追憶の彼方。

思いつくまま、思い出すままに、日々是好日。

動物奇譚 (1) 蚊について

2024年09月04日 | 文化・文明

動物奇譚

(1) 蚊について

8月18日「天声人語」に(蚊)にまつわる記事が載った。漱石の弟子物理学者の寺田寅彦がエッセーの中で、「蚊帳の中は暑苦しい、しかし蚊に責められるのはそれ以上に嫌いだから仕方なしに毎晩いやな蚊帳にもぐり込んで我慢して居る」 と不満を漏らしている。しかし何時の頃からか、クーラーの普及と生活様式の変化で蚊帳が姿を消し、蚊に悩まされる事がとんと減った。しかし防御の無い屋外の動物はどうしているのだろう。蚊や虻(あぶ)、蚋(ぶゆ)などの虫よけに、尻尾という道具を備えてはいても、それだけであの猛攻は防ぎきれないだろう。

所が、山形県の置賜(おきたま)総合支庁が先ごろ、愉快な実験結果を発表した。放牧している黒い和牛をシマウマのような柄に塗ったところ、尻尾や頭を振って虫を追い払うしぐさが激減したそうだ。愛知県の技術開発を参考に「半信半疑でやってみたら、本当に虫が来なくて」、生産者も驚いたという。愛知県のホームページを調べたところ、「黒毛和牛をゼブラ模様に塗った「シマウシ」は吸血昆虫の飛来が減少、吸血昆虫対策技術の開発」と言う誇らしげな技術開発報告が掲載されている。曰く、「アブやサシバエなどの吸血昆虫は、ウシにストレスを与えるとともに、牛白血病などの病気を媒介するので、通常は薬剤で吸血昆虫を殺虫するが、今回薬剤に代わる新たな吸血昆虫対策技術を検証し、本成果は、米国の科学誌PLOS ONEに2019年10月4日に掲載された。」

(シマ牛の写真)

この記事を読んで真っ先に頭に浮かんだのは、尻尾を振らなくなった牛の「オックス・テールの美味しさは大丈夫か?」と言う点だった。尻尾は牛肉の中で1番動かす部位で、旨味がギュッと凝縮され、 こってりとした味わいと、しっかりとした肉質で、食べごたえ満点。特に和牛のテールは通常の牛テールよりも旨味と甘味、コクが凝縮されていると言われている。そう言えば、イギリスやアメリカの「オックステールスープ」や焼肉店などにある(テールスープ)を思い浮かべる事が多いが、しかし諸外国、特にイタリアではスープ以外の料理として食べられる事も多い。例えばローマ名物の「コーダ・アッラ・ヴァッチナーラCoda alla vaccinara」と言う名の下町庶民の家庭の煮込み料理がローマの伝統料理に昇格し今日に至っている。イタリアでは経験出来なかったが、ブラジルでイタリー人移民の手でハバーダ(Rabada)と言う有名料理として根付くことになり、サンパウロ出張時にその美味を経験する事が出来た。日本のCookpad レシピでも紹介されている。

(シマウシ)に話を戻すと、縞馬のシマの機能が明らかになったという研究論文が基になって実験が始まったと考えられる。論文は何故(シマウマ)は(シマシマ)なのか? 従来言われて来た4つの仮説に対して反論する事から出発した。

仮説1. 後ろの風景に縞模様が溶け込み、捕食者に見つかりにくい(最も有力だった仮説)。反論…他の縞をもった偶蹄類は、森林に住んでいるが、シマウマを含む馬の仲間は、開けた草原にいることが多く、縞によって紛れられるような環境にいることは少ない。

仮説2. 体温を下げるのに役立つ。縞の白と黒の部分で温度差ができ、空気が流れることで体温が下がるという仮説。 反論…同様の気温や日射のある場所に、シマウマも縞のないウマの仲間もおり、特別にシマウマが暑さに耐性があるとは考えにくい。

