佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

リーダー感覚54――戦略目標、戦略、そして戦術の転換

2007-03-23 11:56:49 | 戦略眼
北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議は、マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア」から中国銀行への北朝鮮資金の送金問題が障害になり、再び休会に追い込まれた。

アメリカは、この協議が始まるに当たって、従来の北朝鮮制裁政策を捨て柔軟路線に転換した。

つまりこういうことである。

戦略目標は基本的に変わらない。従来も今も、北の核放棄がアメリカの目的である。

次に、戦術は上に述べた柔軟路線に転換された。

一見すると、戦略目標は変わらず、ただ戦術が変わっているだけにしか見えない。しかし、アメリカは結果的に戦略を根本から変えてしまっているのである。対立的戦略から非対立的戦略へにである。

対立的戦略とは北朝鮮の現体制を替える戦略である。それによって戦略目標を達成しようとする。

一方、非対立的戦略とは、現金正日体制のもとで戦略目標を達成することである。

だが、非対立的戦略は成り立たない。なぜならば、金体制は核をけして手放さないからだ。なぜ手放さないかといえば、これだけが現体制を維持する砦だと思っているからである。

核を手放せば自分たちはないという北体制が抱く恐怖に対して、アメリカは有効な説得手段をもたない。というより、そんなことは誰にも出来ない。

したがって、最近のアメリカの戦術転換によってもたらされた新しい戦略は成立しないのである。

アメリカ国務省は戦略眼のなさを露呈してしまった。

今回の協議決裂はあちこちに影響をもたらしそうだ。

アメリカ国内では保守派が反発するだろう。

また、国務省(日本の外務省にあたる)と財務省の対立が先鋭化するだろう。当初、財務省は合法資金としては全体の三分の一程度しか認められないという方針だったらしい。そこをライス国務長官が直々に渋る財務省を説得したという。それがこのような結果をもたらしたのであるから、当然財務省は忸怩たる思いがあるだろう。

もうひとつ、この協議を通じて明らかになったことがある。中国政府内で協議を進展させたい外務省と、市場環境整備を急ぐ金融監督当局の調整欠如が表面化したという。

この状況を中国の政治家たちは複雑な思いで眺めているに違いない。自分たちの国が、もはや今までのような仕組みでは動かないことを悟ったはずだ。

中国も変わりつつある。


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