に対する反乱者であっても「怨霊慰撫型」であれば祀られるが、慰霊の形が変わった為に、死後祀られる可能性が無くなったのである。
東条の様な戦争犯罪人の場合も「怨霊慰撫型」であれば、(彼等は極悪非道の人間であるが、祟りが恐ろしいので怨霊の災いを鎮める為、祀って慰霊する必要がある)と言いたいところだが、「国家に貢献した為「神」として祀り、彼等の事績を永く後世に伝える」と言わざるを得なくなった為、諸外国から「太平洋戦争を正当化する」、国内からはそれは無いだろうと、反発の声が高くなるのである。(本宮;現在(本宮)への参拝は治安の関係で、事前許可取得が条件である。)

戦後多くのA級戦犯が処刑されたが、安倍の祖父、岸信介は処刑されず獄中から生き返ったばかりか、総理に迄上り詰めた。処刑された人間や家族が遺恨の情を抱いているであろうと、岸信介や孫の安倍が想像するのはごく自然であろう。彼等が靖国を参拝するのは死した人間の祟りまではいかなくても、遺恨の念を鎮める為であろう。この「怨霊慰撫型」を理解して貰う以外に靖国参拝のトラブル解決は無いだろう。
 

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マイナカード自主返納の愚―2

2023年08月12日 | 社会問題
マイナカード自主返納の愚―2

2013年5月末、個人識別番号の利用に関する所謂(番号法=マイナンバー法)ガ成立し、2016年1月1日からマイナンバー制度、国民総背番号制がスタートした。
国民背番号制は1968年佐藤内閣の時に検討が開始されたが、当時部落解放同盟が反対声明を出し、これを後押しする形で「国民共通番号制に反対する会」を中心に、猛烈な反対運動が始まった。街宣で評論家の桜井よし子は「牛は(狂牛病対策で)10桁で一生を管理されることになった。人間は11ケタの番号で管理される、 私は番号になりたくない」或いは「住基ネットは国民を裸で立たせるものだ」と言う様な凡そ意味不明の言説で民衆をアジって反対運動を先導した。作家・田中康夫元長野県知事は反対運動を盛り上げようと、セキュリティの脆弱性を訴える為、知事の権限を利用して不正処理まで行っていたとの記事まで出て来る始末、国民背番号制は沙汰止みとなり、日本のデジタル化遅れの元となった。

次の国民背番号制の試みは、1980年、大蔵省が所得税法改正により、マル優(少額貯蓄非課税制度)の限度額を管理するという理由でつくったグリーンカード(少額貯蓄等利用者カード)である。300万円以下の貯蓄を非課税にするという(マル優制度)を作ったが、複数の口座をつくって脱税する人が後を断たなかった為、これを防ぐ方法として名寄せを行い、1人に1口座に纏めようと言うのがグリーンカードである。この仕組みは多くの口座に分散された貯蓄が名寄せ出来る為、納税者番号としても使えると言うメリットがあったが、この制度は国民背番号に通じるものであるとして野党が騒ぎ、パチンコ屋などの中小企業主や政治家から「収入がガラス張りになる」、銀行業界からは「貯蓄が海外に流出する」などと言う反対論が噴出し、究極的には(上限を300万円に制限されていた郵便貯金)との競合を恐れた郵政省、郵政族議員、郵政族のドンだった金丸信が反対に回ったことが決定打となった。このため、グリーンカード情報を処理するコンピュータセンターまで出来上がっていたのに1985年に廃止された。その後金丸は総額33億円に及ぶ所得を隠しており、その資金の流れを把握されることを嫌っての反対だった事が明らかになった。
この様な私利私欲の為の反対運動によって、不公平税制の是正はおろか、多くの労力と注ぎ込んだ資金が無駄となり、日本に於ける官・民の情報化が大幅に遅れ、デジタル後進国としての名を世界に馳せることになった。国民総背番号をきらう人々の反発を恐れていろんな役所がばらばらに制度を造った為に横断的なシステム化を困難なものにしたのである。マイナ制度が分散型にならざるを得ず、各システムとの紐付けでトラブルが多発しているのも此処に原因が有ったのである。