仮説3. 捕食者が獲物のサイズや逃げるスピードを間違える。これは、シマウマの縞模様のおかげで、捕食者がシマウマが走っている速さやシマウマのサイズを見誤り、シマウマを捕らえるのを失敗しやすくなるという説。 反論…シマウマの主たる捕食者はライオンだが、ライオンは縞馬狩りには群で行い、成功率も高いので余り役立っていないことが推察される。

仮説4. 群れの中で個々を見分けるのに使っている。反論…縞のないウマの仲間も、シマウマと同様の群れを形成しており、ウマが視覚、聴覚、嗅覚を使って、他個体を認識していると仮定するなら、縞が他個体を識別するのに差ほど重要とは考えにくい。

そんな中、新たに有力な説が唱えられた。縞が吸血性のハエの仲間に血を吸われないようにするのに役立っているのではないかという説です。吸血性のハエが、シマシマ模様の上にとまることが少ないという結果は、複数の論文で報告されていて、その理由は(体の輪郭がわかりにくくなる)、(背景とのコントラストが小さくなる)等により縞模様に近づかないという可能性が挙げられているのである。

蚊に戻ろう!。蚊は海外を含めると凡そ3500種類、日本には100種類ぐらいで、夜に刺すアカイエカ、昼に刺すヒトスジシマカ、北海道や東北で多いヤマトヤブカ、ビルの地下などにいるチカイエカ、汚い水たまりで発生するオオクロヤブカが有名。温度、二酸化炭素、水分という3つの要素に惹かれて近づくので、体温の高い人、活発な人、汗かきな人が刺され易い。但し汗をかきすぎると体温が下がるのであまり刺されないらしい。その他、水々しい肌の人、色黒な人、体脂肪の高い人が好かれ、血液型はO、B、AB、Aの順に刺されやすいという実験結果がある。酒を飲むと体温が上がり、二酸化炭素放出が増え、注意力散漫になるので格好の餌食となる。

しかし蚊の主食は花の蜜や樹液で、糖分さえあれば生きていける。事実、蚊に砂糖水をガバガバ飲ませて「蚊にウイルスに対抗する免疫力」を強化させ、感染症の媒介を防ごうとの研究も行われている。蚊が血液を吸う時、「プハ―、美味い、切れがあって,コクもある」なんて言っている訳ではない。 交尾したメスの蚊が卵を育てるために、良質なタンパク源である血を栄養リッチなサプリメントとして吸血している、謂わば次世代の為の生存戦略なのである。尻尾に叩き潰されたり、動物の背中で待ち受ける鳥達に食べられる危険を冒してでも必死で血を求める、血を充分吸えたかどうかで産卵数に大きな差が出るからである。吸血すると200個前後産卵するが、しないと4~50個に止まると言われている。オスや処女の蚊は血を吸わないのは勿論のことである。

動物奇譚 (1) 蚊について……2

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自民党総裁選

2024年08月23日 | 政治・経済

自民党総裁選

8月14日岸田首相は「自民党が変わることを国民の前にしっかりと示すことが必要だ。変わることを示す最も分かりやすい最初の一歩は私が身を引くことだ。来たる総裁選挙には出馬しない。」 と述べて総裁選不出馬宣言を行った。 自民党最大の問題である統一教会問題や裏金問題を放置した儘、総理が退陣する事がどうして「自民党が変わる」事に繋がるのか、問題を放置して敵前逃亡するのは安倍と同じで、当に自民党旧来の姿そのものである。一体次期総裁がこの問題の解決を含めどのように自民党改革、政治改革を図ろうとするのか、そのような骨のある人材がいるのか極めて興味深い。

その様な中、最初に出馬表明を行ったのが小林鷹之氏(49才)(衆院4・二階派)前経済安全保障相である。東大、財務省・理財局(森友・佐川局長)のエリートコースを経て国会議員、お決まりのコースを歩んで来た人物だが、往々にしてこの様な人物に有り勝ちな(出世欲・上昇志向)が強すぎて、自己の目的達成の為には何でも利用して恥じるところが無いという点が目に付きすぎて、強い違和感、居心地の悪さを感じる。利用できる物は悪魔でさえという手法は安倍の得意とするところだったが、安倍の場合は人間が単純なだけ、簡単に見破れたが、小林の場合は複雑系で何とも薄気味悪い。

