植木等さんが亡くなりました。ご冥福をお祈り申し上げます。
昔、父母に連れられて、よくクレージー・キャッツの映画を見にいきましたよ。
30秒に一回くらい笑うんです。とにかくおかしくて、腹の皮がよじれる感じだったなあ。ところが、映画が終わって映画館の外に出た瞬間に、どんなストーリーだったかもう覚えていない。
「どんな話だったっけ?」
母と顔を見合わせて大笑いしたことがありました。
同時代の映画に「社長漫遊記」という映画がありました。サラリーマンものの映画です。なんだかんだ言っても、当時はサラリーマン主流の時代だったのでしょう。「釣りバカ」と似ているところが多少ありますが、釣りバカよりはずっと会社人間というか、サラリーマン生活に重点が置かれていました。
社長役が森繁さん。その奥さんが、たしか久慈あけみさんだっただろうか。番頭格の専務には加藤大介さん。いちばんの若手社員が秘書課の小林圭樹さんですから、みな若かった。森繁さんの愛人役でバーのマダムが淡路恵子さん。そうそう、忘れていけないのが、もっぱら宴会専門の演芸部長三木のりへい。サラリーマン社会の縮図を映してました。
なにしろ昔のことなので、お名前など記憶違いがあるかもしれません。もし間違っていたらお許しください。
亡くなった方も多いし、画面に出ることがほとんどなくなったかたも多くなりましたね。櫛の歯が一本ずつ欠けていくようで、寂しい気がします。
最近はまったく映画を見ませんが、テレビはよく見ます。サスペンス劇場というものですか。あれなんか見ると、最近はやたら所轄と本部の葛藤みたいなものが出てきますね。これも時流なんでしょうかね。
あとは、警察のなかのキャリアとノンキャリの確執。これもドラマによく出てきます。
こういうのがドラマの骨格にでてくるのはいつ頃からでしょうか。昔はほとんどありませんでしたね。テレビ見てると、しょっちゅう所轄が本部にいじめられているように思えてしまいます。もっとも、県警本部の人が所轄に行くと、祭り上げられちゃうというスタイルもあります。
それにしても主役の力というのはすごいものです。主役が下手だと全然ドラマになりませんからね。高い金をもらうだけのことはあります。
NHK大河ドラマ『風林火山』の山本勘助役をつとめる内野聖陽という人、私は以前藤沢周平の「蝉しぐれ」をNHKで初めて見てからファンになりましたが、相当うまい人だと思いますね。
最初にナレーションがあります。風林火山を読むのです。「早きこと風の如し……」という4行の詩のようなものですが、その読みが滅茶苦茶うまい。
はじめのうちはゆっくり静かに読み出すのです。そして次の「静かなること林のごとし」に移ると、ここも静かに、しかしより力強い声になる。
さらに三行目の「たけきこと火のごとし」に移ると、声の調子が少し上がり、力強さを増します。そして最後の「動かざること山のごとし」では、もう何ものも動かせない、そんな力強い声になる。
何気なく聞いているとわかりませんが、注意してよく聞いてみてください。内野さんは微妙に変化をつけているのです。うまいものですよ。あれがプロですね。
プロというのは、どれだけ微細な感覚をもっているかで決まる。素人では聞き分けられないような微細なところを感じ、また表現できます。
プロ中のプロになると、その感覚がどんどん微細になっていくのです。だから、素人は「なんでそんなことができるの?」と神業のように思えてしまう。
微細なプロ中のプロの技を本当に理解できるのは、同じレベルの人しかいないのです。素人はただ「すげー」と思うだけ。
プロを見て「恐ろしい」と思えたら、あなたも素人としてはかなりの腕前と言えます。
昔、父母に連れられて、よくクレージー・キャッツの映画を見にいきましたよ。
30秒に一回くらい笑うんです。とにかくおかしくて、腹の皮がよじれる感じだったなあ。ところが、映画が終わって映画館の外に出た瞬間に、どんなストーリーだったかもう覚えていない。
「どんな話だったっけ?」
母と顔を見合わせて大笑いしたことがありました。
同時代の映画に「社長漫遊記」という映画がありました。サラリーマンものの映画です。なんだかんだ言っても、当時はサラリーマン主流の時代だったのでしょう。「釣りバカ」と似ているところが多少ありますが、釣りバカよりはずっと会社人間というか、サラリーマン生活に重点が置かれていました。
社長役が森繁さん。その奥さんが、たしか久慈あけみさんだっただろうか。番頭格の専務には加藤大介さん。いちばんの若手社員が秘書課の小林圭樹さんですから、みな若かった。森繁さんの愛人役でバーのマダムが淡路恵子さん。そうそう、忘れていけないのが、もっぱら宴会専門の演芸部長三木のりへい。サラリーマン社会の縮図を映してました。
なにしろ昔のことなので、お名前など記憶違いがあるかもしれません。もし間違っていたらお許しください。
亡くなった方も多いし、画面に出ることがほとんどなくなったかたも多くなりましたね。櫛の歯が一本ずつ欠けていくようで、寂しい気がします。
最近はまったく映画を見ませんが、テレビはよく見ます。サスペンス劇場というものですか。あれなんか見ると、最近はやたら所轄と本部の葛藤みたいなものが出てきますね。これも時流なんでしょうかね。
あとは、警察のなかのキャリアとノンキャリの確執。これもドラマによく出てきます。
こういうのがドラマの骨格にでてくるのはいつ頃からでしょうか。昔はほとんどありませんでしたね。テレビ見てると、しょっちゅう所轄が本部にいじめられているように思えてしまいます。もっとも、県警本部の人が所轄に行くと、祭り上げられちゃうというスタイルもあります。
それにしても主役の力というのはすごいものです。主役が下手だと全然ドラマになりませんからね。高い金をもらうだけのことはあります。
NHK大河ドラマ『風林火山』の山本勘助役をつとめる内野聖陽という人、私は以前藤沢周平の「蝉しぐれ」をNHKで初めて見てからファンになりましたが、相当うまい人だと思いますね。
最初にナレーションがあります。風林火山を読むのです。「早きこと風の如し……」という4行の詩のようなものですが、その読みが滅茶苦茶うまい。
はじめのうちはゆっくり静かに読み出すのです。そして次の「静かなること林のごとし」に移ると、ここも静かに、しかしより力強い声になる。
さらに三行目の「たけきこと火のごとし」に移ると、声の調子が少し上がり、力強さを増します。そして最後の「動かざること山のごとし」では、もう何ものも動かせない、そんな力強い声になる。
何気なく聞いているとわかりませんが、注意してよく聞いてみてください。内野さんは微妙に変化をつけているのです。うまいものですよ。あれがプロですね。
プロというのは、どれだけ微細な感覚をもっているかで決まる。素人では聞き分けられないような微細なところを感じ、また表現できます。
プロ中のプロになると、その感覚がどんどん微細になっていくのです。だから、素人は「なんでそんなことができるの?」と神業のように思えてしまう。
微細なプロ中のプロの技を本当に理解できるのは、同じレベルの人しかいないのです。素人はただ「すげー」と思うだけ。
プロを見て「恐ろしい」と思えたら、あなたも素人としてはかなりの腕前と言えます。