佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

リーダーの暗示学413――暗示技術と明示技術の違い

2006-02-14 10:05:53 | リーダーの暗示スキル
 今日は暗示技術と明示技術の違いを示します。

「暗示と明示の特性」
 世の中で紹介されている技術は、ほとんどといっていくらい明示技術です。明示とは、物事を明らかにすること。分析とほぼ同義でしょう。
 
 なにか問題が発生したら、その原因がどこにあるか、みんな分析しますね。工場で不良品がでた、営業の成績が上がらないといえば、その原因と対策を考えます。当たり前と言えば、当たり前です。
 
 わからないものをなんとか分かるようにしようというのが明示です。これは現象の現状分析だけでなく、未来の分析にも用いられます。
 
 来期の計画をたてる、中・長期的な経営戦略をたてる、こういう未来のことでも、現状を分析し、できるだけ不明な点や問題点を見つけて対策をたてようとします。
 
 本屋の店頭に出ている書物のほとんどは、こういった技術にかかわるものです。つまり明示技術の紹介ですね。ですから、ビジネスマンは明示こそ技術だと思い込んでいる。
 
 ところが、明示の対極に暗示技術というのがあるのです。

 暗示というのは、実は明らかにしない技術ともいえるんですね。
 
 昨日のブログでは、ラグビーの平尾誠二さんの指導技術例を取り上げましたが、もういちど読んでください。彼はいちばん大事なポイントをわざと隠しておく。そうすることで、その技術に到達しようという選手の意欲を掻き立てるわけです。
 
 イメージで言えば、明示というのは真っ暗な洞窟にどんどん灯りをつけていって、洞窟内部を照らし出すということです。これで問題点がクリアになって、みんな安心して仕事に集中できるわけです。
 
 これに対して暗示というのは、真っ暗な洞窟の先の遠くに、ぼんやりと灯りがついていて、みんなその灯りに吸い込まれるように歩いていく、魅かれていく。

 暗示とはそんな感じですね。このあたりの感覚はなかなか簡単には説明できません。興味のある方は拙著『リーダーの暗示学』のなかの実例をよく味わってください。
 
 要するに、暗示と明示では使い勝手が違うんですね。どちらも相手の気持ちを集中させるために行うのですが、使用条件が異なる。
 
 一般的に言って、嫌なことがあったら、明示によってどんどん明らかにしたほうがいいと思います。その方が手っ取り早い。一方、暗示は可能性とか希望によって人を引っ張り上げるときに使うと考えればいいでしょう。ですから、指導とか教育に向いています。
 
 暗示というのは「明らかにしない技術」ですから、暗示にかけられても、暗示にかかったとは気がつかないのです。それが効果的な暗示なのですが、そのためにみんな研究しない。そういう問題がありますね。そして、本当にそんなものが役に立つのだろうかと疑う。無理もありません。つかみどころがありませんからね。
 
 しかし、暗示を意図的に使えれば、ビジネスマンにとっては圧倒的に有利です。ほとんどの人は明示しか使えないのですから、違う土俵で戦っているようなものです。
 
 ただ、それで出世ができるかどうかは保証できませんよ。そんなものがあるとみんな知らんのですから、評価のしようがない。せいぜい、「あの人と仕事をすると、なぜかうまくいく」とか「気分がいい」ぐらいのことでしょう。
 
 ですから、あまり大真面目で暗示に打ち込むべきではありませんね。趣味でおやりになればいいんです。そして、ここいちばん大事なときに、それをさりげなく用いればいいのです。


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