先ず8月15日終戦記念日に、日本武道館の全国戦没者追悼式ではなく、靖国神社参拝に訪れた。神道政治連盟や日本会議の意向を踏まえた保守派の票を期待したもので、太平洋戦争や戦争責任など考慮の外、諸外国の反対論など全く無視した行動である。統一教会のパーテイーでの挨拶や祝電等による関係もあり、宗教利用はこちらも安倍と同じである。

又、知名度不足の解消と「若さ」アピールの為、趣味のランニング姿を報道陣にわざわざ公開し、更に突然の横田めぐみさんが拉致された被害現場を視察。何故総裁選が始まったこの時期の視察なのか。藁をも掴みたい思いの拉致家族迄利用する、やっていることは古い自民党の政治家そのものである。

政策目標の第一に「自民党が生まれ変わる」を掲げたが、最大の問題である裏金問題、統一教会問題の解明や解決策が何も示されていない。それどころか推薦人の半数を占める安倍派議員に配慮し、「処分を受けた方も一人一人は優秀だ。挙党一致で取り組まないと国難を乗り越えるのは難しい。」役職を外されたことについても「やりすぎてしまうと現場が回らなくなってしまう。」 処遇を改善すべきだと、自民党改革の肝になる部分を否定する始末、改革など頭の片隅にも無い事をうかがわせる。

派閥解消が謳い文句だが派閥の典型と言われる二階派に長年席を置き、しかも総裁選出馬に当たっては二階に挨拶に行くなど底が割れている。派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を巡る岸田、二階の責任に関し、「総裁選に不出馬」「次期衆院選に不出馬」との決断をもって、政治的な責任を果たされたと受け止めていると「事なかれ主義」「長いものには巻かれろ」の自民党的発言に終始している。

政治資金パーテイーによる資金集めも活発で、閣外に去った後9月、11月、12月とハイペースでパーティーを開催、この1年計6回のパーティーで総額4407万2500円を搔き集め、金のかからない選挙など何処吹く風の感じが伺える。改革派は世を欺く仮の姿、真逆の人間という印象が強い。兎に角若さを売り物にしたいらしいが、若さで自民党の悪弊に切り込むという姿勢皆無、寧ろ自民党的色彩濃厚な人物そのものの印象である。

それでは、世間はどの議員に「次の自民党総裁になってほしい」と思っているのだろうか? 雑誌・女性自身が20代~70代の男女500人を対象にアンケートを行った。 まず第3位に選ばれたのは小泉進次郎議員(43)である。父親は87~89代総理の小泉純一郎氏、4世代に亙る世襲政治家である。神奈川11区に強力地盤を持ち、当選回数は5回、第27・28代環境大臣を務めた経験もある。政治家の平均年齢の高さが問題視されるなか、 “若さ”に期待する人が多く、《若い議員に今までにない新しい視点で政治を行ってほしい》《若い感性で政治をして欲しい》との声が寄せられた。 また、《誠実そうだから》《一番誠実感があり行動が伴いそうだから》《自民党の悪しきところを、改善できそうな人だから》と人柄に注目する声が。父・純一郎氏の支持者からは《今の派閥政治では国民生活は良くならない。政治をぶっこわす父・純一郎氏の息子に期待したいです》という声も寄せられた。しかし過去のㇲキャンダラスな行動からこの人物が「誠実」とはどこを見て言っているのだろうか、トランプ信奉者を馬鹿には出来ないという思いが強い。実行力が有りそうというのも目立つが、発信力と実行力は別物。親父を真ねて発信に切れ味はあるが、2期の環境大臣でも大きな業績は無いどころか、石炭火力発電からの脱却遅延を突かれ、COP25 で国際環境NGOから「化石賞」を充てられている。裏金問題等自民党改革についても目立った発言が無く期待薄である。

