追憶の彼方。

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郷土富士

2024年05月25日 | 旅行

郷土富士

世界中の人を魅了して止まない富士山、2013年に世界文化遺産に登録されてから更に人気に火が付いた。訪日観光客が体験したい事のTOP10に挙げるのは、「3位の京都観光」、「2位の着物・浴衣体験」を抑えて「富士山観光」が常にトップを維持して居り、オーバーツーリズムの悲鳴も聞かれ始めている。山梨県富士河口湖町のコンビニ・ローソンが富士山撮影の名所として話題を呼び、観光バスまで繰り出して観光客が殺到、マナー違反も手伝って、付近の住民から何とかしろと苦情が出る始末。挙句、これに答える形で撮影できない様にと黒幕設置の異常事態となった。しかし此の黒幕から約1キロ西にある「ローソン富士河口湖町役場前店」でも、店舗の上に富士山がのったような写真が敷地前の歩道から撮れると言う事でこちらに観光客が殺到し始めていると伝えられて居る。

SNSの一枚の写真が火をつけたらしいが、コンビニと富士山、何処が良いのか、サッパリ理解できない。コンビ二建物のブルーの色と富士山のブルーが良くマッチすると言う事らしいが、余談ながら、北欧系の人に多いグリーンやブルーの目の人にも空気が澄んでいる時の富士山がちゃんとブルーに映っていると分かって黒目の人と同じように色が識別されている事が証明され興味深かった。何れにせよ彼等の付和雷同性は日本人を遥かに上回るかのようだ。   兎に角、外国人が富士山を単に景観として眺めているのとは異なり、多くの日本人にとっては、心の故郷と言った様な、もっと心情的な存在として見ているような気がしてならない。物心ついた頃から幼児期を経て少年・少女の期間を通じ、銭湯のペンキ絵や、絵本、更には唱歌や国語の教科書等でも富士山に接し、百人一首や竹取物語、富岳百景と言った古典文学・芸術等を通じ、身近ではあるが、何処となく特別な存在として畏敬の念で眺める習慣がつき、独特の心情が日本人の心の奥底に刷り込まれた結果であるような気がする。

南米の勤務を終え、5年振りに帰国して羽田に付いた時にはヤレヤレと言う安堵感しか無かったが,新幹線の車窓から雪を頂いた孤高の富士山を見た時、無事日本に帰り着いたと言う思いと、何故か年老いた母親の姿とダブって涙が止まらなくなってしまった記憶がある。

清潔・秀麗、凛とした(雄姿・佇まい)が文学・芸術の素材を提供し、日本の象徴としての地位を確たるものにしているのだろう。 其のせいか、富士の名前を冠した地名が非常に多い。元々富士山は霊山(神)として信仰・崇拝する対象で、日夜眺めて手を合わせるのを常とした。其の為、富士見町、富士見が丘、富士見台、富士見橋、富士見坂と言った地名が全国各地に散在する栃木・埼玉・茨城・東京・長野・静岡・愛知からは富士を望むことが出来るが、その他の地域では円錐形で山容が富士山に似た山を「ご当地富士=郷土富士」と呼び、北海道から沖縄まで全都道府県に存在し、その数、何と340以上あると言われている。  有名なところでは九州・指宿の開聞岳は「薩摩富士」とか、北海道 ・倶知安町の羊蹄山は「蝦夷富士」と親しみを込めて呼ばれ、九州・北海道の人に愛され大切にされている。

私の故郷・和歌山にも「紀の川富士=竜門山」が有名だが750mと低く、富士山の様に何回もの火山活動で出来上がった成層火山ではない為、成層火山が持つ特有の美しい山体ではなく、この辺りが蝦夷富士等とは異なる処である。寧ろ私にとっての「故郷富士」は「ペルー富士」と「チリ富士」と言うことになる。どちらも円錐形の典型的な美しい成層火山で、日本の富士と姿・形が 良く似て居る為、南米に多い移民の人や在留邦人が遠い故郷への想いを込めて「富士」と呼んでいる。

「ペルー富士」は、白く輝く世界遺産の街・アレキーパから眺める5,800mを超すアンデス山中のミステイ山、アレキーパへの出張の大きな楽しみの一つだった。

アンデス山脈には成層火山が多く隣国エクアドルにも富士山に似た山があった。

「チリ富士」はチリ南端のパタゴニアに近い風光明媚な湖水地帯に聳えるオソルノ山(2,660m)、西麓にはジャンキウエ湖を湛え、山頂は万年雪に覆われる活火山である。ドイツ系移民が造った美しい「プエルトパラス」の街やホテルから湖越しに見る山容は息を飲むような美しさである。ホテルの料理はドイツ料理で頂けなかったが、バームクーヘンだけは本物だった。

ホテルで購入した絵葉書

最後にアメリカ日系人に親しまれた「タコマ富士」を挙げて置きたい。アメリカ西海岸の北部ワシントン州にあり、カスケード山脈の最高峰、成層火山であるレーニア山、高さは4,392m1935年(昭和10)に日米親善のしるしとして、この山と富士山頂の石を寄贈しあったという逸話が残っている。

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