ようやく梅雨が明けた。
朝から、お天道様は容赦しない。雨雲の去った夏空で、火炎放射を吐くように、これでもかこれでもかと強烈な熱気を発散する。
あぢい……。
暑さに弱い私は、すぐヘロヘロになり、クーラーのスイッチを入れる。
ピピッ。
涼しい風が熱気を鎮圧し、気温が下がっていく。
快適、快適。
汗が引くにつれ、背後から睡魔が忍び寄ってきた。昼食も終わったし、ちょっと昼寝するかと枕と掛け布団を持って横になる。優雅にシエスタとしゃれこもう。
2mほど離れたところで、夫が高校野球を見ていた。どこかの予選が、テレビ放映されているらしい。
ボリュームをしぼっているところを見ると、こちらに気をつかっているのだろう。静かで涼しい部屋の中で、私は眠りに落ちていった。
目覚めると、4時半を回っていた。2時間半も寝ていたようだ。口を開けていたのか、喉が痛い。テレビは消え、夫もいなくなっている。おそらく、テレビのボリュームを上げるため、1階の応接間に移動したのだ。
家族が別々の部屋で過ごすと、それぞれの場所でクーラーをつけるから、夏は光熱費がかさんで仕方ない。経済観念のない夫に、ガツンと言ってやらねばという気になる。
階段を上る音が聞こえてきた。ちょうどいいタイミングで、夫が戻ってきたのだ。
「ああ、起きてたんだね。今、下で野球を見てた」
夫はのん気に話しかけてくる。私は姿勢を正して、小言の準備をした。
「ここで見ればよかったのに」
「ダメダメ。すごーく、うるさかったんだよ」
夫の渋い顔から、私はすべてを理解した。
「もしかして……イビキかいてた?」
「うん。30分くらいは我慢してたんだけど、あまりのやかましさに、耐え切れなくなって逃げ出したよ」
ガーン!!
ガツンと言える立場ではなかった……。道理で、喉が痛いはずだ。夏の太陽に痛めつけられ、体が消耗していたのかもしれない。
私は顔を赤らめ、「ははは、失礼」と詫びた。何とも気まずい。
暗くなった頃、中2の娘が部活から帰ってきた。イビキの心配はないのに、夫はまだ応接間でテレビを見ている。私は夕飯の支度をしながら、娘に「今日の出来事」を話した。
「昼寝してたら、イビキかいてたらしくて、お父さんが逃げていったんだよ」
「ああ、わかる。工事現場みたいにガガガガッていうんだよ。すごくうるさいんだから」
それではまるで、耳をつんざくドリルの音ではないか。
私は再び傷ついた……。
まもなく、夫がこちらにやってきた。
「ミキ、お帰り。さっき野球見てたら、お母さんに邪魔されてね……」
夫はニヤニヤしながら話しかけるが、娘はつれない。
「それはもう聞いた! テレビが聞こえないから、黙ってて!!」
娘は夫を部屋から追い出すと、ピシャリとドアを閉めた。
夫は下を向いてイジイジし、また階段を降りていった。応接間に逆戻りである。
我が家の光熱費は、いつになったら削減できるのだろう……。
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
朝から、お天道様は容赦しない。雨雲の去った夏空で、火炎放射を吐くように、これでもかこれでもかと強烈な熱気を発散する。
あぢい……。
暑さに弱い私は、すぐヘロヘロになり、クーラーのスイッチを入れる。
ピピッ。
涼しい風が熱気を鎮圧し、気温が下がっていく。
快適、快適。
汗が引くにつれ、背後から睡魔が忍び寄ってきた。昼食も終わったし、ちょっと昼寝するかと枕と掛け布団を持って横になる。優雅にシエスタとしゃれこもう。
2mほど離れたところで、夫が高校野球を見ていた。どこかの予選が、テレビ放映されているらしい。
ボリュームをしぼっているところを見ると、こちらに気をつかっているのだろう。静かで涼しい部屋の中で、私は眠りに落ちていった。
目覚めると、4時半を回っていた。2時間半も寝ていたようだ。口を開けていたのか、喉が痛い。テレビは消え、夫もいなくなっている。おそらく、テレビのボリュームを上げるため、1階の応接間に移動したのだ。
家族が別々の部屋で過ごすと、それぞれの場所でクーラーをつけるから、夏は光熱費がかさんで仕方ない。経済観念のない夫に、ガツンと言ってやらねばという気になる。
階段を上る音が聞こえてきた。ちょうどいいタイミングで、夫が戻ってきたのだ。
「ああ、起きてたんだね。今、下で野球を見てた」
夫はのん気に話しかけてくる。私は姿勢を正して、小言の準備をした。
「ここで見ればよかったのに」
「ダメダメ。すごーく、うるさかったんだよ」
夫の渋い顔から、私はすべてを理解した。
「もしかして……イビキかいてた?」
「うん。30分くらいは我慢してたんだけど、あまりのやかましさに、耐え切れなくなって逃げ出したよ」
ガーン!!
ガツンと言える立場ではなかった……。道理で、喉が痛いはずだ。夏の太陽に痛めつけられ、体が消耗していたのかもしれない。
私は顔を赤らめ、「ははは、失礼」と詫びた。何とも気まずい。
暗くなった頃、中2の娘が部活から帰ってきた。イビキの心配はないのに、夫はまだ応接間でテレビを見ている。私は夕飯の支度をしながら、娘に「今日の出来事」を話した。
「昼寝してたら、イビキかいてたらしくて、お父さんが逃げていったんだよ」
「ああ、わかる。工事現場みたいにガガガガッていうんだよ。すごくうるさいんだから」
それではまるで、耳をつんざくドリルの音ではないか。
私は再び傷ついた……。
まもなく、夫がこちらにやってきた。
「ミキ、お帰り。さっき野球見てたら、お母さんに邪魔されてね……」
夫はニヤニヤしながら話しかけるが、娘はつれない。
「それはもう聞いた! テレビが聞こえないから、黙ってて!!」
娘は夫を部屋から追い出すと、ピシャリとドアを閉めた。
夫は下を向いてイジイジし、また階段を降りていった。応接間に逆戻りである。
我が家の光熱費は、いつになったら削減できるのだろう……。
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