続いて、第2位に選ばれたのは高市早苗経済安全保障担当相(63)だ。何故この人物が2位なのか、女性総理に対する期待感と推測されるが、器で無い者に大きな物を求めても所詮無理な話、突出した右寄り発言や靖国参拝を欠かさぬ事で、安倍や日本会議の応援を得て今の地位を得ているだけの人物。安倍の後継者の声が強いが、日本は一日も早く安倍の影から脱却する事が求められており、総理候補など論外である。

そして、第1位に選ばれたのは石破茂議員(67)、当選回数12回、防衛大臣や農林水産大臣、幹事長といった重職を務めてきた。’21年の第49回衆議院議員総選挙では、全国最多の得票率・84.1%を獲得したこともある。世間からの人気は高いようで、人柄について《誠実かつまじめ》《声を荒げることなく温厚なイメージで、かといって頼りない感じがしないから一度やってみてほしい》と評価する声が。また石破議員は自民党幹事長時代の’13年5月、当時自由民主党政調会長だった高市大臣が「村山談話に違和感を覚える」と発言したことについて「誤解を招く発言は厳に慎んでもらいたい」と苦言、靖国参拝にも否定的な事もあって保守派の反感が強い。麻生内閣退陣を直言し、また安倍内閣を批判し続けた為、孤立感を深めている。党内の人間への批判も辞さない姿勢から、《どの派閥にも影響を受けない。野党連合と共闘してもよい》《あれだけ自民党を批判しているから改革を実行してくれるのではと思う》《自民党を根本から変えてくれそうだから》と期待を寄せる声も上がっている。さらに《党内では人気はないが、国民には人気があるので国民の意見を聞いてくれそう》《党内の支持や評価は低いと聞いているが、普段のコメントも好意的に受け止められ、国民全体の支持も高く、総理になってもらいたい政治家と思うから》《国民にとって一番まともな発言をしているから》との声が上がり、国民に寄り添った視点を持っていることが支持されている。次期総理としては石破氏か林・現官房長官に期待したい。

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アメリカ大統領選の行方

2024年08月08日 | 政治・経済

アメリカ大統領選の行方

*カマラ・ハリスの登場とトランプの自爆

11月5日、米国と世界の行方を左右する米大統領選が実施される。銃撃事件が幸いし、選挙情勢は大きく(トランプ優位)に傾きかけ、(ほぼトラ)(確トラ)とまで囁かれ始めたが、バイデンの引退、カマラ・ハリスの登場で勝負は一転、土俵中央に引き戻され、どちらかと言えば、トランプの勢いに急ブレーキが掛り始めた。バイデンを嫌っていた若者や非白人の有権者が一斉に息を吹き返した。(嫌バイデン・嫌トランプ)の閉塞感から解放された(ダブルヘイタ―)と言われた有権者達、とりわけ若者・女性や黒人・ヒスパニックは、こぞって選挙に目覚め、投票率は大幅に上昇するものと予想され、ハリス有利な展開となった。

トランプに付き纏う(嘘つき・ポピュリスト)のレッテルに加えて、今迄バイデンに対して(老人だ)とこき下ろしていたレッテルが、20歳も年下のエネルギッシュな相手の出現で、ブーメランとなって自分に跳ね返って来てしまった。これを反映し、好感度調査では無党派層中心に、ハリスが勢いを増し、トランプを大きく引き離しつつある。ハリス陣営は僅か一週間で308億円の選挙資金を集め、その内66%が政治献金は始めてという新しい層からであった。更には、選挙ボランテイアの申し入れが後を断たないとも報じられている。トランプはこりもせず、集会でハリスを口汚く罵り、こき下ろしているが、バイデンには通じても女性のハリスには完全な空振り、空回りで、逆にトランプ持ち前の(下品・粗野・女性蔑視・民族差別)を一層際立たせ、トランプの好感度を下げる結果に繋がっている。更に副大統領候補のヴァンスの存在がトランプの足を引っ張っている。元々コチコチの反トランプで、(暴行魔)、(頭の足りない大バカ者)とまでこき下ろしていたヴァンスであるが、共和党上院議員のポストを得る為、熱烈なトランプ支持者に豹変し、トランプのご機嫌を取る為、Maga(=Make America Great Again)を連呼、その発言はトランプを真似て過激極まりない。暴走車トランプに暴走エンジンを取り付けたような感じで、流石に共和党員の中にさえ批判的な声が出始めている。ヴァンスが自分の妻と同じヒンドゥのインド系移民であるカマラ・ハリスを「子どもがいない惨めな変わり者女」と呼んだ侮蔑の映像がSNSで拡散し、各メディアも大きく報道しており、トランプが火消しに躍起となっているが、共和党支持者の女性からも女性蔑視との非難の声が上がり始めている。過去の自分に対する非難の発言に気付いていないトランプは彼を評価しているが、次期大統領候補として疑問視する声が根強く、トランプ自爆の暴走エンジンに成り兼ねない。

