佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

リーダーの暗示学688――リーダーの認識視野を拡大する

2007-01-05 10:10:40 | リーダー認識
 昨日、リーダーの視野について最後に触れましたが、もう少していねいに説明しようと思います。
 
 
「空間的な認識視野」
 リーダーの認識視野は空間的な認識力と時間的な認識力が必要ではないでしょうか。
 
 まず空間的な問題です。リーダーの認識視野というのは、上に行くほど広くなる。これは当然のことです。上に行けば行くほど、広いテリトリーを管轄するようになるからです。係長なら自分の係りの問題だけを見ればよいが、社長なら会社全体を見なければなりません。
 
 しかし、それだけでは私は不足していると思います。自分のレベルにふさわしい視野より、もうワンステップ上に立って見る癖をつけたほうがよいのではないか、ということです。
 
 社長であれば、顧客や業界のことは当然視野に入っているでしょうが、それにさらにもう一段加える。それが何かは人によりますから、一概には言えないでしょうけれど。
 
 より広く見れば、より多くの手段が見えてくるものです。目先の問題ばかり見ていると、それが発見できなくなります。問題解決のアプローチというのは、みなさんが想像している以上に多岐にわたるのです。
 
 たとえば、ワインというものは明治の初期から我が国で生産されるようになりましたが、どうしても普及させられなかった。1975年ころでも、まだまだ普及率は低かったといえます。

 営業マンは一生懸命料理屋をまわっては、営業活動をしていました。これはこれでいいのですが、別のアプローチとして、洋食を家庭にどんどん普及させるということも必要でした。
 
 なぜならば、酸味の強いワインは日本食とはなかなかマッチしにくいからです。食卓に肉料理が広まるにつれ、ワイン市場も拡大していったのです。
 
 つまり、ワインをアルコール飲料というとらえかたから一歩進めて、食事のなかの食品とらえると、別のアプローチが発見できるわけです。そうなると、肉料理などの洋食料理教室を開催するとか、イタリア・レストランの普及策といった手段も生まれますね。
 
 そういったことを行うためには、発想を柔軟にするとともに、相当強い探究心が必要です。社長ともなれば、たいていの実務は下の人がやってくれますから、何もしなくてもある程度は通ってしまう。それを超えてなにか新しい価値を会社にもたらそうとすれば、強いモチベーションがなくてはいけないでしょう。それには、もちろん体力も必要です。


「時間的認識視野」 
 認識視野には時間軸も含めるべきでしょう。多くの人は、物事は現状がそのまま続くと思いがちです。しかし、時間が経てば、変わらないものなどありません。

 最近、トヨタがアメリカ市場でビッグ3の一角を崩し、ついに第三位に浮上したと聞きました。50年前くらいでしょうか、トヨタがアメリカでうろちょろしはじめていたころだったら、考えられないことです。

 インターネットの普及だって、10年前ですらここまで予想した人は少なかったはずですよね。
 
 前から私が言っていることですが、私はそう遠くない将来、原子力発電は下火になると思っています。より安全な太陽光発電が主流になってくると思っているわけです。ここでは論拠は示しませんが、そういう変化は必ず起きると思っている。
 
 時間軸で起きる変化に関して大事な評価基準は、対象物が真の人間性を満たしているかということです。
 
 原子力発電は事故がおきたときのリスクが大きすぎるからダメだろと私は思っています。北朝鮮の政権も人民を苦しめているので、早晩ダメになる。これは異論がないでしょう。非人間的なものはダメになるということです。
 
 人間性を追い風にして行動することは長期的にはとても大事なことだと私は思います。すぐには効果は現れないかもしれませんが、4,5年単位では必ず影響が表面化します。


「認識視野の深さ」 
 さて、リーダーの認識視野の三つ目は、認識の深さということです。
 
 よく深い穴を掘るには、穴の口径を大きくしないといけないと申します。穴の口径は上で述べたようなことです。そして、穴を深くする。これがここからの課題です。
 
 それで、何を深くしたらいいのか。簡単に言うと、「見えないものを見えるようにする」ということでしょう。これはちょっと言葉の遊びのようなものですが、見える人には見えても、ふつうの人には見えない、ということは一杯あるわけです。
 
 私は以前よく囲碁を趣味でやっていました(今は頭のエネルギーがないのでもうできませんが)。教育テレビでは日曜日のお昼から囲碁番組をやっていて、それを毎週欠かさず見ていました。日曜日のお昼ころテレビの前に居座るので、家族にだいぶ迷惑がられました。
 
 テレビ対局を見るわけですが、解説者があれこれ解説する。ところが、この解説がとてもキレる人とそうでない人がおります。

 チャンピオンクラスの人が解説するときは、「今のは悪手です」などと即座に指摘します。ところが、並みの一流棋士だと、数手してから、「やっぱりあの手が悪手でした」と言う。この違いですね。見えている人と見えていない人の違いです。
 
 こういうことはどんな専門の仕事にもあるわけです。技術者や職人の世界なんかは、そういうものがはっきりしていると思います。しかし、リーダーの世界でも似たようなことはあるに違いありません。
 
 リーダーが見なければならないのは、人の動きでしょうね。人がどう動くか、これからどう動いていくか。熟達したリーダーほど、そういう動きが見えていると思います。
 
 大村益次郎なんかは、上野戦争で彰義隊を壊滅させたとき、すでに西郷の反乱を予想していたそうです。もっとも、こういうところが優れている人は、一面でドカッとぬけているところがある。それで、無警戒にも暗殺されてしまったわけです。
 
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 今年は、今まで申し上げた三点を中心に、私としては考えていこうと思っております。できれば、そういった能力が進歩するような訓練体系を考案できればと思っています。相当難しい作業かもしれませんが、楽しくやっていきたいと思います。

 皆様も、私が申し上げた三点を、ご自分でお考えいただければと思います。それで、アイデアを頂戴できれば、さらに有り難い。もちろん、それを使わせていただくときは、開発者の名前を明示します。所有権を侵害することは絶対ありませんから。


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