「今年の拉致啓発ポスター」その2
そもそも、このポスターにある「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」とは、平成18年6月に施行された,「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」を根拠法令としており、毎年12月10日から16日までを啓発週間とすることを同法第4条に規定している。
また、この法律名にある「その他北朝鮮当局による人権侵害問題」とは日本人配偶者問題(日本人妻問題)であることを、これまで国会議員の質問主意書に対する政府答弁書の中で繰り返し明言している。しかし、このポスターのどこを観ても日本人配偶者についての言及がない。このポスターに名を連ねている法務省こそが日本人配偶者問題(帰還事業問題)の所管省庁であるにも関わらず、なぜ法務省はこのようなポスター作製に同意したのか不思議でたまらない。
一方、拉致問題については、「拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被 害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くす。」(拉致問題の解決に向けた方針と具体的施策:平成25年1月25日決定)とあり、この決定からするといわゆる特定失踪者に対する言及のないこのポスターは、前述の政府方針から逸脱している。
最後に言いたいことは、現行安倍内閣の方針は、ストックホルム合意に基づき、拉致被害者、行方不意者(特定失踪者)、日本人配偶者、残留日本人、遺骨・墓地の各問題の解決を目指すというものである以上、なぜ、今年のポスターのなかで現行政府方針やストックホルム合意に言及しないのか甚だ疑問である。
結局のところ、政府は、北朝鮮人権法にも、拉致問題の解決に向けた方針と具体的施策にも、ストックホルム合意にも本気ではなく、やってる感を国民に見せつけて時間稼ぎをしているに違いないと、私はこの頃安倍内閣を疑っている。