 

ただしかし、2016年の選挙で総得票数でトランプを280万票も上回っていたヒラリー・クリントンが大統領選でトランプに負けた例もある様に、有権者が投じた総得票数で勝者が決るのではない。アメリカの大統領選挙では(首都ワシントン及び各州)に対し人口比等に応じて選挙人が割り当てられて居り(全米総合計で538人)、殆どの州(註)では、州得票数の勝者がその州の選挙人を総取りし、其の選挙人の過半数(270人以上)を取った候補が大統領選に勝利するシステムをとっている。(註;得票率で選挙人を配分する州は、ネブラスカ州とメーン州の2州のみ)。

大きな票田は、カリフォルニア州(55人)、テキサス州(38人)、フロリダ州(29人)、ニューヨーク州(29人)の後に、イリノイ州(20人)、ペンシルベニア州(20人)が続いているが、共和党を支持する傾向がある州は赤い州(red state)、民主党を支持する傾向がある州は青い州(blue state)と呼ばれて居る。 カリフォルニア州、ニューヨーク州は青い州で岩盤であるのに対し、テキサス州は赤い州となっているが、最近テキサスでは 民主党支持が伸びて居りトランプが此の州を失えば、勝利の可能性は、ほぼゼロとなる。

大統領選で最も注目されるのは、民主・共和両党の間で支持が揺れる州、いわゆる「スイングステート」と呼ばれる激戦州で、代表的なのは、選挙人29人を抱えるフロリダ州である。カトリック系の黒人やヒスパニックの人口が増えて居り、世論調査ではトランプの支持率が伸びているものの、ハリス登場で大きくスイングする可能性が出て来た。

又2016年の大統領選でトランプの勝利を決定づけた「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」の州も目が離せない。ラストベルトとは、米国中西部から北東部に位置する、鉄鋼や石炭、自動車などの主要産業が衰退した工業地帯の呼称で、ペンシルベニア州(19)、オハイオ州(18)、ミシガン州(15)、ウィスコンシン州(10)などが含まれるが、2016年の大統領選で、トランプはこの4州で勝利したものの、2018年の中間選挙での上院選で、共和党は民主党に敗北して居り、又直近の世論調査では、4州のうちトランプが優勢なのはオハイオ州(州都;シンシナテイー)のみ、しかも0.6ポイントの僅差である。激戦州でも都市部は民主党、農村部・郊外は共和党支持の傾向が強い為、トランプは郊外在住の女性、若年層、黒人、ヒスパニック系の支持を期待しているが、トランプの口汚い人種差別・性差別攻撃はトランプのコアの支持層(低学歴・白人)には受けても、支持を期待する層の離反に繋がりかねないし、共和党が発信しようとした「団結の訴え」にも反する為、ジレンマに立たされている。トランプは神妙に団結を訴える演説を始めても最初だけで、途中から軽薄な本性が現れ、全くそれに反する人種差別、性差別等の分断を煽る方向に走ってしまうのである。

 

