毎年、母の誕生日にスイーツを送っていた。
自然解凍して食べられるケーキ、プリンだけでなく、アップルパイ、どら焼きに加えて、レンジでチンするたい焼きなどを詰めたものだ。
だが、健康上、70代の老親への贈り物として褒められたものではないだろう。こってりした生クリームや、糖質のかたまりのような餡を食べさせて、生活習慣病になったら大変だ。
「今年は、夕飯のおかずになるようなものがいいかしら」
考え方を変えてデパートに行くと、お茶漬け、スープ、ふりかけなどの詰め合わせが並んでいた。
「あら、美味しそう。候補のひとつにしよう」
調味料、漬け物などもあったが、誕生祝いというよりお中元みたいな気がしてやめた。
売り場を2周もすれば、欲しいものが見えてくる。金沢の味を売りにした焼き魚、煮魚、炊き込みご飯の素が最適なのではと嗅ぎつけた。金沢は好きな都市のひとつである。旅行に連れて行くことは、なかなかできないけれど、エサを、もとい料理を与えておけば、旅行気分は味わえるかもしれない。そんな計算をしつつ、商品の詰め合わせを作ってもらった。
「お魚類は常温で2~3カ月持ちます。冷蔵庫に入れなくても大丈夫です」
「あら便利」
「調理法は書いてありますが、湯煎か電子レンジでどうぞ」
「はい」
買い物袋は少々重いけれど、母はきっと「楽して美味しいものが食べられる」と喜ぶだろう。ウシシ。
「そうだ、カードも買わなくちゃ」
バースデーカードを選ぶにもコツがある。なるべく、記入スペースが小さなものを探すのだ。毎年のことだから、「また同じことが書いてある」と思われぬよう、アイデアは小出しにしていく。ついでに、値段が安ければさらによい。
「あ、これがいいかも。小さめだし、250円だって」
そのとき、私はかなり疲れていたと思う。日曜出勤だったから、起きてすぐ夕食用のきんぴらごぼうを作り、5時間の勤務を終え、帰りに重いプレゼントを持ってカード選びをしていたのだ。家でひと息ついたあと、カードを取り出して仰天した。
「あっ、THANK YOUカードだった! 間違えたか」
バースデーカードだと思ったのに、まさかサンキューカードだったとは。アホだなぁ……。
代用できそうなものは他になく、「まあいいか」と素知らぬふりで送ることにした。
果たして母の反応は……。
「簡単にできる味付けの魚、とってもありがたいよ~! 早速ごちそうになります」
……スイーツにしなくて正解だったようだ。
カードのことには触れていなかったので、私もなかったことにする。気づかなかったのかもしれない。
考えてみたら、老親の2人暮らしでは、誕生日といえども母が食事の支度をするのだろう。そこに娘から調理済み食材の差し入れが届けば、「ラッキー!」と小躍りしても不思議はない。
「よし、来年も楽して食べられるおかずを送れるように、資金を貯めておかなくちゃ」
魚は1パック500円から650円と、結構なお値段だった。来年はたくさん送ってあげられるように、毎月1000円ずつ積み立てることにしよう。
カード?
「結婚おめでとう」じゃなければ、何でもいいような気がする。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
自然解凍して食べられるケーキ、プリンだけでなく、アップルパイ、どら焼きに加えて、レンジでチンするたい焼きなどを詰めたものだ。
だが、健康上、70代の老親への贈り物として褒められたものではないだろう。こってりした生クリームや、糖質のかたまりのような餡を食べさせて、生活習慣病になったら大変だ。
「今年は、夕飯のおかずになるようなものがいいかしら」
考え方を変えてデパートに行くと、お茶漬け、スープ、ふりかけなどの詰め合わせが並んでいた。
「あら、美味しそう。候補のひとつにしよう」
調味料、漬け物などもあったが、誕生祝いというよりお中元みたいな気がしてやめた。
売り場を2周もすれば、欲しいものが見えてくる。金沢の味を売りにした焼き魚、煮魚、炊き込みご飯の素が最適なのではと嗅ぎつけた。金沢は好きな都市のひとつである。旅行に連れて行くことは、なかなかできないけれど、エサを、もとい料理を与えておけば、旅行気分は味わえるかもしれない。そんな計算をしつつ、商品の詰め合わせを作ってもらった。
「お魚類は常温で2~3カ月持ちます。冷蔵庫に入れなくても大丈夫です」
「あら便利」
「調理法は書いてありますが、湯煎か電子レンジでどうぞ」
「はい」
買い物袋は少々重いけれど、母はきっと「楽して美味しいものが食べられる」と喜ぶだろう。ウシシ。
「そうだ、カードも買わなくちゃ」
バースデーカードを選ぶにもコツがある。なるべく、記入スペースが小さなものを探すのだ。毎年のことだから、「また同じことが書いてある」と思われぬよう、アイデアは小出しにしていく。ついでに、値段が安ければさらによい。
「あ、これがいいかも。小さめだし、250円だって」
そのとき、私はかなり疲れていたと思う。日曜出勤だったから、起きてすぐ夕食用のきんぴらごぼうを作り、5時間の勤務を終え、帰りに重いプレゼントを持ってカード選びをしていたのだ。家でひと息ついたあと、カードを取り出して仰天した。
「あっ、THANK YOUカードだった! 間違えたか」
バースデーカードだと思ったのに、まさかサンキューカードだったとは。アホだなぁ……。
代用できそうなものは他になく、「まあいいか」と素知らぬふりで送ることにした。
果たして母の反応は……。
「簡単にできる味付けの魚、とってもありがたいよ~! 早速ごちそうになります」
……スイーツにしなくて正解だったようだ。
カードのことには触れていなかったので、私もなかったことにする。気づかなかったのかもしれない。
考えてみたら、老親の2人暮らしでは、誕生日といえども母が食事の支度をするのだろう。そこに娘から調理済み食材の差し入れが届けば、「ラッキー!」と小躍りしても不思議はない。
「よし、来年も楽して食べられるおかずを送れるように、資金を貯めておかなくちゃ」
魚は1パック500円から650円と、結構なお値段だった。来年はたくさん送ってあげられるように、毎月1000円ずつ積み立てることにしよう。
カード?
「結婚おめでとう」じゃなければ、何でもいいような気がする。
↑
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「うつろひ~笹木砂希~」(日記)