追憶の彼方。

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厄病・花粉症

2023年04月16日 | 社会問題
厄病・花粉症
凡そ他人事と呑気に構えていたが、この(トンデモ無い厄病神)に取りつかれたのは、忘れもしない運転免許自主返納を機会に、大好きなゴルフをやめると宣言し、ゴルフ仲間が栃木県のゴルフ場でお別れ会をしてくれた15年前に遡る。
ゴルフ場の帰路、東北自動車道での運転中、急に眼がしょぼしょぼ、クシャミ・鼻水が止まらなくなり、流石に危険を感じて羽生パーキングエリアで休息、洗顔・うがいを繰り返して少し落ち着いたところで、這々の体で自宅に辿り着いたが、それ以来のお付き合いである。後日譚としてゴルフ参加者の半数近くがその日に花粉症を発症したことが判明した。一般社団法人「ストレスオフ・アライアンス」の大規模ネット調査によれば、花粉症の患者の多い都道府県ランキングで栃木県は岐阜、群馬に続いて堂々の3位にランクインして居り、選りによって花粉銀座とも言うべき杉・檜の花粉豊富な樹林帯の真っただ中で一日中走り回っていたのだから老人の花粉症患者を一挙に生み出したのも当然の事と妙に合点したものである。
それ以降時々軽い症状が出る程度で、鼻うがいと市販の鼻炎薬、目薬で対応出来ていたが、周りの人が花粉症で苦しんでいる時に、この厄病神と縁の無かった時期の記憶が強い為、何とかしてくれと言う気持ちが多少持ち上がる程度で済んでいたものの、10年に一度と言われるような今年の強烈な花粉の襲来には流石に悲鳴を上げた。3月半ば頃から夜明け前3時頃トイレに立つと喉の痛み、鼻詰り或いは鼻水の洪水,クシャミと目のかゆみに悩まされ朝まで一睡もできない日が続いて、全てにやる気を失ってしまった。屑籠は毎日テイッシュペーパーの山で週二日のゴミ出しにゴミが一袋追加となり、部屋にはテイッシュペーパーの箱が山積となる始末。医者嫌いの身ではあるが流石に来年からはシーズン前には医者に相談しようと痛く反省する次第となった。しかし同時に又、文句も言わずこんなのと長年付き合ってこられた人の辛抱強さには驚き呆れると同時に、日本人の半数近くが罹患し、最早国民病になっているにも拘らず、何の手も打たない政府や医療関係者の無為無策に怒りがこみあげて来た。一体全体、花粉症罹患者に責任はあるのか、先ずは敵を知るという観点から色々調べてみたが、患者の方には落ち度は無く、無定見極まりない自民党政権の場当たり的な資源政策、住宅政策が全ての原因であることが判明した。
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会と言う組織が花粉症の実態及びその治療に関するガイドラインを出している。
花粉症の症状はアレルギーが原因であるが、本来は無害であるはずの花粉を外敵とみなして免疫反応が働いてしまうアレルギー反応である。
長い間大量に花粉を吸い込むことによって、アレルゲンを攻撃する武器であるIgE抗体が次第に蓄積される。体内のIgE抗体の量が増えると、「感作(かんさ)」といって特定のアレルゲンに対してIgE抗体が過敏に反応してしまう状態になることがある。花粉に対して「感作」が起きているときに、再び花粉が侵入してIgE抗体と結合すると、アレルギー症状の原因となる化学物質が放出され、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの花粉症の症状が引き起こされると言うのが、そのメカニズムだそうである。
此の説によれば、小生の場合はサヨナラ・ゴルフ会の前に花粉症のマグマが体内に溜まっていた処に、花粉症銀座で地雷を踏んずけてしまったお陰でこの厄病神・マグマが大規模爆発・噴出したと言うことになろうか。  (註;アレルゲン=アレルギーの原因となる抗原(原因物質)のこと。花粉症の花粉、金属アレルギーの金属等)