更に民主党には、(ランニング・メイト=伴走者)とも呼ばれる副大統領候補には魅力的な人材が揃って居り、ハリス支持を加速させる事が期待される。ラストベルト・ペンシルベニア州の知事で、かつて州の司法長官も務めたジョシュ・シャピーロ氏(51)や、アリゾナ州選出の上院議員で、元宇宙飛行士のマーク・ケリー氏(60)などが有力候補だが、ペンシルベニア州(19)とアリゾナ州(11)は、共に激戦州で、2人は過去に選挙でトランプ氏が支持した候補に勝った経験がある。また、バイブルベルトのノースカロライナ州(16)のクーパー知事、ケンタッキー州(8)のベシア知事など合わせて7人の名前が挙がっている。

副大統領候補は最終的に下馬評に無かった異色の(ミネソタ州知事・ワルツ氏)に決まった。所謂地方の叩ぎ上げで、「裏庭のバーベキュー・パーテイーに居る様な気さくな人物」と評されて居り、(検事でシャープ)なハリスと(泥臭い)知事の絶妙な組み合わせと民主党応援者を活気づかせている。

 

トランプはバイデンを「老人で弱弱しい」と声高に攻め立て点数を稼いでいたが、全て水泡に帰してしまい、一から戦略の立て直しの必要に迫られているが、今のところハリスの悪口を言うことぐらいしか攻撃手段を見出せていない。更に、この10年民主党から離反した黒人層を、人種が同じハリスが呼び戻す可能性が極めて大きいし、トランプが在任中3人もの判事を送り込み、保守派で固めた連邦最高裁が女性の「中絶を選ぶ権利」を否定した為、キリスト教・福音派以外の女性から総スカンを食らって居り、この影響も大きい。福音派の連中もトランプの離婚履歴、強姦など不道徳行為に加え、トランプ支持のコアである低学歴白人層が求める下品で口汚い悪口は聖書の教えに反すると離反の動きも出始めている。自身も被害者となった銃規制も争点になるが、どう対応するのか難しい判断が求められる。

 

**南北戦争の危険

色々な条件を検討するとトランプが当選する可能性は極めて低いし、アメリカや世界の自由主義陣営にとって混乱回避という点で極めて好ましい結果と言える。

しかし前回大統領選で敗北を認めず「選挙は盗まれた」として、バイデン勝利を副大統領として認めないようペンス副大統領に求めたが、選挙結果の認定を阻止する権限は憲法上認められていないとして拒否したのに対し、トランプは演説等でペンスを激しく非難し、これに呼応した支持者が「ペンスを吊るせ」と処刑を呼びかける等、議会乱入事件に繋がった。ペンスは州兵を動員,暴徒鎮圧を図った。

今回の選挙はトランプにとって、何が何でも勝利し自らが抱える裁判を無効にすることも大きな目的であり、勝利の見込みが無いと判断すれば、どの様な手段をとるか充分注視・監視する必要がある。特にハリスの身辺警護も極めて重要である。

トランプは自分が負けるのは選挙が盗まれた時(不正があった時)だけであると言い続けて居り、3月自分が今回の選挙で負けたら、米国の自動車業界と国は血の海になると政治的暴力を扇動するような発言をしている。いまだに、前回の選挙は不正によって盗まれたとしてバイデン勝利の選挙結果を認めておらず、2021年1月の連邦議会議事堂襲撃事件は、無数の人がその映像を見ているにもかかわらず、事件が本当にあったかさえ否定してしまう。「覚えておいたほうがいい」と、トランプは言った。「皆さんが見ていることは......実際に起きていることとは違うのだ」と、そして恐ろしい事にそれを信じ込み狂喜する低学歴の白人が多数いる事である。

元々南北戦争以来、アメリカの政治と社会には分断の芽が大きくなりつつあった。1964年人種差別を禁じる公民権法が成立したその時から、社会の分断を強めて来たのである。人種差別から解放された黒人の人口増、移民の増加がそれに拍車をかけた。

