これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

小さなカラス

2010年07月04日 20時30分16秒 | エッセイ
 デジカメを整理していたら、1カ月前に撮った写真を見つけた。庭の木にとまり、「ギャオ」「ギャオ」と大きな声で鳴いていたカラスである。



 どうやら、まだ子供らしく、体が小さい上に警戒心がない。飛ぶのが下手なのか、大きな物音がすると葉の陰に隠れて様子を伺っている。

 普通だったら、飛んで逃げるだろ……。

 私は苦笑した。このカラスは、あきらかに飛ぶことをためらっているようだ。羽を広げたと思えば、下を向いてやめ、枝の上をウロウロと行ったり来たりしている。
 親が近くにいるのだろうか。首を伸ばしてキョロキョロと探すような仕草が可愛い。



 ときおり、口をパカッと開けて、エサをねだっている感じに見える。



 もし、手の届くような位置だったら、生肉でもあげたのに。子供は得だ。
 30分ほどたつと、ようやく子カラスにも「飛ぶ決意」が感じられてきた。まるで、スタート前の陸上選手みたいに、緊張感が漂っている。「さあ、行くぞ、行くぞ」と勇気を奮い立たせているのかもしれない。キッと口を閉じ、首を前後に揺らしつつ、目は一点を見つめている。
 予想通り、子ガラスは、両羽を大きく広げると、枝から足を離し、元気一杯に羽ばたいた。
 しかし、次の瞬間、落ちるように急降下し、ほうほうの体で別の木に突っ込んでいった。

 大丈夫かいな……。

 私はハラハラしながら、子ガラスが顔を出すのを待った。だが、一向に姿を見せない。もはや、追跡不能らしい。陰ながら、カラスが一人前になれることを祈ろう。

 子供のカラスは、応援したくなるほど愛らしいのに、大人のカラスには可愛げがない。
 まだ娘が生まれていなかった頃、夫と2人でドライブに出かけたことがあった。駐車場から車を出そうと、夫が方向転換をしていたときだ。晴れているのに、突然、屋根から「ドシャドシャ、バラバラ」と激しい雨音がした。
 私も夫も顔を見合わせ、不審な音に動きを止めた。
「なに? なに?」
「にわか雨か?」
 すぐに音はやみ、「カアー、カアー」という間の抜けた鳴き声がした。
 いやな予感がしてドアを開けると……。案の定、局地的豪雨状態となって降り注いだカラスの大量のフンが、パジェロロングボディーの屋根を汚していた。
「あああああーーーっ!!!」
 あのときの、卒倒しそうな光景は忘れられない。

 巣立ったばかりのちびっ子も、やがては憎たらしいカラスになっていくのだろうか。
 いや、あのカラスには無理だろう。フンをかけようとしても、目測を誤り、見事に外しそうな気がする。さらには、よそ見をしたがために、ビルにぶつかったりして……。




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コメント (14)
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