スギ花粉症の罹患率は、0~4歳では3.8%と低く、以降5~9歳では30.1%、10~19歳では49.5%と高くなっていき、19歳までに約50%の人がスギ花粉症を発症すると記されている。
花粉の舞う季節になると、罹患した人達の生産性は著しく低下する。勉学に励む前途有為の若者の半数近くが花粉症に悩まされているとすれば国家にとって大きな損失である。
2019年3月の第一生命経済研究所による試算によると、2019年1月から3月までのたった3ヶ月の間で外出を控えたことにより家計消費が5,691億円下がり、減速感漂う日本経済にダメージを与えた可能性は否定できないとしている。加えて、医療費や労働効率の低下による経済的損失は2000年当時で約2,860億円と試算されており、当時よりも患者が増えていることを鑑みれば3,000億円を遥かに超えている事が想像出来る。更には、目のかゆみ・鼻水・くしゃみや頭痛などの花粉症の諸症状が人間の集中力をそぎ、仕事の効率を下げ、結果的に大きな経済損失につながっている。また子供の場合、花粉症が他のアレルギーを誘発する「アレルギーマーチ」の切っ掛けとなる事があり、その人の一生に亘って苦しめる事にも成り兼ねないのである。
日本の森林率は約7割と、世界でもトップクラス。その中でもっとも広い面積を占めるのが杉林で、実に国土の約2割に達する。もともと杉は育てやすく、成長も早い。戦争で荒れ果てたハゲ山を森に戻し、復興に向けた木材需要にも応えようと、1960年代からせっせと植林を進めてきた。それらの木々が伐採・出荷に適した樹齢46~55年にまで育って収穫期に入っているにも拘らず、伐採が殆ど進まず放置された儘となって居り、杉林の8割超が樹齢30年以上に達して花を咲かせ、盛大に花粉を放出しているのである。
現在日本にある杉林の大半は自然林ではなく、人間の手で植林された謂わば「木材生産工場」であった。1950年以降、戦後の住宅建材を供給することを目的とした「拡大造林」という国策、政府の補助により全国の山林所有者が競ってスギに植え替え、建材の供給体制を整える方向に一斉に走り出した。只この建材供給体制が稼働するには時間が掛かる。住宅供給は待ったなし、建築業者は簡単に入手出来、安価で加工もし易い外材による新建材に頼る事になり、杉・檜等の国産材にシフトする事なく、今も続いているのである。日本全国で花粉症が蔓延している原因は、安い輸入木材との競合にさらされ、伐り出しても最早採算が取れないため、放置されたスギ林が存在することにある。また高級木材とするのに必須の(育成途中での枝打ち)や(間伐)が後継者不足で行われず、木材として使い物にならないので捨て置かれているケース、更には頑張り過ぎて今では人が踏み込まないような山奥にまで植林が進んで、伐り出すにも伐り出せないスギ林も多く残る。

終戦直後の復興から続く一連の日本の経済成長は「東洋の奇跡」と呼ばれ、世界的にも稀な社会の急速な発展を遂げ、特に昭和30~40年代の高度経済成長期、東京オリンピックや大阪万博などの開催による特需をはじめとして、「大量生産大量消費」型の経済活動が一気に加速した。採算重視で「安かろう、悪かろう」が日本製品の代名詞になった時期でもある。各地方から、東京・大阪・名古屋の三大都市圏への人口大移動が加速、日本の人口の半分以上がこの地帯に集中するという現在の都市集中・地方の過疎化と言う状況を形造ったのである 。この変化によって日本の住宅事情が大きく変わり始めた。伝統的地域社会は崩壊しはじめ核家族化が進んだ結果、多摩ニュータウンなどに代表される大型のベットタウンが開発され、安価で簡単に建設できる住宅の新築ラッシュとなった。数寄屋造りと言った職人の手になる伝統的な家づくりから、「早く、安く、大量に」を目指すハウスメーカーの、どんな土地にでも合う四角い画一的な規格住宅に変貌したのである。そのニーズに応えるべく誕生したのが、外材を中心にした安価な新建材である。「新建材」とは化学合成品で作られた建材で、大事な柱や梁をボンドで貼付けた集成材、外壁材をセメント質原料で作られたサイディング、内装材をビニールクロスや合板フローリングと言った化学合成品、更に天井や外壁にグラスウールなどといった化学繊維で出来た断熱材を詰め込んで施工して居り、見た目は傷ひとつない、頑丈そうな住宅が出来上がる。
しかし新建材・新工法による日本の住宅はその寿命を著しく短くしてしまった。杉や檜は空気を含み易い為、調湿作用が強く、断熱性も高いと言う特性を持っている。温度変化が少ないため夏は涼しく、冬は暖かく過ごしやすい空間を作る。奈良東大寺の正倉院が高床式校倉造りと言う工法を得て、千数百年も宝物殿として機能し続けているのは、日本の気候特性にマッチしているからである。
国交省の発表でも日本の家の寿命は30年、百年近い米英3分のⅠの短さで、30年経つと建て替えや大規模な補修が必要となり、多額の資金を必要とする為、家屋の資産価値は無いか、負の資産に等しい状況になっている。日本の家の寿命が短いのは、断熱材使用による内部結露によるカビや腐食が大きな原因だったが、接着剤によるシックハウス症候群も大きな社会問題化した。建材として使用されるヒバの木には防虫・殺虫作用、抗菌作用があり、杉・檜と合わせて利用すれば多くの問題解決に繋がる。
花粉症対策、住宅問題解決の為には国産材回帰への抜本策が必要である。
林野庁は2016~17年度2年でに花粉症対策苗木を1000万本まで増やす方針を打ち出したが、苗木調達にも問題があり、2年で本当に出来たのか疑問視されて居り、又年間1000万本超を達成出来たとしても、448万ヘクタールもあるスギ林すべて植え替えるには700年近くの時間が必要との試算があり気の遠くなる話だ。手っ取り早い方法は片っ端から杉や檜を伐採し建材利用に向わせる施策を講じる事である。
そもそも花粉症は自民党政権が撒き散らした公害である。既に30数年前から社会問題化していたものを放置して来た責任は重大である。
今頃になって唐突に木偶の棒総理・岸田は「花粉症対策・関係閣僚会議開催」をぶち上げた。どうせ選挙対策だろうと考えたが、実態は原稿の読み間違いで後に引けず動き出したと言う事らしい。安倍の二番煎じで戦争準備に忙しい木偶の棒・岸田に期待することなど何もない。
本当にやる気があるなら防衛予算を大幅に削減し外国への援助も暫く凍結して国産材利用や杉・檜の伐採後の植林に巨額の補助金を準備すべきである。
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