1950年代のアメリカは、人口の89%を白人が占めた。アメリカ独立戦争に関わった(建国の父)達と同じWASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)が、権力や影響力のあるポジションを牛耳っていた。だが今、白人の割合は59%まで低下し、2040年には50%を割り込む勢いである。400年のアメリカの暦史で初めて、アメリカは白人の国であると言えなくなりつつある。どんな集団にとっても、長年享受してきた権力を手放すのは容易な事ではない。白人至上主義者たちが、「おまえらに取って代わられてなるものか!」と叫びながら星条旗を肩に行進しているのは、その典型的な例である。主流派としての優位を失うに従い、白人は怒りを募らせ、変化に反発するようになった。その集大成がトランプだ。なにしろトランプは、エリートや政治機構や民主主義を敵と呼び、民意を代表するのは自分だけだと主張してアメリカ底辺の低学歴白人層の喝采を取り付けアメリカの分断を煽り先鋭化させたのである。これにマスコミも加わった。1996年に開局したFOXニュースは保守色が強く、白人中心主義的で、場合によっては白人至上主義的な切り口でニュースを報じてきた。2015年以降は、トランプ支持を前面に押し出した。白人が支配していた時代から多様な時代へと変貌を遂げたが、それに伴い過激な言論が増えて、一部のトランプ支持者は自分にとって心地よい政治的・文化的報道だけを信じるようになった。

民主党はリベラル・都市部・高学歴・民族的多様性、共和党は保守的・農村部・低学歴・白人などの特徴を持つ政党に変化し、両党共に穏健派は姿を消し、両党のイデオロギー的な重複はなくなった。両極化によって政治は機能不全に陥いる可能性が強くなった。

19世紀中頃、奴隷制存続を主張するミシシッピー州やフロリダ州など南部11州が合衆国を脱退し(アメリカ連合国)を結成し合衆国にとどまった北部23州と戦争となった。これが4年間続いた南北戦争である。

大統領選に全てを択すトランプにとって敗北は破滅を意味しかねない。MagaではなくMtga(Make trump great again)の為には支持者を扇動し何をやりだすか、危険が付き纏う。

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クスっと来る話(続)…(2)

2024年07月22日 | 癒し

クスっと来る話…(1)…丸ビル

大阪の友人が久々に東京に出て来ると言うので、奮発し丸ビル36階のレストランを予約しアクセスも含め本人に連絡して置いた。ところが時間を過ぎても本人が現れないので、Lineで呼びだしたところ、東京駅南口改札を出て周りを見回したが丸ビルらしきものが見つからず、ウロウロしていたが、売店の人に聞いて事情が分かったので今向かっているとの事だった。成る程小生も含め大阪の人間にとって、丸ビルとは下の写真の通り文字通り丸いビルを指しており、恥ずかしながら私自身、東京の丸ビルが(丸の内ビル)だと気づいたのは比較的最近の話である。

ディスコ、ホテル、それに電光掲示板の3点セットで大阪人を魅了した円いフォルムの丸ビルは兎に角、印象が強い建物だった。特に来京した友人は過って子供達との待ち合わせ場所を左側の角と指定して仕舞った結果、何処か分からず子供たちの信用を無くしたという逸話の持ち主だった。

この大阪丸ビルは西梅田一帯の地主で、(大日本どケチ教)教祖を名乗り大阪財界のドンと言われた吉本晴彦がフジタ工業(当時)に依頼し建てたものである。吉本晴彦は元サントリー副会長の鳥井道夫、森下仁丹社長だった森下泰とともに「大阪の三ケチ」と呼ばれ、ベストセラーとなった『どケチ人生』 の他、『どケチ商法』『どケチ革命』『どケチ生活術』の著作で大阪人の心をつかんだ事でも有名であった。

昭和51年に開業した「大阪丸ビル」は大阪駅から徒歩3分、地上31階、高さ120メートルでデイスコブームの火付け役「マハラジャ」、「大阪第一ホテル」、多くのレストランや物販店等35のテナントが入居し、ビルの屋上には大阪駅のホームからも見える「電光掲示板」が設置され、ニュース・天気予報等の他に有料でメッセージ表示のサービスもあった。プロポーズ言葉を表示したカップルや、平成元年2月3日には、4時56分に合わせ、数字が「123456」と並んだ電光掲示板の映像が話題を集めた。大阪梅田のランドマークとしての役割を演じて来たこの丸ビルも老朽化もあり、昨年解体された。