そのような状況の中(マイナンバー制)を後押しする一大事件が発生した。第一次安倍内閣が倒れる引き金となった「消えた年金」事件である。1986年に紙台帳の記録からオンラインによる記録へ移行し、1997年に厚生年金(会社員)、共済年金(公務員)、国民年金(個人事業主など)夫々加入する制度により別々に付与されていた番号を「基礎年金番号」に統一したが、その際社会保険庁の労働組合(自治労傘下)が基礎年金番号による業務合理化に反対し、「国民総背番号だ」という理由で業務をサボタージュしたため、紙の帳簿からコンピュータにデータを転記する際に大量のミスが発生した。2007年に、被保険者、年金受給者を合わせて約3億件分のうち、基礎年金番号のデータベースに入って居らず誰のものかわからない年金記録が5,095万件存在している事が判明した。
政府は多額の予算を投入し、消えた年金記録の照合を進め、各家庭には「ねんきん特別便」が送付され、年金記録の漏れがないかどうかの確認が行われた結果、2008年~2012年の間に約230万人の年金受給者の年金記録が修正され、総額1兆6000億円の年金が一時金として支払われた。しかし判明したのは3千万件程で残りは未解決のままとなっている。(尚ミスの原因は「①転職が多い、②結婚等による姓の変更、③名前の読み方が違うのが多すぎる。」等で転記の際の要注意事項である)
この不祥事もあり、2007年の参議院選挙で自民党が敗北、安倍第一次内閣が倒れる原因となった。社会保障番号の導入をマニフェストに掲げ2009年に政権交代を果たした民主党政権は「社会保障と税の一体改革」で国民共通番号(マイナンバー)の導入を決め、2012年にマイナンバー法を国会で成立させたのである。当に消えた年金問題が大きく後押しすることになったのであるが,此処に辿り着くまでに如何に長い時間と労力、無駄な巨額税金を費消することになったかを我々は銘記すべきである。社会保障・税番号制度(=マイナンバー制度)は、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平・公正な社会を実現する社会基盤である事は間違いない。
公平な社会の一例を挙げれば国民の税負担には脱税も含め大きな偏りがある。世に言われる課税当局による所得捕捉の業種間格差、クロヨン或いは、トーゴーサンピンである。「クロヨン(9:6:4)とは」、サラリーマンなどの給与所得は9割、自営業者などの事業所得は6割、農業や水産業、林業を営む事業者の所得は4割、「トーゴーサンピン(10:5:3:1)とは」、サラリーマンなどの給与所得は10割、自営業者などの事業所得は5割、農業や水産業、林業を営む事業者の所得は3割、政治家の所得は1割 を意味する。
この様な正直者が馬鹿を見る不公平税制度を是正する為には個人の所得を把握することが大前提であり、マイナンバー制の導入と活用が不可欠なのである。不正を働いて居なければ自分の所得が全てオープンになった処で、心配することは何もない筈である。公的な生活支援や所得に応じた色々な手当の支給にも所得の把握が大前提であることを認識する必要がる。
行政の効率化に関しては、まず第一歩として、国民背番号が(・健康保険(証)番号・雇用保険番号・基礎年金番号・住民票コード・免許証番号・パスポート番号・納税者番号・マイナンバー)の様に、色々な役所が個人に何種類も番号をつけて極めて煩雑であり、マイナンバーに紐づけて1本化する時期に来ている。

