今日は私の誕生日である。
「はいっ、お誕生日おめでとう!」
仲良しの幸枝から、パスケースをもらった。

落ち着いた色、シックなデザインである。ひと目見て気に入った。
だが、家族からは何ももらえなさそうだ。
「お母さん、ゴメン。プレゼント買いに行く時間がないよ。来月でいい?」
娘は何かと忙しく、私のことは後回し……。
どうせ、どうせ。
夫にいたっては、「おめでとう」のひと言すらない。はたして、私の誕生日という認識があるのかどうか。
ためしに、話しかけて確認してみた。
「夕飯なんだけど、ミキが遅いっていうから、池袋でデリを買ってこようと思って」
「ふーん」
「昨日、腹具合が悪いって言ってたけど、大丈夫なの」
「うん」
ダメだ、こりゃ。思った通り、私の誕生日だということを忘れている。
でもまあ、認知症みたいなものだから、さほど腹も立たないが。
少々虚しくなり、「いっそのこと、自分でプレゼントを買ったろか」と思いつく。そういえば、デパートのお買いものポイントが32000円分たまっていたではないか。
ちょうど、冬に買ったバッグがくたびれてきたところだ。今度はもっと頑丈なものが欲しい。
「池袋までいってきまーす」
頭の中は「どんなバッグにしようかなぁ」でいっぱいになり、スキップするように駅まで歩いた。
雑貨売り場は、見ているだけで楽しい。あまり時間がないので、カバンだけに絞ったが、本当は財布や靴も見たかった。
「こちらは持ち手が皮になっております。軽くて丈夫ですよ」
「色違いが3色ございます。どうぞ、鏡の前でご覧ください」
どれも悪くないが、決定力に欠ける気がする。何か、パンチ力のある商品はないものか。
売り場を2周すると、さすがに飽きてくる。私は長時間の買い物に耐えられないのだ。「あれか、それか、これにしよう」と腹を決め、さらなる比較に入った。
「こちらはデニムでできていますので、一年中使えますし、かなり丈夫ですよ」
「汚れたときのお手入れはどうするんですか」
「濡れた布などで拭いていただければ」
比べているうちに、だんだん気に入ってくる商品もある。それがこれだった。
「お荷物が少ないときは、両端の金具を合わせて、コンパクトにすることもできます」
「いいですね、これにします」
32000円では足りなかったから、差額分はクレジットで。

バッグが決まったあとは、夕飯を買って帰宅する。
「ご飯だよ」
デリを温めて並べるだけ。本当は夫にやってもらいたいが、失敗されては元も子もないので、あきらめて自分でやる。
「ああ、うまそうだ」

そりゃそうでしょう。シェ松尾だもの。
お店で食べるときとは比べ物にならないが、美味しかったし、これはこれで満足だった。
まあ、たまにはこんなディナーもいいかしら。
娘に「このバッグどう?」とメールを送る。
ほどなく、「カッコいいじゃない!」と返ってきた。よしよし。
メーカーを見てギョッとした。「ディーゼル・ジャパン」と書いてあったからだ。
私はつい、フォルクスワーゲン社の排ガス不正事件を連想した。まったく無関係なのに、マイナスイメージが浮かんでくるとは、フォルクスワーゲン社も罪深いことをする。
そんなこんなで、誕生日が過ぎようとしている。
母が私を生んでくれたことに感謝しなくては。

↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「はいっ、お誕生日おめでとう!」
仲良しの幸枝から、パスケースをもらった。

落ち着いた色、シックなデザインである。ひと目見て気に入った。
だが、家族からは何ももらえなさそうだ。
「お母さん、ゴメン。プレゼント買いに行く時間がないよ。来月でいい?」
娘は何かと忙しく、私のことは後回し……。
どうせ、どうせ。
夫にいたっては、「おめでとう」のひと言すらない。はたして、私の誕生日という認識があるのかどうか。
ためしに、話しかけて確認してみた。
「夕飯なんだけど、ミキが遅いっていうから、池袋でデリを買ってこようと思って」
「ふーん」
「昨日、腹具合が悪いって言ってたけど、大丈夫なの」
「うん」
ダメだ、こりゃ。思った通り、私の誕生日だということを忘れている。
でもまあ、認知症みたいなものだから、さほど腹も立たないが。
少々虚しくなり、「いっそのこと、自分でプレゼントを買ったろか」と思いつく。そういえば、デパートのお買いものポイントが32000円分たまっていたではないか。
ちょうど、冬に買ったバッグがくたびれてきたところだ。今度はもっと頑丈なものが欲しい。
「池袋までいってきまーす」
頭の中は「どんなバッグにしようかなぁ」でいっぱいになり、スキップするように駅まで歩いた。
雑貨売り場は、見ているだけで楽しい。あまり時間がないので、カバンだけに絞ったが、本当は財布や靴も見たかった。
「こちらは持ち手が皮になっております。軽くて丈夫ですよ」
「色違いが3色ございます。どうぞ、鏡の前でご覧ください」
どれも悪くないが、決定力に欠ける気がする。何か、パンチ力のある商品はないものか。
売り場を2周すると、さすがに飽きてくる。私は長時間の買い物に耐えられないのだ。「あれか、それか、これにしよう」と腹を決め、さらなる比較に入った。
「こちらはデニムでできていますので、一年中使えますし、かなり丈夫ですよ」
「汚れたときのお手入れはどうするんですか」
「濡れた布などで拭いていただければ」
比べているうちに、だんだん気に入ってくる商品もある。それがこれだった。
「お荷物が少ないときは、両端の金具を合わせて、コンパクトにすることもできます」
「いいですね、これにします」
32000円では足りなかったから、差額分はクレジットで。

バッグが決まったあとは、夕飯を買って帰宅する。
「ご飯だよ」
デリを温めて並べるだけ。本当は夫にやってもらいたいが、失敗されては元も子もないので、あきらめて自分でやる。
「ああ、うまそうだ」

そりゃそうでしょう。シェ松尾だもの。
お店で食べるときとは比べ物にならないが、美味しかったし、これはこれで満足だった。
まあ、たまにはこんなディナーもいいかしら。
娘に「このバッグどう?」とメールを送る。
ほどなく、「カッコいいじゃない!」と返ってきた。よしよし。
メーカーを見てギョッとした。「ディーゼル・ジャパン」と書いてあったからだ。
私はつい、フォルクスワーゲン社の排ガス不正事件を連想した。まったく無関係なのに、マイナスイメージが浮かんでくるとは、フォルクスワーゲン社も罪深いことをする。
そんなこんなで、誕生日が過ぎようとしている。
母が私を生んでくれたことに感謝しなくては。

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