クスっと来る話…(2)…その他

(何気ない男女の会話)…女性「どうしたの?深刻そうな顔して・・・」、男性「ちょっと悩んでんだ、まあほっといてくれよ。」、女性「ふーん、じゃあ話変わるけどさぁ、髪薄くなった?」、男性 「話変わってねーよ」

(就職活動での質疑応答)…面接官「学生時代後悔してることはありますか?」、俺「女性関係です。」 面接官「何があったんですか?」 俺「何もなかったんです。」 その場で内定をもらいました。社内恋愛禁止というルールは入社後に知らされました。

(パパと息子の会話)…日曜の昼下がり。パパと幼い息子のやりとり。息子「なんで僕には妹も弟もいないの?」 パパ「それは、お前が夜遅くまで起きてるからだよ」

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クスっと来る洒落た話(続)…(1)

2024年07月13日 | 癒し

クスっと来る洒落た話(続)…(1)

** 「月がきれい漱石説」 

文芸春秋に日本語学者・辞書編纂者である飯間浩明氏が担当する「日本語探偵」と言う人気コラムがある。7月号に「月がきれい漱石説」の源流は英語の文献らしいという解説記事があった。

夏目漱石が生徒に【日本人は直接的に表現しない、 「I love you」は「月がきれいですね」と訳しなさい】と諭したという逸話は、日系カナダ人言語学者、S・I・ハヤカワ氏の著書「行動における言語」に書かれた「直接的に表現しなくても分る」というのがその発端で、これを権威付けする為に漱石説の都市伝説が生まれたというものである。ハヤカワ氏の説明は「若い女性と散歩している時、彼女が(今夜は月が明るいね)と言ったとすると、その声の調子によって、気象観測をしているのか、キスを欲しいと匂わせているのかが分かる」というものであった。

しかし、声の調子で判断すると言うのも可成り難しく、あれこれ考え悩んでいる内に、駅に付いてしまったとか、引っ叩かれたという危険も伴う…こんな事を言うのもデリカシイーの無さを暴露しているのかもしれない。

しかしこの説を唱えたアメリカ人は日系2世との事である。コテコテの脂ぎったアングロ・アメリカンや、ラテン系のアメリカ人なら、こんな詩的な事は言わないだろう。英語で想いを伝える「愛の言葉💛鉄板フレーズ60選!!(50選と言うのもある)」に出てくる様な「 I love you」で始まる剛速球、直接的な表現で迫る筈である。ハヤカワ氏には恐らく日本人の精神性が残っていたのでは無いかと推定できる。

数年前、Buzz FeedRepoter伊吹沙織氏が「愛してると伝えたいけど言葉にできないあなたに。文豪100人が綴った"I Love You"の訳し方、あなただったら、どう訳しますか?」という記事を掲載された。そのトップバッターが上記の夏目漱石の月がきれいね説である。

2番目が、竹久夢二「話したい事よりも、何よりも、ただ逢うために逢いたい」、3番目が、芥川龍之介「2人きりで、いつまでも,いつまでも話していたい気がします。そうしてKissしてもいいでしょう。いやならば、よします。この頃ボクは文ちゃんお菓子なら頭から食べてしまいたい位、可愛い気がします。」何やら中学生の下手なラブレターを彷彿とさせ、文豪も恋に血迷った感じで興ざめである。最後に7番目に登場するW・シェクスピア「君を夏の日に例えようか、いや、君の方がずっと美しく,おだやかだ」

文豪と言われた人も、ことラブレターとなれば難しかったようだ。

芥川もシェクスピアも、こんな恥ずかしいラブレターが衆人の目に晒されるとは万が一にも考えなかったのだろう。文豪はつらいね。

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