マイナカード自主返納は 一体化作業の過程での誤入力がメデイア等により、針小棒大に過剰報道された為、情報リテラシイの乏しい人達の不安を煽り、返納する動きが活発化した。ハッシュタグ(#)をつけた「#マイナンバーカード返納運動」として返納を呼び掛ける投稿も相次ぎ、一種のヒステリー現象の様相を呈している。トラブルは大きく分けて次の五つ、「(1)コンビニ交付サービスでの住民票写し等の誤交付、(2)マイナ保険証の別人の誤登録、(3)公金受取口座の誤登録、(4)マイナポイントの誤付与、(5)マイナポータルでの他人の年金記録閲覧 」であるが、(1)以外は根本的なシステムの欠陥ではなく、システム稼働初期によくみられる人為的ミスで、しかもその発生件数は0.01%以下、実害は全く発生していない。(1)に付いては富士通のシステムに欠陥があり、住民票写しの発行要請が集中した時に、どれを受け付けるかの処理に難点がある事が判明して居り、これを修正すれば解決する問題である。但し発生件数は印鑑登録を含め0.0006%、これがカード返納の一因になったとすれば富士通の責任は重大である。
 2015年にマイナンバー制度が導入された当時、「マイナンバーは個人情報であり、絶対に他人に知られてはいけない」等と恐怖心を煽り過ぎた為、上記の様なミスで自分が丸裸にされてしまうのではとの印象を与え、国家による個人情報の把握を嫌う人たちの扇動に乗せられてナンバーカード返納に繋がった可能性が高い。
マイナンバー制度は全国民が対象であるから、どの様な人によって、どのような使われ方がされるか分からない。そのためIT業界で、「ポカよけ」とか「バカよけ」という言葉が有るように、間違った使い方が出来ないように設計することが重要になって来る。上記(4)のミスは、自治体の支援窓口の端末を使って口座登録をした時に、前の人がログアウトを忘れ、その人のマイナンバーに、次に使った人の口座が登録されてしまうと言うトラブルが発生したものだが、ログアウトしないと警告が出る様な仕組みを設けて置けば防げた話である。他にもミスを誘発するものは無いのか、運用する側・使い手側の視点で点検する必要がある。
公金受け取り口座の誤登録は子供の預金口座に紐づけるべきものを親の口座に紐づけしたものと考えられ、件数も10万件超と多いが、修正は簡単、間違えた各人が修正すれば容易に修正可能である。
マイナカード普及を滞らせている理由は「(1)通知カードで間に合っている (2)必要性を感じていない (3)何となく抵抗がある、監視社会に繋がる、誤入力等トラブルに対するメデイアの過剰報道により、制度そのものに対して国民に不要な恐怖心を植え付けてしまった。」事が挙げられる。
(1)(2)に付いては、マイナカードは顔写真付きの身分証明書として利用できるのが大きなメリットだが、身分証明書として運転免許証や健康保険証で代替できるし、行政手続きも通知カードでも間に合う場面が多く、特に必要性を感じないと言うことであろう。但し健康保険証は顔写真が無い為、不正利用が横行して居り、身分証明書と犯罪の温床に成って居る。其の為、携帯電話会社では本人確認として受付しなくなって居り、今後このような動きが増加する筈である。運転免許証を持たない人にとってマイナカードは必要不可欠になって来るだろう。
(3)の、なんとなく抵抗があるという心理的な抵抗感がマイナカードを作成しない最も大きな理由のひとつである。
個人情報漏洩のリスクに不安を感じている人も多いし、更に個人番号、住所、生年月日、性別、健康保険証、銀行口座など個人的なデータがひとつのカードに集約されることから、「マイナンバーで個人情報が収集され監視者化に繋がる」と考える人もいるようだ。しかしながら、行政機関は元々行政を円滑に行う為に昔から個人のデータを保有している。住民票に始まり、税金のため、健康保険のため、子育て支援のためなど様々な事情で住民の情報を国や自治体は把握しているのである。マイナンバーによって新しく個人情報が収集されるのではなく、もともと国も自治体も個人情報を集め保存していたのである。
但し行政効率化の課題として、それを横断的に連携させる仕組みがなかったので、既存の情報同士を連携させるために情報提供ネットワークシステムを含めた(マイナンバー制度)が活用される事になったと言うに過ぎない。
もう一つの誤解である「マイナンバーであらゆる情報が漏えいする」というのも事実ではない。マイナンバー制度が導入されることで、各行政機関等が保有している個人情報を特定の機関に集約し、その 集約した個人情報を各行政機関が閲覧することができる『一元管理』の方法をとっているのではない。 マイナンバー制度が導入されても、従来どおり個人情報は各行政機関等が保有し、他の機関の個人情報が必要となった場合には(マイナンバー法別表第二)で定められるものに限り、情報提供ネットワークシステムを 使用して、情報の照会・提供を行うことができる『分散管理』の方法をとっているのである。
マイナカードには4つの情報と(ICチップ)の本人認証キーしか入っていないので、カードがあっても税務署が健康情報を見る事は出来ないし、保健所が納税記録を見ることも出来ない。税と医療保険のデータは別々に分散管理されているからである。
従って漏洩リスクは従来と何も変わらないと言っても過言ではない。監視社会になると言う懸念も2003年に個人情報保護法ができた事により行政機関における個人情報の取扱いに関する基本的事項が定められて居り、自己の情報がどのように使われるのかマイナポータルで確認出来るシステムも出来ている。
マイナカード、マイナ制度には「何となく抵抗がある」、日本人は自分達の「個人情報を知られる事」への嫌悪感が余りにも強すぎるのではないか。これを乗り越えないと国や自治体で行われている(無駄な業務=税金の浪費)を防止し、国を挙げての生産性向上を図る事は不可能、ひいては国家が衰退の一途を辿るであろう事を冷静に考える必要がある。
かって防犯カメラ、監視カメラの設置に強い反対の声があったが、最近の犯罪検挙に大きな役割を果たしている事も反映し、その数や設置場所が飛躍的に増加したが、反対の声は全く聞かれなくなった。
何もせず現状維持の儘で行き、問題が起これば不満を投げつけるだけでいいのか、マイナンバー制度を進め日本の改革を図る事のメリットは何かを政府は懇切丁寧に説明する必要がる。
最後に現在のマイナンバー制度の改革点も挙げておきたい。
(1) マイナンバーはいろいろなシステムが混在しているため、パスワードが4種類あり、煩雑で,セキュリテイ上も問題が無い事は無い。認証を思い切って指紋(生体認証)に切り替えれば、パスワードの漏洩防止や認知症患者にとっても対応可能である。この際、外国人も含め住民票交付時に全員指紋登録を義務化すれば、冤罪や犯罪の迷遇入りも大幅に軽減できるメリットがある。
(2) マイナカードに付いて
(A)マイナカードは氏名、住所、性別、生年月日の基本4情報と顔写真が記載され、本人確認書類として必要な情報が全て備わって居り、更に、カードに組み込まれたICチップを使った公的個人認証サービス、「署名用電子証明書」と「利用者証明用電子証明書」として利用できる。この難しいお役所用語、マイナカードが敬遠される要因でもあり、早急に誰もが分るような表現に切り替えた方が良い。
(B)マイナカードの生年月日が和暦、西暦が併記されている。公文書の年号表記の西暦1本化こそが改革の1丁目1番地。デジタル庁の腰抜けぶりを表す象徴である。こんなへっぴり腰では国民を先導し啓蒙する事など全く期待できない。
同様に当用漢字にも無い漢字が使われて居りこの際戸籍法を改正し当用漢字にない漢字は使用禁止にすべきと考える。併せて番地表記も法律で1本化すべきである。
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