佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

リーダーの暗示学243――対立を読む

2005-08-09 06:34:26 | 先見力訓練法
 とうとう解散総選挙です。結局、自民党内の矛盾が表面化したということです。私は歴史が好きで、いろいろ勉強しますが、そこで学んだことは、矛盾はいつか表面化する、ということです。今日はこのあたりを説明いたしましょう。

 
「矛盾が表面化するのに要する時間」
 今回の解散劇の原因は、抵抗勢力の打倒を標榜する小泉首相と、彼を支える自民党議員との矛盾が表面化したということでしょう。
 
 考えてみれば、おかしな構図が何年も続いてきました。郵政民営化を唱える総理を、民営化に反対する議員が支えるというのですから。
 
 これが可能であったのは、矛盾を糊塗してきたからです。たとえば03年の総裁選では、「小泉をここで支持してくれ。あとで郵政民営化は反対だと言ってかまわないんだから」と幹部が議員を説得したそうです。
 
 そういう矛盾がついに表面化したということでしょう。時間がたてば、矛盾点がいつの間にか解消してしまう場合もありますが、今回はそうはいかなかったようです。
 
 では、矛盾が表面化するためには、どのくらいの時間が必要なのでしょうか。
 
 先見力訓練法では、ここがいちばん難しいといえます。一つの目安は「区切りの時間」です。
 
 今回のケースは、小泉総裁の任期があと一年というところがポイントでしょう。区切りの時間が近づいてきていたということですね。
 
 区切りというのは、人間がつくった知恵ともいえます。
 
 たとえば、大晦日と元旦ですね。一日違うと新年になって、不思議と気持ちが入れ替わる。物理的には、太陽が地球をいつものように東から上がってくるだけなのですが、それでも何か違う。去年が悪い年だったら、なおさら嫌なことはもうおさらば、今年こそがんばろうと思います。
 
 会計年度だって、事業は本来は続いていくものですから、本来はそこで切る必要はないでしょう。
 
 それがあるために、年度末セールをやって売り上げを伸ばそうとする。その反動で、次年度の初めは売り上げが落ち込んでしまうのに、そういう無駄なエネルギーを使ってまでも、数字を確保したくなる。不思議なもんです。
 
 要するに、人間は、この人為的な区切りに非常に影響されているわけです。そこで、相手の区切りがどのようなものかを理解することが、対立を考える上では非常に重要になります。

 また、区切りをうまく使う、あるいは、うまく区切りをつけることができれば、我々はもっと楽しく人生を生きられるとも言えるでしょう。
 
 小泉総理の性格と時間的なプレッシャーを考えれば、他の政党、たとえば公明党は、解散総選挙をもっと真剣に考えていなければいけなかったと思いますよ。
 

「選挙風景」
 選挙風景を拙著『リーダーの暗示学』から紹介しましょう。
 
 難しい政策論争など、大衆は聞かないし、わかろうともしない。それくらいなら、泥臭いやり方ではあるが、名前を連呼する方がはるかに効果がある。

(連呼されると、いつの間にか、名前が潜在意識に入ってしまうことがあるのです。コマーシャルにもそういうのがあります。たとえば、高橋英樹の「正解! 越後製菓」というお餅のコマーシャルがそう)
 
 ただし、連呼するのは、あくまで候補者の名前でなければならない。
 
 いつぞや、ある有名女性歌手○○○○○が、宣伝カーに乗って候補者の応援をしているのを聞いたとき、私はアレレと思った。
 
「○○○○○が参りました。私はこのたびの選挙で△△党の××××を応援しております。どうぞご声援よろしくお願いいたします。

 ○○○○○です。よろしくお願いいたします。ありがとうございます。○○○○○です。○○○○○がやってまいりました。○○○○○、がんばっております」
 
 選挙応援で、候補者でなく、自分の名前ばかり叫んでどうするというのだ。芸能人の性癖なのか、自分を売り込む癖がつい出てしまったのだろうか。これじゃあ「こまっちゃうナ」。
 
 いや、ひょっとすと、候補者よりもこの人を前面に出した方が、支持者には受けるのかもしれない。もしそうなら、こいつはすごい高等戦術だ。恐れ入りました。――『リーダーの暗示学』(210頁)より引用。
 
 さて、ここで問題。この歌手は誰でしょう。元アイドルで、なかなか色気のある人ですよ。デートに誘われて…。

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2 コメント

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有権者にとってもいい区切り (Coモン図職人)
2005-08-11 12:06:20
いつも勉強させていただいています。

小泉首相は、郵政改革と心中しようとしているように見えますが、ここで選挙をやるということは、あと数年総理をやるつもりなのでしょう。小泉首相はそのことについては具体的に語っていません。熱しやすく冷めやすいリーダーをこのままトップ置いておいていいのか、有権者にとっても冷静な目で判断すべきいい節目かもしれません。
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少し時間がかかる (佐藤直曉)
2005-08-11 12:36:42
Coモン図職人さま、いつもコメント有難うございます。

小泉内閣の支持率が、各紙の調査では、いずれも数ポイント上がっています。

これがこの国の国民性の一部です。パッと派手なことに、すぐ踊ってしまう。

軽率、軽薄ですが、このタイプは一定の比率で存在しますから、あきらめるしかない。

ただ、これから時間がたつにつれ、浮かれないで冷静に見ている人が、だんだん表に出てくると思います。

あと、2週間もすれば、雰囲気はずいぶん違ってくるはずです。

その頃になったら、お互いまた語り合いましょう。
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