これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

小銭を探せ

2018年12月13日 22時36分09秒 | エッセイ
 職場の近くに美味しい和菓子の店・喜田家がある。
 特に気に入っているのが、どら焼きの「六人衆」だ。フワフワで舌触りもよく、しっとりとしている。
 賞味期限が2日後となっているのは、添加物等の使用を控え、ヘルシーだからであろう。餡は甘すぎず、かといって味気ないこともなく、口当たりのよい仕上がりとなっている。思い出すと、無性に食べたくなる味だ。
 大概、昼前には売り切れてしまい、なかなか手に入らないが、土曜出勤でたまたま11時頃に足を運んだら、まだ商品が残っていた。



「えーと、娘と夫と私で3個でしょ、それからいつも頑張ってる副校長にも買わなきゃ」
 合計4個。レジに持っていくと、「648円です」と言われた。だが、財布の中には支払いに適した紙幣がない。
「あらっ、千円札がない。一万円札でいいですか」
 レジの女性は困った顔で苦笑いをしている。
「細かいお金はありませんか」
 財布のファスナーを開けて硬貨を探してみた。500円玉はあったが、あとは5円玉や1円玉ばかりだ。
「うーん、うーん、648円……」
 50円玉を2つ発見した。これで600円か。10円玉は1枚しかないが、5円玉が7枚あった。神社のお賽銭ようにキープしていたものだが、この際、わがままは言っていられない。1円玉も5枚ほどあるから、どうにか足りそうだ。
「えーと、648円ですよね」
「はい、そうです」
「何とか足りそうです」
 ジャラジャラジャラッと硬貨をトレイに置くと、女性は安堵したような表情を浮かべた。
「ちょうどですね」
 この日は土曜日だった。釣銭として用意していた小銭がなくなると、営業できない可能性もあるだろうから、やたらと喜んでもらえた気がする。
「じゃあ、これも、よかったら召し上がってください」
 捻出感のお礼として、彼女は紙袋に白いパッケージのお菓子を放り込んだ。



 モチモチしていて、こちらもかなり美味しいという事実を私は知っていた。
 最初から千円札や小銭があったら、いただきものをすることもなかっただろう。
「ラッキー!」
 もちろん、美味しくいただいた。
 わざとじゃないけど、最初から手の内を見せないというのも作戦かしら。


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コメント (6)
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